キングヘイロー - 輝ける「一流」の血統

1.「最難関」のウマ娘・キングヘイロー

2022年2月にリリース1周年を迎えたスマートフォン向けゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』。ハイクオリティなゲームデザインと競馬へのリスペクトがふんだんに盛り込まれたシナリオによって、多くのファンを獲得した作品である。そのゲーム『ウマ娘』のリリース当初、最も育成の難易度が高いと話題になったウマ娘が「キングヘイロー」であった。

ご存知の読者も多いかもしれないが、ゲーム『ウマ娘』において、ウマ娘は実際の競走馬と同様にトレーナーの下でトレーニングを積んだ上でGⅠでの勝利を目指してレースに出走することになる。ウマ娘ごとに目標となるレースは決まっており、目標レースにおいて指定された着順以内に入らなければゲームオーバーとなるルールだ。キングヘイローの育成においては、皐月賞・日本ダービーといった中距離レースで入着した上で短距離王決定戦・高松宮記念で1着を獲ることが求められる。つまり、東京2400mを走りきるスタミナと、中京1200mを先頭で駆け抜けるスピードの両方が必要となる。限られた期間の中でスタミナとスピードを両立させた育成を行うことは難しく、リリース当初は多くのプレイヤーが育成に苦心することとなった。

では、なぜこのような高難度のゲーム設定になっているのだろうか。ウマ娘・キングヘイローは「一流」を目指して苦闘するキャラクターであるが、競走馬・キングヘイローも「一流」の血統を証明するために戦い続けた名馬であった。その馬生を振り返りながら、この問いについて考えたい。

2.「一流」の血統と苦闘

父は欧州で「最強馬」と謳われたダンシングブレーヴ、母は米GⅠを7勝したグッバイヘイローと、輝かしい「一流」の血統を持つキングヘイローは、1997年にデビュー。2歳を4戦3勝2着1回の準パーフェクトで終える。多くのファンにとって、間違いなくクラッシック戦線の主役になり得る一頭であり、3歳初戦となった皐月賞トライアル・弥生賞で1番人気に支持されるのも肯ける。しかし、その弥生賞でスペシャルウィーク・セイウンスカイの2頭に先着を許すと、皐月賞・日本ダービーの二冠もこの2頭が分け合った。キングヘイローは「3強」と呼ばれた3頭の内、唯一春のGⅠに手が届かなかったのである。特に日本ダービーではスペシャルウィークに次ぐ2番人気に支持されながらもダービー初騎乗の福永祐一騎手が馬を抑えられずに逃げを打つことになり、14着という大敗であった。大きな挫折を味わったキングヘイローは、秋も菊花賞で5着に入るなど善戦は見せるものの、この年1勝も出来ずに終えることとなった。

明け4歳となったキングヘイローにGⅠを勝たせるために、陣営はマイル戦へと舵を切る。そして東京新聞杯・中山記念を連勝したキングヘイローであったが、安田記念では11着大敗。再び中距離に矛先を向けた宝塚記念は8着、天皇賞(秋)は7着。年末にマイルCSとスプリンターズSでそれぞれ2着・3着して実力の片鱗は見せたものの、この年もGⅠ制覇を成し遂げることは出来なかった。

ここまでの戦績は「力はあるけれども善戦止まりの重賞ホース」ともいえるもの。十分に優秀な競走馬ではあるが、血統に相応しい「一流」の戦績には今一歩届かないと言えるだろう。中距離・長距離・マイル・短距離と戦場を変えながらGⅠに挑み続けるキングヘイローのローテーションからは、「何とかしてその血統に相応しいタイトルを」という陣営の苦心が窺える。

3.「一流」への軌跡

明けて2000年、陣営は大きな決断を下す。ダートGⅠ・フェブラリーステークスを5歳の初戦に選んだのである。確かに母はケンタッキーオークスを勝つなど米ダートGⅠで活躍した名牝である。血統からはダートでの好走も期待できよう。それもあってキングヘイローはレースを1番人気で迎えた。実は、キングヘイローがGⅠで1番人気となるのはこの時だけである。ところが結果は内枠が仇となって砂を被り、13着大敗。結果が伴わない路線変更は、「迷走」とさえ呼べるかも知れない。

それでもGⅠ制覇という目標は変わらなかった。春2戦目の舞台に選ばれたのは高松宮記念。前年のスプリンターズステークス覇者ブラックホークや仏GⅠアベイユ・ド・ロンシャン賞を制覇したアグネスワールドなど、快速自慢が集う中、キングヘイローは4番人気であった。しかし、この2頭や伏兵ディヴァインライトなどをまとめて撫で斬る電撃の末脚を見せて勝利。短距離王者として日本競馬史に名を刻むことになった。易きに流れずGⅠ制覇という目標を揺るがさなかった陣営の苦闘が報われる日が訪れたのである。

その後は勝ち星には恵まれなかったものの、安田記念では香港のフェアリーキングプローン、英国のディクタットに次いで日本馬最先着の3着を確保し、ラストランとなった有馬記念では上がり最速の末脚で追い込んで4着。距離を問わない「一流」の実力があることを示してターフを去った。

4.今なお輝く「一流」の血統

──さて、冒頭の問いに戻ろう。

ウマ娘・キングヘイローの育成が高難度になっているのはなぜなのか?

それは、栄冠を掴むために困難な道程を戦い続けたキングヘイロー陣営の挑戦をプレイヤーに追体験してもらうためではないか。歯応えのあるウマ娘・キングヘイローの育成を通して、プレイヤーはキングヘイローが「一流」となるまでの軌跡に伴った困難に共感することが出来る。その体験は、競馬というスポーツの奥深さの一端を理解することにも繋がるだろう。高難度の背景に、「名馬・キングヘイローの挑戦を知って欲しい」「キングヘイローを通じて競馬への理解を深めて欲しい」という、競馬へのリスペクトを欠かさない『ウマ娘』スタッフからのメッセージが込められていると考えるのは穿ち過ぎだろうか。

2000年にターフを去り、2019年にこの世を去った競走馬・キングヘイローであるが、『ウマ娘』から競馬に興味を持ったファンは、その血統を継ぐ馬の活躍を目にすることが出来る。2021年、「母父キングヘイロー」「父キングヘイロー」の馬が重賞戦線を賑わせたことは記憶に新しい。しかも、阪神大賞典を勝ち、有馬記念で2着に入ったディープボンド、ダービーグランプリを制した南関の雄・ギガキングなど、キングヘイローが勝利を掴めなかった長距離やダートにおいても活躍馬が出た。

競馬というブラッドスポーツにおいて、その血統が持つポテンシャルの高さを証明し続けるキングヘイローは、死してもなお「一流」である。

2022年の3歳世代においても、イクイノックスやウォーターナビレラ、兵庫のガリバーストームなど、キングヘイローの子孫たちが期待を集めている。「一流」の血統を証明するための戦いはこれからも続いていく。ますます輝きを増すキングヘイローの血が紡ぐ物語を、これからも楽しみにしたい。

写真:かず

開発:Cygames
ジャンル:育成シミュレーション
プラットフォーム:iOS/Android/PC
配信:日本
利用料金:無料(一部有料コンテンツあり)
URL:
・AppStore
https://apps.apple.com/jp/app/id1325457827
・GooglePlay
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.cygames.umamusume
・DMM GAMES
https://dmg.umamusume.jp
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