「名馬」を語る 異国からやってきた、スピード自慢の可憐な少女 - ヤマニンパラダイス 2025年12月14日 まだ私が小さい頃、土日は父に連れられて祖父母のところへ遊びに行っていた。 競馬好きの祖父のために父が場外馬券場へ馬券を買いに行き、その間に彼らの家で私は帰りを待つというのが毎週末のルーティン。その最中、よく私は一口馬主をやっていた祖父の出資馬のビデオテープを手に取って眺めていた。 当時社台レースホースの会員であった祖父... 小早川 涼風
「名馬」を語る 二階級制覇の名馬、モーリス〜グラスワンダー、スクリーンヒーローから受け継ぐ、その血の運命〜 2025年12月13日 1.「クレオパトラの鼻」 「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、世界の歴史も変わっていたであろう」とは、哲学者ブレーズ・パスカルの言。歴史の転換は些細な事象によって起こるものだ、という警句だが、小説家の芥川龍之介はこの説に対して次のような反論を行っている。 クレオパトラの鼻が曲っていたとすれば、世界の歴史はその為に... 縁記台
「名馬」を語る 日本代表「富士山」、三度目の正直。海外挑戦の嚆矢、フジヤマケンザンの香港国際カップ優勝を振り返る 2025年12月12日 ■『2025年・香港国際競走』目前。熱戦への期待に、胸が膨らむ。 毎年12月に施行される香港国際競走は、日本の競馬ファンにとって最も馴染み深い海外競走のひとつと言っていいだろう。 今年の日本からの遠征メンバーも、非常に充実している。 ドバイターフで香港の名馬ロマンチックウォリアーを破ったソウルラッシュを始め、大阪杯二連... 稲庭うどん
「名馬」を語る 小倉の空の下 - アサクサゲンキの長い旅路の終わりに寄せて 2025年12月3日 スタンドの呼吸が、ハッと詰まる。無事に飛越を終えると、溜めていた息がふうとほどけていく。 障害競走を前にするとき、スタンドにはいつもよりも少しだけ、「祈り」の成分が多く満ちるように思う。ただ走るだけでも大変なのに、幾つものハードルを飛び越えなければならない。平地以上に危険を伴うその舞台に身を投じる馬たちへ──ファンはど... norauma
「名馬」を語る 大魔神の愛が生み出した偉大な馬。シュヴァルグランが勝利した2017年のジャパンカップを振り返る 2025年11月30日 ■馬主という大きな存在 競馬を予想する際に、馬主を予想の根拠とする手法はあまり聞いたことがない。筆者も馬柱で馬主の名前には目を通すが、それを予想にまで絡めるかというと、そうでもない。しかし、馬主といえば競馬において非常に重要な存在である。 馬主は競走馬のオーナーであり、馬の購入、育成、調教師や厩舎への預託、レースの出走... ムラマシ
「名馬」を語る タップ・ダンス・ダンス。最高の鞍上を迎えて道を切り拓いた名馬、タップダンスシチー 2025年11月29日 ■パドックで「タップダンス」を踊るサラブレッド 音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることがわかるかい? 踊るんだ。踊り続けるんだ。なぜ踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなことを考えだしたら足が停まる。一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう... 高橋薫
「名馬」を語る 黄金旅程の最後の焔 - マイネルヴァッサー 2025年11月29日 いつからだろう。 出馬表に彼の名を見る度に、胸の奥がかすかにざわめくようになったのは。 それはレース前の昂りでも、高まる緊張でもない。もっと静かで、もっと深い郷愁にも似た感情――「ひとつの血が、まだここに生きている」という実感だった。 ひんやりとした風が頬を撫でる晩秋のパドック、小柄な一頭の競走馬が淡々と歩いている。年... norauma
「名馬」を語る 約束の風を、もう一度。パフォーマプロミスの勇姿を綴る 2025年11月9日 11月、アルゼンチン共和国杯の季節になると、思い出す馬がいる。 パフォーマプロミス。彼の名前を思い出すたび、どこか胸の奥が疼く。競馬を見続けていると、不思議とそういう馬が、いくつか心に棲みついていく。 芯が強くて、頑張り屋で、競走生活を終えるとあっという間にこの世を旅立っていった黄金色の駿馬。 彼は最初、派手な存在では... norauma
「名馬」を語る ブエナビスタ - 一番人気に愛され、現役最強を名乗り続けた生真面目な才女 2025年11月6日 ■伝説の少女 2008年10月26日、京都競馬場で伝説となるレースが行われた。 そぼ降る雨の中、京都5レースの新馬戦芝1800mが幕を開ける。例年この時期の芝1800mの新馬戦は、将来的にクラシック出走を意識できる評判の新馬が集まってくる。この年もまた、豪華なメンバーが名前を連ねていた。1番人気は安藤勝己騎手と4枠4番... 高橋薫
「名馬」を語る あの日、府中に閃いた光 - エイシンフラッシュ 2025年11月2日 端正な顔立ち、黒曜石のように艶めく馬体、鋼を彫り込んだような筋肉。 その身に流れるのは、重厚なドイツの血。静かな闘志が全身に宿り、瞳の奥に誇りと矜持が息づく。 彼の名はエイシンフラッシュ。 誉れ高き、第77代日本ダービー馬。 その名のとおりの閃光のような末脚でダービーを制し、割れんばかりの歓声が彼を包んだ。王となった彼... norauma