[地方競馬ニュース]小柄な"彼"が夏を上がってくる - 2022年サラブレッド大賞典

5月のノトキリシマ賞から始まる金沢競馬の三歳重賞戦線。そのラストを飾るのが今年で57回を迎える伝統の重賞サラブレッド大賞典である。

現在金沢の三歳勢で最有力とされる7連勝中で重賞4連勝中の牝馬スーパーバンタムが西日本ダービーに矛先を向けて不在となるため、ここはスーパーバンタムの次席を狙っての混戦模様となった。
石川ダービー、加賀友禅賞と重賞でスーパーバンタムの後塵を拝し続けた牝馬スターフジサン、そのスターフジサンを制してサラブレッド大賞典トライアルの石川門カップを制した牝馬サエチ、北日本新聞杯2着、石川ダービー、MRO金賞3着と重賞まであと一歩の牝馬スタイルユアセルフ。

牝馬が優位になることが多々ある金沢競馬だが、石川ダービーの掲示板を牝馬が独占したように今年は特に牝馬が上位を占めている。

だが、そんな強豪牝馬達に待ったをかけるべく牡馬のマイネルヘリテージがこの夏急激に上がってきた。

マイネルヘリテージと藤田弘治騎手(Photo by MIWA)

マイネルヘリテージはワールドエース産駒で、その名前でもわかるように中央の福島競馬場でデビューした。

しかし、1800m~1200mの芝のレースを6戦走るも掲示板に食い込めず、2月の出走を最後に金沢の井樋厩舎へ移籍。3月の金沢デビューで初勝利を挙げると次戦も勝って連勝を飾る。
その後中央交流や重賞に出走するが壁は高く弾き返される。しかし、石川ダービー後は4戦3勝2着1回。勝利の中には古馬を相手にしたものもあり、また唯一の2着は東海近畿交流の重賞MRO金賞で笠松の強豪イイネイイネイイネが相手の物で負けてなお強し。まさに充実期に入った様子。

410kg~420kg前半と吹けば飛びそうな小柄な馬体だが、柴田調教助手(以下同)によると、

「性格がとにかく臆病で気がかなり小さく、吹けば飛んでいくような、強くなさそうな見た目です(笑)」

とのこと。

厩舎でリラックスのマイネルヘリテージ(Photo by ゆうか)

見た目も性格も小さい彼だが、それを支えるのが抜群の運動神経と競馬センス。

「時々ズルい面を見せますが怖がって進まないことが多いので。でも一度気が入れば能力はかなりの物です」

中央時代には見せられなかったマイネルヘリテージの能力。それを開花させたのが金沢デビュー連勝後に弾き返された挑戦だったそう。

「遠征や重賞挑戦、JRA交流等ハイレベルな戦いをしてきたからこそ磨かれた才能で人間でいうと雑草魂のような馬ですね。まだまだ荒削りですが持ち前の運動神経でどこまで飛躍していくか楽しみな1頭です」

挑戦で磨かれて強くなったマイネルヘリテージ。このサラブレッド大賞典の後にも挑戦は続けるそうで、

「白山大賞典か日本テレビ盃を目標にさらにハイレベルな挑戦を続けていきます。芝の適性もありそうなので盛岡の芝も考えている。金沢を代表する遠征馬になって欲しいですね」

ハイレベルな挑戦、芝にも挑戦、そしてマイネル。

柴田調教助手が手がけ、昨年の金沢で行われたJBCクラシックに挑んだマイネルパイオニアが思い浮かべられる。

──マイネルヘリテージもここからJBC等のダートグレードへ羽ばたいていくことができるのか。

金沢の今とこれからを占うサラブレッド大賞典から目が離せない。

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