[連載・クワイトファインプロジェクト]第20回 東京サラブレッドクラブの新たな試み

12月になって、馬産地も来年度への準備を進める時期となりましたが、なかなか衝撃的なニュースが飛び込んで来ました。

クラブ法人の「東京サラブレッドクラブ」において、クラブ所有の繁殖60頭について会員のリクエストにより配合種牡馬を決定し、産駒を募集するという企画をスタートする、と発表したのです。

詳細は今後リリースされるということですが、企画そのものは魅力的であることは確かです。ただ、現時点では、当プロジェクトに何か特別な恩恵はないだろうと冷静に判断しています。

まず、東京サラブレッドクラブさんの募集馬を拝見するに、基本的にはトップサイヤーが配合されています。中央競馬での勝ち上がり、そして芝の重賞レースを使って結果を残し、会員に還元することを目的とするならば、それは企業として正しい選択です。現に「レッド〜」の冠名を持つ馬達は毎週のように重賞、特別を賑わしています。そして、誤解を恐れずに言うなら、まだ種牡馬の選択肢が広い日高系クラブではなく社台グループとの関係性が深い東サラさんが、敢えて「配合種牡馬を公募」という企画を始められる意図は何だろうかと思います。

さて、私は(今のところ)東サラ会員ではないので何の発言権もありません。

ただ、1人の地方馬主、1人の競馬関係者として、僭越ながら、2つの希望を表明させていただきたいと思います。

(1)今回の素晴らしい企画を、単なるファンサービス、人気投票で終わらせないよう、クラブとして、今後のサラブレッドの血統はどうあるべきか、基本的考えを表明してほしい。

(2)恐らくクラブの方針としてトップサイヤー中心の選定になると思われるが、ぜひ、決定馬のうち1頭は(サクラバクシンオー後継)ビッグアーサーであって欲しい。

私は以前から再三申し上げているように、非ファラリス系のサイヤーラインを人為的にでも一定数残すことで配合の多様性を確保し、そして血統的バランスの良さの象徴だと思っているオルフェーヴルのような配合で名馬を生産していくことがパート1国たる日本の馬産地の目指す道だと考えています。

しかし、残念ながらステイゴールドの母父であるディクタスのサイヤーラインは途絶えました。そしてオルフェーヴルの母父であるメジロマックイーンのサイヤーラインもギンザグリングラスを残すのみ。今後、アルピニスタのような同系配合の名馬は多く誕生するでしょうが、オルフェーヴルやゴールドシップのようなバランスのいい配合の名馬が誕生する可能性はほとんどなくなります。

バイアリーターク系もハイペリオン系、セントサイモン系も風前の灯火、アメリカで息を吹き返したゴドルフィンアラビアン系(ティズナウ等)もここに来て勢いが衰え始めています。辛うじて残るのはドイツのブランドフォード系、アメリカのヒムヤー・ドミノ系くらいで、主要国のサイヤーラインはさらに「集中と集中(もはや選択の余地がない)」を続けるのでしょう。

その意味では、サクラユタカオー⇒サクラバクシンオー⇒ビッグアーサーのサイヤーラインはナスルーラ系でありバリバリの主流血統です。だから私はそこまで思い入れはありません。しかし、サンデーやキンカメのサイヤーラインばかりになるよりは多少なりとも血統の多様性維持に貢献します。

トウカイテイオーもメジロマックイーンも血の継承が風前の灯火であるなか、我が国として血統を繋いでいくことの意味をファンの皆様と共有するためにも、サイヤーラインを続けていく可能性を秘めているビッグアーサーは応援したいです。

ビッグアーサー産駒なら、すでにJRA重賞勝ち馬を2頭輩出しており、「芝で勝ち上がる」「重賞レース挑戦」という東サラさんのこれまでの実績からみて充分応えられるのではないでしょうか。それに、内国産サイヤーラインの継承にもつながります。

クラブ運営の皆様、会員の皆様、是非ご検討をいただければ幸いです。今回の新たな企画が、日本の馬産の在り方に一石を投じ、かつ多くのファンの皆様に支持されるものとなることを切に願っています。

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