[中山牝馬S]昨年は15番人気馬と12番人気馬で決着した波乱の牝馬重賞。好メンバーが揃った今年もその傾向は継続か? - 重賞プレビュー

波乱必至!? 牝馬限定のハンデ重賞

11日土曜には中山で中山牝馬Sが行われます。
昨年は15番人気のクリノプレミアムが勝ち、12番人気のアブレイズが2着という大波乱の決着に。過去10年でも10番人気以下の馬が6頭も馬券圏内に食い込むという、明確な波乱傾向があるレースです。

今年も例年のように、波乱の結果になるのでしょうか?

なぜ中山牝馬Sは波乱の決着になりやすいのか?

中山牝馬Sが波乱になりやすい理由としていくつか取り上げてみました。

①アップダウンの大きい中山コースで、スピードや切れよりもパワーやスタミナが求められる。

牝馬はどちらかというとアップダウンの少ないコースでの重賞が多いこともあり、スピードや直線での切れが求めらる傾向にあります。牝馬三冠の桜花賞・オークス・秋華賞も、それほどアップダウンが大きなコースではありませんし、2000M以上の牝馬限定重賞も混合重賞と比べて少ないので、こうした牝馬限定の重賞に出てくるような馬はどちらかというと直線での切れを生かして勝ってきた馬が多くなりがちです。そしてそうした馬は中山コースとはやや相性が悪く、結果が出にくいことに繋がっているのではないでしょうか。

②ハンデ戦で各馬の能力比較が難しい。

ここを狙って様々な路線から参戦する馬が多いですし、格上挑戦の馬もいます。このため、斤量差によりハンデが大きくなり、能力差が分かりにくくなっています。

地力そのものは上位でも、斤量によって苦戦する馬もいるかもしれません。

③G1に向けた調整レベルの馬、賞金を加算したい馬、このレースで引退する馬など、各馬の勝負度合いが違う。

このレースが開催される3月半ばという時期は、スケジュールの上で微妙な時期でもあります。

5月のヴィクトリアマイルに向けては4月の阪神牝馬Sなどもあるので前哨戦としては少し期間がありますし、このレースで引退して春の繁殖シーズンに備える馬もいます。このため、各馬の仕上がりにも微妙に差があるのです。絶対に賞金を加算したい馬や格上挑戦の馬は、ここで実績上位馬を凌駕する必要が出てきます。

中山牝馬S 注目馬紹介

アートハウス - 実力上位も、乗り越える課題が多い1頭。

メンバーの中で実績上位なのはアートハウスでしょう。

G1でこそ結果が出ていませんが、ローズS・愛知杯と重賞を2勝しているため、メンバーの中で目立つ実績と言えるでしょう。ただ、それゆえに今回の斤量は57キロのトップハンデ。次点がクリノプレミアムの55.5キロですから、一枚上の評価をされていると見ていいでしょう。

この57キロのハンデは、牡馬換算なら59キロにも相当するかなり厳しい斤量と言えます。加えて、アートハウス自身も好走と凡走を繰り返すタイプでもあります。前回の凡走はG1だったので相手が悪かったとも言えますが、逆に言えば、休み明けで好走するタイプであり、レース間隔が詰まっていると厳しいタイプという見方も可能です。

今回は中7週とある程度間隔を取ったとはいえ、これまで結果を出してきた休み明けよりはレース間隔が短くなります。そのレース間隔がどう作用するか、というところでしょうか。

また、G1制覇を目指す同馬にとって、ここはあくまでも前哨戦。実力は上位ながらも、このレースだけで見ると、かなり厳しい条件が揃ったと言えます。果たしてどのような走りを見せてくれるでしょうか?

クリノプレミアム - 昨年は伏兵としてアッと驚く勝利。今年は有力馬として参戦を。

昨年の勝ち馬のクリノプレミアムが、連覇を目指してこのレースに参戦します。

昨年は15番人気と全く人気がありませんでしたが、直線で一番外を回りつつもゴール前で差し切る勝利。
当時はフロックかと思われましたが、その後も福島牝馬Sで2着、京王杯AHで3着、そして年明けの中山金杯では2着と、それ以降も継続して結果を出しています。

中山金杯の勝ち馬であるラーグルフが次走の中山記念で2着だったことを考えれば、中山金杯でハナ差の2着だったクリノプレミアムの実力もかなりのものと言えそうです。中山コースでの戦績は安定していますし、斤量も55.5キロなら実績の割に恵まれたと言えるでしょう。

中山金杯では先行して良い立ち回りを見せたクリノプレミアム。
先行しても差しに回っても力を出せると思うので、中山コースでは安定度の高い1頭と言えるのではないでしょうか。

サトノセシル - 2週連続で重賞制覇の堀厩舎。その勢いに乗って上位を目指す。

中山記念のヒシイグアス、弥生賞ディープインパクト記念のタスティエーラと、2週連続で重賞制覇を成し遂げた堀厩舎から、サトノセシルが出走します。

21年・函館のクイーンSで3着、22年・札幌のクイーンSで2着と、洋芝巧者と思われていましたが、昨年の福島記念では牡馬の重賞でも2着と健闘。時計がかかる右回りの中距離であれば、牡馬との混合重賞でも好走できることろを見せました。

今回行われる中山芝1800Mは時計がかかるその条件にピッタリ合っていますし、55キロの斤量も重賞で3回2着という実績を考えれば、やや恵まれた印象です。

堀厩舎の重賞3連勝の可能性も十分にあるのではないでしょうか。

ウインピクシス - 連勝中の勢いを重賞でも維持できるか。

ここまでは重賞での実績馬を取り挙げてきましたが、ハンデ戦ですから斤量の軽い馬にも注目でしょう。
なかでも、2連勝中のウインピクシスには注目が集まります。

重賞の出走経験は新潟2歳S(9着)のみで、クラシックには縁がありませんでしたが、昨年秋から4戦3勝3着1回という素晴らしい成績で一気にOP入りしました。特に右回り芝1800Mの戦績は4戦4勝と素晴らしく、中山・福島・小倉とコースを問わず、良・やや重・重馬場でも勝っていますので右回り芝1800Mのスペシャリストと言って良いほどです。

圧巻だったのは前走の壇之浦S。
その次走となる中山記念でも6着と好走するリューベックを半馬身差凌いでの逃げ切り勝ち。かなり時計がかかる小倉の馬場での逃げ切りですから価値がありますし、今の中山の馬場にも対応可能でしょう。

加えて今回は53キロと、かなり斤量にも恵まれました。ポンと先行してそのまま押し切る可能性もあるのではないでしょうか。年が明けてから活躍を見せている4歳世代の牝馬たち。新たなスター候補に期待したいですね。

スルーセブンシーズ - 中山コースなら馬券圏外無し! 中山巧者が得意のコースで重賞制覇を狙う。

中山巧者という点ならスルーセブンシーズも注目です。

重賞実績としては21年の紫苑Sで2着があるだけですが、とにかく中山コースが得意なことで知られます。中山コースは6戦して3勝、2着1回、3着2回と完璧な成績。馬場が渋ってもこなせるので、今の中山のやや時計がかかる馬場にはピッタリでしょう。

前走の初富士Sでは牡馬を相手に56キロのハンデを背負いながら完勝しています。

個人的には『牡馬混合の3勝クラス以上を勝った牝馬は牝馬限定重賞で勝ち負け可能』というのが牝馬限定重賞における物差し。昨年15番人気で勝ったクリノプレミアムや、12番人気2着だったアブレイズもこの条件をクリアしていました。この点からも、スルーセブンシーズには牝馬重賞で勝ち負け可能な実力あり、と見ています。

これまでは2000Mの距離を中心に使ってきましたが、ハンデ戦でスタミナと底力が必要になるタフな展開になれば浮上する1頭ではないでしょうか。

エイシンチラー - 条件にピッタリな伏兵。53キロの斤量を味方につけられるか。

波乱傾向にある中山牝馬S。『中山コースに適性があること』『牡馬混合の3勝クラス以上で結果を出していること』『斤量に恵まれていること』あたりは、驚きの好走をする伏兵に求められる条件でしょうか。

今回のメンバーでその条件をクリアしていると思われるのがエイシンチラーです。

勝ち星こそ、昨年1月の若潮Sから挙げられていませんが、OPクラスでも大きくは負けていません。さらに、若潮Sといえば牡馬混合の3勝クラスと、レベルの高いレースでもありました。

近2走の中山でのディセンバーS(芝1800M)とニューイヤーS(芝1600M)ではともに4着と健闘。戦績はやや地味なながらも、牡馬混合のOP競走でも上位人気で頑張っている馬と言えます。

少し間隔を開けて臨む今回は期待できると思いますし、斤量は53キロ。斤量に苦しむ他馬を見ながらスムーズに走れれば、上位進出も大いに期待できるのではないでしょうか。

さて、今年の中山牝馬Sは例年以上に実績馬が揃ったものの、斤量差や臨戦過程などが絡み合った難解なレースであることに変わりはありません。そんな難解なレースを楽しむため、この記事が参考になれば幸いです。

写真:かぼす、だしまき

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