大井の春を告げる1400mを4連覇した、地方馬初のJBC勝者フジノウェーブ。
東京スプリング盃が、「フジノウェーブ記念」に名称が変わってから今年で8回目のレースです。
今年の出走馬は4歳から10歳まで、幅広い世代の16頭。
馬場はとにかく逃げ先行馬有利のコンディションで、近走前に行けなかった馬が逃げを打って粘り切っているレースもあり、差しを得意とする馬たちには難しそうな状態でした。
2019年の勝ち馬キャプテンキングはこの最近の成績がいまひとつながら、このレースでの勝利実績も評価されてか6番人気でゲートイン。各馬すんなり収まってゲートが開きました。
レース概況
1000m戦でレコードを出した韋駄天・クルセイズスピリツがスタートを決めて軽快に飛ばし、ベストマッチョとカプリフレイバーが追いかけて番手、外にはブルミラコロもついていきました。キャプテンキングは和田譲治騎手が促しながら、内にいたクロスケに併せて5番手へ。
人気のサブノジュニアはちょうど中段の外、グレンツェントは後方5番手から差しの構えで3コーナーへ向かいます。
逃げるクルセイズスピリツは1000mを60.5秒でレースを引っ張ります。
ペースについていけなくなった先行馬たちが脱落してゆく中、直線に向いたところでベストマッチョ先頭に立ちました。クルセイズスピリツも負けじと、馬場を利して粘り込みを狙います。さらには脱落した馬たちを見ながら外々を走っていたサブノジュニアと、後方から切り返してさらに外に持って行ったグレンツェントも良い脚を使っています。
しかし、外を回るロスがあった2頭よりも前に、キャプテンキングの姿がありました。
終始ベストマッチョの真後ろに入ったことでロスなく直線に向き、残り100Mでベストマッチョを交わして先頭でゴール。有力馬たちも順当に上位にくる中、ロスなくきれいなレースをして復活勝利をあげることが出来ました。
各馬短評
1着 キャプテンキング
2019年にこのレースを制し、その後春の連勝に繋げたときは自ら前向きにハミをとって進むレーススタイルが印象的でした。その時の姿と比べてしまうと馬齢を感じるところですが、力まなかったのも競走馬として成熟した証でしょう。もしかしたら前を走っていたクルセイズスピリツの成長にも何か感じる所があったかもしれません。ベストマッチョの真後ろにつけてロスを最小限に収めた和田譲治騎手の手綱さばきが見事でした。
2着 ベストマッチョ
1400mで逃げ先行を得意とする馬でしたが、中央デビュー後は東京競馬場を中心に使われ、移籍後も浦和競馬場で3連対しながら大井競馬場のJBCスプリントでは着外。"左回り巧者"に大井コースはどうか、という懸念がありました。しかし、スタートを決めてしっかり位置を取りに行く競馬であと一歩の2着に粘り込みました。
地方移籍後はG1級競走以外では崩れていないように、実力は十分。
今回は勝馬にマークされた影響もある敗戦なので、引き続き前に行き切ってしまえば勝ち負けできそうです。
3着 グレンツェント
大井コースでの戦績は安定しているものの、得意な距離がマイルであり、1400mのこのレースでは忙しそうでした。上り2位の末脚を繰り出し、外を回して追い込む距離ロスがあっての結果なので、次戦以降、得意のマイル戦であれば唸る末脚に引き続き期待が持てます。
こちらも昨年の春以降は馬券外のレースがありませんが、馬場コンディションの不利を跳ね返したように、実力はまだまだ健在です。
4着 サブノジュニア
JBCスプリント勝馬のサブノジュニアですが、こちらは得意距離よりは1ハロン長く、またトップハンデ59キロが不安視され2番人気でした。
レースは実力馬らしく堅実に外を回す戦法でしたが、ロスなく回ってきた2頭を交わし切れず、グレンツェントにもハナ差で敗れる結果となりました。それでも、勝ったキャプテンキングに次ぐ上り4位のタイムを出し、実力を証明しました。
斤量を背負ってしまうG1級タイトルホルダーの宿命にどう立ち向かうかが、今後の課題となるでしょう。
5着 クルセイズスピリツ
1400mでの勝鞍こそありますが、1000mでレコードタイムを叩き出した通り、とにかくスタートから勢いよくかっ飛ばしてどこまで粘るか、という個性派です。
今回は逃げ先行馬有利の馬場にも助けられましたが、過去に同レースで早々に沈んでいたことを考えると、よく頑張って粘ったと言えるでしょう。
レース総評
キャプテンキングが最後に馬券になったのは昨年の春、最後に勝ったのはそこからさらに1年前のことでした。キャプテンキング、2年ぶり2度目のフジノウェーブ記念勝利は、まさに復活と言って差し支えないでしょう。
春になると南関重賞はスプリント組とマイル組でレース選択が変わるので、その間にある1400mの重賞は各路線の実力馬が揃います。そういう点でも、価値のある勝利でしょう。
人気どころの各馬はそれぞれ一長一短ありつつも、実力をしっかりと見せたレースでした。
その中でも時間をかけてしっかり仕上げてきた「羽田盃の王者」が復活したのは、今後の熱戦に期待ができるレースになったと言えます。
今年のレースの上位陣は7・8歳世代でしたが、9歳馬ノンコノユメ、10歳馬リッカルドや11歳馬サウンドトゥルーのように、更に高齢の世代でも円熟味を増して重賞で活躍する馬もまだまだいます。この復活をきっかけに、今後も名勝負を繰り広げてほしいところです。