![[連載・クワイトファインプロジェクト]第50回 クワイエットエニフ初出走とプロジェクトの今後](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2025/04/img_4905-1.jpg)
4月14日の大井競馬第4レースで、クワイエットエニフがデビュー戦を迎え、初出走ながら6着と健闘しました。
Xなどで多くのファンの皆様から「初出走にしてはよく頑張った。今後が楽しみ」という趣旨のコメントをいただきました。ありがとうございます。全妹ベラジオノユメ号を所有している林田祥来オーナーからもレース振りについてお褒めの言葉をいただきました。
そして、Xで何人かの方々から「まだ体が緩いのに(善戦した)」旨のコメントもあり、改めて競馬ファンの皆様の馬を見る目の確かさに感心しております。競馬新聞等に記載された真島大輔調教師のコメントにもあるように、脚元に不安のある馬ですので、はっきり申し上げてまだまだ調教量は全然足りませんし体も緩いです。やっとレースに間に合ったというのが偽らざる本音です。
だから、真島先生も「タイムオーバーにならず無事に回ってくれば御の字」くらいの心境だったと思います。それがあの内容でしたので、当日現地にいた私も、一緒に応援していただいた共有オーナーやファンの方々も、先生や厩務員さん、いつもケアしていただいている獣医さんも含めその場の関係者全員が「予想以上の走りを見せてくれた!」という驚きと喜びに包まれていました。
とは言え、初戦の余韻はこのくらいにしておきます。競走馬は常に明日を見据えなければなりません。幸い、初戦の内容が想定以上で、脚元も今のところ問題ないので引き続き小林トレセンで調整できることになりました。今のところ中1週の次開催かその次に向けて調整を進めています。1叩きして馬はだいぶ良くなってきたとのことですし、次はもう少し長い距離を使う予定です。ゲートも、戦略上詳しくは言えませんが全然心配しておりません。次走はすべてが初戦より上向く(あとは枠順がどうなるかだけ)ので、初戦の6着から少なくとも次走は掲示板を目指して頑張ってほしいと思います。

そして、2歳馬たちのニュースも続々舞い込んできております。ベラジオノユメ号は笠松競馬・後藤佑耶厩舎に転厩となりました。何としても新馬勝ちを、というオーナーの期待に応えてほしいです。そしてつい先日動画が公開されたイットールビー号も、体は350kg前後とかなり小さいながらもスピードがあり仕上がりも早いとのことで金沢競馬での新馬勝ちを狙っています。2歳組ではこの2頭がデビュー戦が早そうなので、クワイエットエニフも負けていられません。クワイトファイン産駒の最初の勝利をどの馬が勝ち取るか、楽しみな戦いがこれから展開されます。
一方で今年の種付けは、すでに受胎が確認された「アナモリ」号に、オファーが後1頭あるかないかという状況で、今年も多くのオファーはいただけません。ファンの皆様もここは心配されているでしょうし、また、「中央で勝負できる馬、セリで高額で売れるような馬の生産を目指すべきだ」というお叱りのコメントも届いております。
もちろん、繁殖牝馬セールで数百万円~1千万円レベルの良血牝馬を落札し、その産駒に未来を託すのが理想です。個人的にはアメリカ血統(ミスプロ系、ストームキャット系、マッチョウノ系等)の輸入牝馬にクワイトファインを種付けしたいという願望はずっと持っています。しかし、現実にはそんな資金はありません。種牡馬と繁殖の預託料をなんとか払えている状況ですが産駒が産まれたことでしばらくは持ち出しが続きそうです。
よって、先のお叱りコメントに対する答えとしては「現状は、とにもかくにも現役産駒が活躍し、他のオーナーさん、牧場さんから1頭でも多くの種付けオファーをいただく」ということに尽きるかと思います。
そして、「○○血統を護ろう!、○○の血を残そう!」を単なるロマン、センチメンタリズムで終わらせるのではなく、マスコミや生産者、ひいては有力オーナーを味方に付けたうえで、馬産の在り方をきっちり議論していくことが大事なのです。それがなければ、以前から言っているように特定の個人オーナーに多大な経済的負担を強いるだけで、オーナーも支援したファンも馬自身も含め誰一人幸せにはなりません。また、最近ネットでちらほら出てきている「サラブレッドの遺伝的多様性などは必要ない。」という意見に対し、サラブレッドと人間がより良い方向に向かうための真っ当な議論(どちらが勝つ・負けるという論破合戦ではなく、倫理性と経済性をどう両立させるかの真摯な議論)を展開すべきであり、そのなかでバイアリーターク系やゴドルフィンアラビアン系をどう位置付けていくかが問われているのです。
そのためには、クワイトファイン関係者の私が言うのも変ですが、まずはパールシークレット輸入について正しく評価し、日本競馬界全体でこれを成功に導くための議論をすべきだと思います。パールシークレット導入は唯一、ロマンやセンチメンタリズムの世界ではなく、極めてリアリズムの世界、経済的にしてかつ倫理的、医学的なアクションだと思っております。それすら黙殺、嘲笑するような業界に未来はありません。
じゃあクワイトファインはどうするの?と思う人も多いでしょうが、今年1年、エニフやベラジオノユメ号でなんとか成績を上げて見せます。そうすればパールシークレットの車の両輪にはなれなくとも、彼の進むサクセスストーリーの露払いくらいはできると思います。その結果、クワイトファインって思ったよりいい種牡馬じゃないか、という人も必ず現れると思います。
社台ブランドやクールモア(ガリレオ系種牡馬等)など他人の栄光の二番煎じではなく、自ら困難な道を選んでそれで成功を収めたほうがより賞賛を浴びるのです。もう競馬の世界でとくにやりたいこともない、だったら最後自らの手でパーソロン⇒ルドルフ⇒テイオーのサイヤーラインを繋いで見せようじゃないか、という伊達男・傾奇(かぶき)者はきっと日本にもいるはずです。それでこそエンターテインメントだと思うのですよ。
日本には、日本人には、まだそれだけの魂があると信じたいです。