[今週の注目]スプリント女王への扉を開け!インプロペリア、飛躍の秋へ

秋華賞、菊花賞、そして天皇賞(秋)。3週にわたって続いた秋のGⅠシリーズがひと区切りとなり、今週の中央競馬は束の間のインターバルを迎える。しかし、GⅠがない週だからといって競馬の魅力が薄れるわけではない。11月に入ると、注目馬が出走する新馬戦をはじめ、2歳戦が本格化する。年末の大舞台を見据えたローテーションで出走する馬に加え、来春を目標に始動する良血の2歳馬も新馬戦に名を連ねる。GⅠレースの開催がない今週も、将来の活躍が期待される馬の動向に注目したい。

注目の対象は2歳馬に限らない。夏を経た3歳馬や古馬にも、この時期に大きな成長を示す例が見られる。年内に目標のクラスへ到達しなくても、狙ったレースで勝ち上がり、翌年の飛躍につなげる馬もいる。

そんな今週の東京競馬場で注目したいのが、日曜最終レースに出走予定の牝馬インプロペリアである。現在は2勝クラスに身を置いているが、本来ならばもっと上の舞台を意識できるだけの素質を秘めた存在だ。度重なる脚部不安によってキャリアはわずか4戦。それでも、その走りには将来への期待を抱かせる輝きがある。

■名牝ハッピーパスの系譜

インプロペリアは父ロードカナロア、母パストフォリアという血統の4歳牝馬。美浦・森一誠厩舎に所属している。母系を遡れば名牝ハッピーパス。その一族からはコディーノ、チェッキーノが誕生し、さらにチェッキーノは二冠牝馬チェルヴィニアの母として名を刻んだ。全姉サブライムアンセムはフィリーズレビューを制し、桜花賞にも駒を進めた。古馬になってからも短距離を中心に重賞戦線で活躍し、入着を重ねた実績馬である。

インプロペリアもまた、一族譲りの高い資質を受け継いでいる。

最大の武器は卓越したスピードだ。スタートを決めて先手を奪い、そのまま押し切る競馬を得意としている。出走数は少ないものの、その才能はこれまでのレースで十分に示されてきた。

デビュー戦は2歳11月の東京芝1600メートル戦。C.ルメール騎手を背に好スタートから先頭へ立つと、そのまま後続を寄せ付けず2馬身差の完勝を収めた。勝ち時計の1分34秒7も優秀で、翌春へ向けて期待が一気に高まる内容だった。

一方で、デビュー前から左トモに不安を抱えており、成長途上の面もあった。母パストフォリア自身が3歳秋から3連勝で本格化したように、インプロペリアもまた時間をかけて完成へ向かうタイプと見られていた。

3歳になったインプロペリアは、桜花賞への出走を目指し、姉と同じフィリーズレビューに臨むことになった。1勝馬のため重賞出走には抽選を通過する必要があったが、11/16頭の抽選を突破し、1枠1番からの出走が決まった。最内枠がレースに及ぼす影響は、展開次第。しかし1戦1勝での重賞挑戦に加え、2歳11月以来4ヶ月ぶりの実戦という条件ながら、2番人気に支持される。3着以内に入れば桜花賞への出走権を得られることもあり、有力候補として期待を集めていたが、現実はそう甘くは無かった。

スタート直後に混み合って4番手からの追走となり、直線では内を突いたものの進路が開かず、12着。森調教師の「2戦目で厳しいレースになりましたが、この経験をこれからの活躍に活かしたいです」とのコメントに、ファンは期待を持って次走を待った。

■大きな挫折と長い遠回り

真の試練は、フィリーズレビュー敗戦後に待っていた。

次走への期待が寄せられる中、放牧中のインプロペリアに左前脚の不安が生じる。治療を経て9月に帰厩し、10月のレースを目指したものの、今度は左トモの歩様に乱れが見られ、復帰は延期となってしまう。

再び競馬場へ戻ってきたのは4歳6月。2戦目のフィリーズレビューから、実に1年3ヶ月ぶりだった。

東京芝1400mの1勝クラス。長期休養明けにもかかわらずスタートから楽に先頭へ立ち、そのまま押し切って快勝する。勝ち時計は1分20秒7。内容、時計ともに高く評価できるものであり、改めて素質の高さを印象づけた。

夏を休養に充て、秋の初戦は中山初日の2勝クラス白井特別。昇格初戦に初の1200mに対応できるかが課題となったが、右回りの1200mをこなせれば、来年秋のスプリンターズSへ夢がつながる。

単勝1.5倍の支持を集めたレースで、勝ったミニョンマルーンの逃げを2番手から捕まえることはできなかったものの、結果は2着。昇級初戦で慣れない条件をこなし、スプリント戦への適性も示した。

敗れはしたが悲観する内容ではない。むしろ1200mへの対応力を確認できたことは、今後を考えれば大きな収穫だったと言える。しかし、課題を挙げるなら気性面だろう。レースを重ねるごとに、本馬場入場でテンションが高くなる場面が見られるようになり、心身の成長が待たれる現状である。

■オープン昇格に向けた試金石とインプロペリアの未来

そして今週、インプロペリアは再び東京芝1400mへ向かう。コースも距離も、1年3ヶ月の休養明けを快勝した舞台。持ち前の先行力とスピードを最も生かしやすい条件と言っていい。

クラブ所属の牝馬は6歳3月までの現役生活と、競走馬としての期間が区切られている。インプロペリアの「競走生活という砂時計」は、けっして無限でなく既に砂の半分は落ちているはずだ。それでも残された時間は、夢を追うには十分な長さがある。残り1年余りの期間で、是非ともオープンクラスまで昇格して欲しい。

ハッピーパス一族の良血馬。その才能が本物であることは、これまでのレースが証明してきた。まずは今週の2勝クラス突破。そしてその先に待つオープンクラスへの挑戦へ。

来秋、大舞台のスプリント戦線を賑わせる存在になることを信じながら、府中の直線を駆け抜ける彼女の姿を見届けることを、GⅠレースが無い今週の楽しみとしている。

その前に無事にスタートラインに立ち、怪我無く戻ってくること。それを願わずにはいられない。

Photo by I.Natsume

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