[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]アイシールド(シーズン2-34)

福ちゃんが長友厩舎に到着した日、「こんなメンコをつけようかと思って買いました」と長友先生が赤いメンコを見せてくれました。小さな穴が開いている球体のようなものがついていて、それで左目をすっぽりと覆う形です。「絶対に目に砂が当たらないようにカバーしたいですね。レースでは穴が開いていないものを使うと良いと思います」と提案してくれました。

片目が見えないため、砂等が飛んできてもまばたきの反応が遅れることで目に入り、炎症を起こしたりしてはならないと考えてくれているのです。顔に水をかけられるぐらいで嫌がるドコフクカゼですから、前から砂が飛んでくることを嫌がらないはずはありませんし、それが目に入ったりして、レース自体が嫌いになってしまってはいけません。もちろん、砂を被ることに慣らしていかなければならない面もありつつ、万難を排して臨みたいという長友先生の気持ちはありがたいです。

一方で、先回りしすぎないという考え方もあります。福ちゃんが小眼球症だからといって、砂が目に入りやすいかどうか、目に入ったとして炎症を起こしやすいかどうか、そもそもキックバックを嫌がるかどうか分からない段階で、先回りして障害を取り除きすぎると、本来はできることもできなくなってしまう可能性があるのです。慣れたり、克服できる芽を潰してしまうとも言えます。普通の健常な馬と同じ扱いで良いのに、人間が先回りしてしまうことで、できないことが増えるのです。

まずは普通の馬と同じようにやってみて、どうしてもできないことがあれば、馬具などでカバーしてあげれば良いのではないでしょうか。最初からできないと決めつけて、馬具で弱さを隠してしまうと弱点はそのまま残ります。というか、勝手に弱点とされているだけにもなりかねません。怪我をしたり、病気になったり、走る気を失ってしまっては元も子もないので、そのあたりはバランスを見ながらですね。障害や病気のある人や馬を見ると、僕たちはどうしても先回りしてしまう癖があることは知っておくべきでしょう。優しさが逆効果になる可能性も十分にあるのです。

正直に言うと怖さはあるのですが、まずは何も馬具をつけずに調教を進めてもらってもよいのではないでしょうか。余計な馬具を何もつけずに調教して、レースに臨めるのであれば、それに越したことはありません。なるべく耳当てをしないという長友先生の考えには賛成です。しない方が馬は敏感に反応しますから、レースでも反応が良くなり、全力を出し切ってくれるはずです。たとえば目を隠す馬具も、もし福ちゃんが左目で少しでも光を感じていて、それを奪われることで不安を覚えたり、バランス感覚が狂ったりすることもあるのではないでしょうか。

馬具を使うことにはメリットもありますが、デメリットも確実に存在するのです。できれば馬具は使わない方が自然だと思いますが、メリットとデメリットを天秤にかけながら、使う・使わないは選択していく必要があるのです。

「eQuick eVysor」は地全協からNGが出たので、その他、日本の競馬場でも使えそうな馬具がないか探していると、日本の馬具屋さんにもあるではないですか。ジャパンギャロップスインポーター有限会社にはレーシングバイザー、泥除けの馬具です。きちんと固定されますし、これがダメな理由を論理的に説明してもらいたいと思わせるほどの馬具です。紹介ページの最後には、「競走馬であれば問題なく使えるワンサイズです」と記されていて、もしかして!と思わされます。

もうひとつは、株式会社渡辺馬具のページにあるアイシールドです。こちらは調教では着けているシーンを見たことがありますが、レースでは使えないと聞いたことがあります。アイシールドであれば、福ちゃんから光を奪わずに済みますし、メンコに着けるだけなので取り外しも簡単でしょう。見えない方の目に直接、砂や泥などのキックバックが当たらないことを目的とするのであれば、左目にアイシールドをつけるだけで十分です。

新しい発見をした気持ちになり、喜び勇んで長友先生に相談をしてみました。いきなり目をすっぽりと覆う馬具をつけるのではなく、まずは自然な形で臨んでみて、それでもダメなら段階的に次の馬具をつける形はどうでしょうか?と言葉を選びながら聞いてみると、こちらが拍子抜けするほど簡単に、「そうしましょう!」と返ってきました。

そこでこんな馬具を日本の馬具屋で見つけました!と紹介ページを送ると、「アイシールドが良いと思います!」とすぐに返答があったので、「でもレースでは使えませんよね?」と尋ねると、「片側だけなら大丈夫です!」とのこと。

アイシールドを両方につけるのはNGだけど、片方ならOKのようです。まさかこんなに簡単に福ちゃんの馬具問題が解決するとは…。福ちゃんの左目を守るためには、左側だけにアイシールドを装着するだけで良く、アイシールドであれば福ちゃんが光を奪われたり、違和感を覚えることは少ないのではないでしょうか。

何と言っても、アイシールドであれば、福ちゃんのつぶらで可愛らしい左目を競馬ファンの皆さまにも見てもらえます。普通の馬とは違う福ちゃんの左目を隠したくないというのが僕の本音です。年ごろの福ちゃんがどう思うのかは分かりませんが、僕はありのままを見てもらいたいのです。小眼球症はいわゆる奇形だけに、最初は目を背けたくなる人もいるかもしれませんが、次第に慣れてきて、愛すべきチャームポイントだと感じるようになってくれるはずです。隠してしまっては、せっかくの見てもらう機会がなくなってしまい、福ちゃんの個性がもったいないのです。

長友先生に頼んで、渡辺馬具にアイシールドを注文してもらいました。届くのが楽しみです。

(次回へ続く→)

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