![[重賞回顧]シスキン産駒ワンツー!GⅠへ翼を開く~2026年・中京2歳S~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/08/202609011-scaled.jpeg)
セミの声が響く昼間を過ぎると、秋の虫の音が聞こえるようになってきた。夏競馬も、いよいよ佳境に入ろうとしている。
中京競馬場のメインレースは、この夏の2歳重賞3戦目となる中京2歳S。2025年から小倉2歳Sに替わる形で新設された重賞で、中京競馬場の芝1400mを舞台に、若駒たちがスピードを競い合う。
昨年の第1回で2着に入ったのは、のちに阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞を制し、この秋はスプリンターズSへ挑戦するスターアニスだった。4着のタマモイカロスもリステッド競走のマーガレットSを勝ち、この夏はCBC賞から古馬に挑んでいる。
第2回となる今年も、昨年に続く活躍馬は現れるのか。未来の主役候補たちが、中京競馬場に顔をそろえた。
1番人気はジーティーマイカ。父はシスキン、母は桜花賞にも挑戦したベルカプリである。福島芝1200mの新馬戦では、後続に7馬身差をつける圧勝。勝ち時計1分8秒4は、福島競馬場の芝1200m、2歳コースレコードタイ記録だった。初戦で見せたスピードを、1ハロン延長、左回りのこの舞台でも発揮できるだろうか。
半姉に紫苑S勝ち馬モリアーナがいるビスケットサンドは、父マインドユアビスケッツ。阪神芝1400mの新馬戦を勝ち、この舞台へ進んできた。札幌競馬場をメインに騎乗している北村友一騎手が、継続騎乗で挑む。こちらは距離経験があるだけに、中京コースへの対応がポイントになる。
そのビスケットサンドに新馬戦で敗れたシスキンブルームは、その後、小倉の未勝利戦を勝ち上がって参戦する。ビスケットサンドへのリベンジと、まだ見ぬ相手への挑戦が待っている。鞍上は、3戦連続で手綱を取る団野大成騎手だ。
乗り替わりがあるのは、父エピファネイア、母モアナアネラの良血馬サンタンジェロ。新馬戦では6着に敗れたものの、中京芝1200mの未勝利戦を横山武史騎手とのコンビで勝利した。今回は新馬戦で騎乗した西村淳也騎手に戻っての挑戦となる。出走メンバーの中では、唯一この中京芝コースでの経験がある馬でもある。
前に行く馬もそろった。小倉の新馬戦を逃げ切ったマルモリムソウに、ダートの新馬戦を逃げ切ったジャスパートレノ。さらに未勝利馬も3頭出走する。2着2回であと一歩のバクソウシャチョウ、そしてピコレーシングからはピコジャックとピコキングが参戦し、今年は9頭立ての一戦となった。
距離や舞台の経験値が勝るのか。それとも、初戦で見せたスピード能力がそれを上回るのか。
晩夏の尾張路に、9頭の若駒が駆け出していった。
レース概況
最内枠のピコキングは、1歩目が少し遅れた。対して、他の8頭はほぼ横並びでスタート。その真ん中から勢いをつけたジャスパートレノが先頭に立ち、内からバクソウシャチョウ、外からマルモリムソウが追いかける。その後ろでシスキンブルームが控えた。
さらに後方の外目にはピコジャック。その内にサンタンジェロとビスケットサンドが並び、外からジーティーマイカが続く。離れた最後方にピコキングという隊列になった。
前半600mは34秒2。ジャスパートレノがペースを作り、先行馬はその外から追走する。1列後ろにいたシスキンブルームとサンタンジェロは内からコーナーへ。残り600mの時点では、後方のビスケットサンド、ジーティーマイカの手はまだ動かないまま、4コーナーへ向かっていった。
コーナー出口で、ジャスパートレノの鞍上、中井裕二騎手が後方をうかがう。内ラチ沿いから逃げ切りを狙う形だ。残り400m地点でも隊列は大きく変わらず、粘るジャスパートレノに対し、内からシスキンブルームが迫って先頭をうかがう。バクソウシャチョウ、マルモリムソウも食い下がり、前は馬群が凝縮したまま直線の攻防へ入っていった。
しかし、その接戦の大外から、一完歩ずつ前との差を詰めてくる馬がいた。ジーティーマイカである。
松山弘平騎手のアクションは残り400m過ぎ。右手綱で促すと、ジーティーマイカはそれに応えるように右手前へ替え、そこから加速を開始する。ムチは入らない。手綱のアクションだけで伸びていき、馬群の外を一気に突き抜けた。
内からはシスキンブルームも馬群を抜け出していた。しかし、ムチが入るシスキンブルームに対し、ジーティーマイカは持ったまま。加速の勢いそのままに、最後は後続へ1馬身3/4差をつけて勝利した。勝ち時計1分19秒7は、この日の11R、3歳未勝利戦よりも速いタイムだった。

2着には、内を抜けたシスキンブルーム。3着には、コーナーでジーティーマイカとともに後方にいたビスケットサンドが入り、最後はシスキンブルームが空けた進路をなぞるように伸びてきた。4着争いは逃げたジャスパートレノが外から迫るサンタンジェロを半馬身差しのぎ、粘り込んだ。
各馬短評
1着 ジーティーマイカ 松山弘平騎手
ジーティーマイカの走りには、一瞬の加速力が詰まっていると感じさせられた。
前走の新馬戦でも、スタートはまずまずながら、レース中盤から先行3番手に取りつくと、残り200mから一気にピッチを上げ、後続を7馬身突き放した。勝ち時計は福島芝1200m、2歳コースレコードタイ記録。そのスピードを、1ハロン延びる芝1400mでどう活かすのか。松山弘平騎手の手綱さばきにも注目が集まった。
今回は、前半から無理に位置を取りに行くことはなかった。少頭数の後方外目で折り合いをつけ、直線に向くと右手綱を引いて、安全な外差しの進路へ切り替える。あとは新馬戦と同じだった。脚の回転が一気に上がり、前にいた馬たちをまとめて置き去りにしていく。その勝ち方は、重賞の舞台でもスピードが通用することを示すには十分な走りだった。
少頭数ながら後方で折り合いがついていた点は収穫である。これ以上ペースが遅くなった時にどう対応するかは今後の課題になりそうだが、上がり33秒0をノーステッキで記録した走りは、大きな舞台でも期待せずにはいられない。
昨年、松山騎手はこの中京2歳Sではスターアニスとコンビを組み、のちに阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞を制し、世代の主役へと駆け上がっていった。
ジーティーマイカも、マイルまでこなせるようなら、同じように世代GIの舞台を期待できる素質馬に見えた。
2着 シスキンブルーム 団野大成騎手
名前の通り、父はシスキン。ビスケットサンドと同じ新馬戦でデビューして2着となり、その後、小倉芝1200mの未勝利戦を勝ち上がって参戦してきた。
団野大成騎手は、終始インコースにこだわった。直線では、ジャスパートレノが少し外へ動いて空いたスペースを見逃さず、内ラチとの間を抜け出す勝負手に出る。残り200m付近で先頭へ立ったところを、トップスピードに乗ったジーティーマイカに外から交わされてしまったが、シスキンブルーム自身も最後までしっかり脚を使っている。
馬群の中で控え、直線でも内を突く競馬を経験できたのは収穫だったのではないだろうか。距離ロスを省くためにインコースを選んだ形ではあったが、走りを見る限り、距離はマイルまで延びても対応できそうに見える。
今回はジーティーマイカの決め手が一枚上だったが、新馬戦で敗れたビスケットサンドには先着を果たした。今後、ジーティーマイカとの再戦も期待したくなる存在である。
3着 ビスケットサンド 北村友一騎手
父マインドユアビスケッツは、2017年、2018年のドバイゴールデンシャヒーンを連覇した快速馬である。代表産駒にはホウオウビスケッツ、マピュース、デルマソトガケなどがおり、スピード感のある走りを見せる産駒が印象的だ。
シスキンブルームと走った新馬戦では、先に前へ行ったシスキンブルームを射程圏に入れ、直線では外から力強く差し切る走りを披露した。雨の中で馬場をこなす力強さも印象的な勝利だった。
今回も、前にシスキンブルームやジャスパートレノらを見る位置から、後方で脚を溜める競馬を選択した。ただ、直線では前のバクソウシャチョウ、マルモリムソウが壁になり、すぐには進路を確保できない。シスキンブルームが抜け出した進路をなぞるように追いかけたものの、最後は届かなかった。
それでも、シスキンブルームと同じ上がり33秒7で締めている。最終盤の進路取りと動き出しの差が、着順を分けた格好だろう。
脚を溜めて最後に繰り出す競馬はできている。この3着を力負けと見るのは早計だ。もう1戦、力強く抜け出すレースを見てみたい。
4着 ジャスパートレノ 中井裕二騎手
ダートの新馬戦を勝ってここに挑んできたジャスパートレノだが、この馬の血統はまさに北米ダート血統のそれである。
まず、父のMitoleは、日本でも種牡馬入りしているエスケンデレヤの後継種牡馬。自身はダートの6Fから8F戦で活躍し、GI競走を4勝している。半弟には、今年産駒がデビューする新種牡馬ホットロッドチャーリーがいる。
とにかくスタートが上手い。ゲートを出ると、その勢いのまま加速して先頭へ立ち、ゴールまで粘るアメリカンスタイルの走りを芝コースでも披露した。極端なハイペースにはせず、走破時計は1分20秒4。このタイムは同日の1R、芝1400mの未勝利戦よりも0秒2速いものだった。
そう考えると、今回の4着は「敗れた」というより、先行馬が多かったメンバーの中で頭ひとつ抜け出し、最後まで粘り込んだ内容と表現する方がふさわしいだろう。
この後、芝へ向かうのか、ダートへ戻るのか。どちらを狙っても面白い存在である。スタートで勢いをつけ、そのまま下り坂で加速できる京都コースは合いそうだ。距離は1400mでは若干長いかもしれないが、自身がペースを握れそうなメンバー構成なら、再度注目したい1頭である。
レース総評
ジーティーマイカの鮮やかな末脚は、単勝1倍台の人気を背負うにふさわしいものだった。
芝初挑戦のジャスパートレノが展開を引っ張り、先行馬の中では最先着となる4着に粘り込んだことで、レース全体の輪郭もはっきりした。そのジャスパートレノに食らいつこうとしたバクソウシャチョウ、マルモリムソウの内へ行くか、外を目指すか。2着シスキンブルームと3着ビスケットサンドの着順が分かれたのは直線での一瞬の判断の中でのことであり、展開一つで再度逆転の可能性を残している。
一方、勝ったジーティーマイカは、そうした馬群の攻防を外からまとめて飲み込んだ。今回は安全に外へ持ち出しての完勝だったが、もし今後、馬群の中から一瞬で抜け出すような競馬を披露する機会があれば、その評価はさらに高まるかもしれない。
上位3頭はいずれも牝馬である。この3頭は、阪神ジュベナイルフィリーズの舞台で再び顔を合わせる可能性もあるだろう。さらに4着のジャスパートレノは、芝の朝日杯フューチュリティSはもちろん、ダートの全日本2歳優駿でも面白そうな存在になった。まだ秋デビューの馬たちも控えているが、この夏の経験をもとに、秋以降へ羽ばたくには十分な走りを見せた一戦だった。
なお、ジーティーマイカを管理する前川恭子調教師は、この勝利でJRA女性調教師初の重賞制覇を達成した。次の目標は、ジーティーマイカをはじめとする所属馬でのGI制覇になるだろうか。
晩夏の尾張路で、速さと未来を示した9頭。
その中から抜け出したジーティーマイカの勝利が、大きな夢へ羽ばたき始めた一戦として、今後語られるようになることを願いたい。
写真:Lou
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