大井競馬場1800mの牝馬限定戦、レディスプレリュードは、その名の通りJBCレディスクラシックに向けた前哨戦に位置づけられるJpn2競走です。
春シーズンにこの路線で無類の強さを見せたマルシュロレーヌは米国BCディスタフ参戦の為不在ですが、3世代の関東オークス馬を含め、今年の国内女王の座を狙う10頭による戦いと注目度は十分。
人気はマリーンカップを鋭い末脚で差し切ったテオレーマが1番人気、今年の関東オークス馬ウェルドーンが2番人気、昨年の関東オークスを勝っているレーヌブランシュが3番人気で続きました。
レース概況
10頭がほぼ揃ったスタートを決めると、葦毛のクリスティーとレーヌブランシュが促されて前に行きます。
ウェルドーンは前の2頭を見る位置で3番手、4番手内にグランデストラーダ、5番手外にダイアナブライトが続いて1コーナーへ。
テオレーマはちょうど真ん中6番手で末脚を繰り出すタイミングを伺い、その後ろにラインカリーナ、コーラルツッキーが並んで後方、サルサレイア、ロカマドールが最後方で向こう正面に差し掛かります。
クリスティーが逃げる形になり、レーヌブランシュは松山騎手が手綱を短く持って追い抜かないよう抑える競馬。芦毛2頭の後ろでは仕掛ける馬もいないまま、隊列を維持して3コーナーに入ります。
コーナーに入ったところで松山騎手から「行って良し」の合図を受けると、一完歩ずつ脚を伸ばしてクリスティーを捉え、コーナーの出口で先頭に立ちます。クリスティーは手ごたえが一杯になり、その外からグランデストラーダとウェルドーンが馬体を併せて追い上げ。
残り200mでウェルドーンがグランデストラーダを振り切り、更に直線で外に持ち出されたテオレーマが末脚を繰り出しますが、レーヌブランシュが2馬身半のセーフティーリードを保って1着でゴールしました。
テオレーマはウェルドーンをゴール前で1馬身差し切っていましたが、勝馬には届かず2着に終わりました。
3着にウェルドーン、4着には勝ち負けに加われなかったもののダイアナブライトが入り、直線で振り切られたグランデストラーダは5着に敗れました。
各馬短評
1着 レーヌブランシュ
昨年の関東オークスを勝って以降は牝馬限定の地方交流競走をメインに走っていましたが、上の世代が強いために勝ち負けに加われず、もどかしいレースが続いていました。
今回は少頭数で揉まれることもなく、ペースメイクをクリスティーに任せてレースを進められたので、この最近では一番スムーズなレース運びが出来たように見えます。
また、鞍上の松山騎手が前日の東京盃で勝利したことも追い風になったでしょう。
サクセスエナジーが最後の直線で通った内2~3頭分を空けたところにレーヌブランシュを誘導し、コーナー出口で振り切りにいく騎乗はお見事でした。
距離がある方がいいタイプの馬なので1500mのJBCレディスクラシックは距離適性が試されますが、今回同様にテンが早い馬にペースを作ってもらえる流れになれば今回の再現も出来るかもしれません。
2着 テオレーマ
重賞初挑戦のマリーンカップでは、7頭立ての6番手から一気に追い込んで差し切りました。
前走のスパーキングレディーカップでは先行有利な重馬場でのレースで末脚が不発に終わりましたが、良馬場の大井競馬場で改めて末脚を発揮できました。
とはいえ、前の2番手で楽なレースが叶ったレーヌブランシュとの末脚の差は0.1秒と僅差で、中段から差し切るのは厳しいレース展開でした。
前がやりあって自らの末脚でまとめて差し切る脚質を考えれば、スプリンターも参戦しそうなJBCレディスクラシックは展開が向きそうな気がしてなりません。次こそはあと1頭交わし切れるでしょうか。
3着 ウェルドーン
今年の関東オークスを武豊ジョッキーとのコンビで勝利したウェルドーン、今回は帰国に伴う隔離機関のため、藤岡祐介騎手とのコンビで参戦しました。
前走は牡馬混合のジャパンダートダービーで大金星のキャッスルトップをタイム差無しの3着まで追い詰め、牡馬に交じっても3歳世代で上位の存在であることを示した1戦になりました。
今回もいつも通り前に行く馬をやってコーナーから追い上げる先行スタイルのレースが出来ましたが、残り400-200m区間のラップタイムが11.4秒を刻む中で少し加速に時間がかかってしまったのがもったいない印象でした。
戦績を見ても勝った4勝は全て1800m以上ですから、距離短縮になるJBCよりは得意距離のチャンピオンズカップや東京大賞典、来年の川崎記念の方が激走の予感がします。ただしこの路線は国内トップクラスのダートホースに挑むことになるので、更にもう一歩成長も必要でしょう。
4着 ダイアナブライト
重賞初挑戦のレースで勝ち負けには加われなかったものの、後方から最後まで脚を伸ばして4着を確保しました。
全姉ダノングレースは福島牝馬S3着、半弟ワーケアは弥生賞2着、全弟クロンターフも今年に入って3連勝とオープンクラスに向かって確実に進んでいるので、能力は備えた血統と言えるでしょう。
同じ位置から仕掛け始めてテオレーマに差をつけられてしまった結果を見れば重賞制覇にはもうワンパンチ欲しいところですが、本来は先行して前目の位置が取れる馬なので、大外枠で1コーナー入り口までに先行ポジションを取り切れなかった展開のアヤもあったかと思います。
グランデストラーダと直線入り口でおよそ4馬身あった差をゴールで詰めることが出来たのは、最後まで諦めずに追い続けた菅原明良騎手のガッツある騎乗も相まっての結果ではないでしょうか。
5着 グランデストラーダ
シルクレーシング所属のクラブ馬で、中央では3勝クラスを勝てずに移籍しましたが、その後は南関東のAクラスで善戦し、スパーキングレディーカップでは3着に粘り込み、名古屋の秋桜(あきさくら)賞では地方Aクラスの牝馬相手に1.5秒差の圧勝と、新境地を開拓している1頭です。
1800m戦は最後の直線で振り切られたところでばててしまったように見えましたので、距離短縮で1500mになるJBCレディスクラシックは見せ場十分のレースも期待できます。
中央のコースが合わないだけで地方移籍後に勝鞍を伸ばす馬も数多くいますし、グランデストラーダも地方A級まで勝ち切った戦績を見れば、今年のJBCこそ勝負の1頭と見ていいでしょう。
レース総評
ブリーダーズゴールドカップに参戦できず、秋はこのレースから始動することになったレーヌブランシュが、文字通り「復活の前奏曲」を奏でるような勝利を飾り、3歳関東オークス以来の勝利を掴みました。
今年のこのレースはトップクラスのマルシュロレーヌや左回りの日本テレビ杯に回って勝ち切ってしまったサルサディオーネがいなかっただけに、この勝利の真価が問われるのは、次の1戦となるでしょう。
300mの距離短縮でJBCレディスクラシックへ向かうのか、あるいは2100mのJBCクラシックへの参戦を目指す馬もいるかもしれません。大一番に向けて、しっかりと助走をつけることが出来た1戦に見えました。