一生に一度の晴れ舞台、日本ダービー。
世代頂点を決める一戦ですから、どの陣営も全力投球です。
それだけ重要なレースともなると、勝ち馬は勿論のこと、負けた馬たちにも多くの「未来の名馬」がいるものです。
今回は「ダービーで敗北した名馬」にスポットを当ててご紹介していきたいと思います。
あの名馬も、あの名馬も、実はダービーに出ていたのです!
キタサンブラック 2015年 14着
のちに年度代表馬となったキタサンブラックの、現役時代唯一の二桁着順が、この日本ダービーでした。
キタサンブラックは、デビューから3連勝でスプリングSを制覇。
皐月賞でもドゥラメンテ・リアルスティールに次ぐ3着に好走していましたが、母父がスプリンターのサクラバクシンオーという血統構成などから「距離不安説」が囁かれ、ダービーでは6番人気になりました。
そのダービーでは14着に敗れたため、ある意味では距離不安説が的中した結果となり、秋以降はマイル〜中距離路線に進むかと思いきや、セントライト記念・菊花賞に挑戦。そしてそこを連勝し、一気にスタミナ自慢のG1馬の仲間入りを果たしました。
その後も、天皇賞・春を連覇するなど、歴代最強クラスのスタミナを見せつけファンを沸かせました。
ローレルゲレイロ 2007年 13着
9戦1勝でダービーに挑んだのが、このローレルゲレイロ。
デビュー戦こそ勝利しましたが、朝日杯FSで2着、NHKマイルCで2着など、ダービーまでに5度の2着、2度の3着を経験します。
勝てずとも大崩れしないというのが、この馬の魅力でもありました。
しかし遂にダービーで13着に大敗すると、得意距離に戻ってからもキーンランドCを11着、富士Sを10着、マイルCSを16着と惨敗が続きます。
雌伏の時を経て、明け4歳初戦となった東京新聞杯で待望の2勝目をあげると、そこからはスプリント〜マイル路線の強豪として君臨。5歳になると春秋スプリントG1制覇を達成し、JRA賞最優秀短距離馬に輝きました。
レインボーライン 2016年 8着
2018年の天皇賞・春でG1制覇しファンを沸かせたこの馬も、ダービーを走っていました。
当時のレインボーラインはマイル路線を主戦場とする馬。
アーリントンCを優勝したほか、NHKマイルCでも12番人気ながら3着に食い込む活躍を見せていました。
しかしダービー以降は一転、札幌記念(8着)→菊花賞(2着)→ジャパンC(6着)と、中長距離路線にシフトしていきます。
後々ステイヤーとして成功を収めたレインボーラインにとって、まさに転機となるレースだったのではないでしょうか。
サクセスブロッケン 2008年 18着
ダートでデビューし、圧勝・完勝続きの4連勝。
その大物っぷりに、ダービーが「初芝」にもかかわらず3番人気に推されました。
レースでは好位にポジショニングして果敢なレースぶりを披露するも、直線で失速すると優勝したディープスカイから2.2秒離された最下位に沈みます。
これが、サクセスブロッケンの現役時代における最初で最後の芝レースとなりました。
ダービーの次走では、ダートの3歳交流G1ジャパンダートダービーに出走し、2着のスマートファルコンに3馬身以上の差をつけて快勝。その後もフェブラリーS・東京大賞典を制覇するなど、カネヒキリ・エスポワールシチー・フリオーソらとともにダート界を盛り上げる名馬となりました。
さらに、引退後は誘導馬として人気者に。
2020年のダービーでは誘導馬を務めています。
ラブリーデイ 2013年 7着
5歳になって才能を開花させ、鳴尾記念→宝塚記念→京都大賞典→天皇賞・秋と、夏を跨いで4連勝を達成したラブリーデイも、実はダービーに出走していました。
ラブリーデイはデビュー戦・野路菊Sと連勝し、京王杯2歳Sでも2着に食い込み、賞金を稼ぎます。そこから先は朝日杯FS(7着)、毎日杯(11着)、皐月賞(15着)など、ダービーまで賞金加算はできなかったのですが、序盤の活躍が功を奏してダービー出走へとこぎつけました。
当時は一部のファンから「早熟な馬では?」との声も上がっていましたが、ダービーではキズナと0.4秒差でゴール。ここから少しずつ、ラブリーデイの復活が始まります。
3歳夏は独自路線を歩み、小倉記念・金鯱賞と連続2着。
年末にはオルフェーヴルの引退レースとなった有馬記念に挑戦し、12着に。
その有馬記念12着がラブリーデイの現役生活における最後の二桁着順で、翌々年に大ブレイクを果たします。
「最優秀4歳以上牡馬」の称号は、才能を信じ、見限ることなく工夫を続けた陣営の努力が掴み取ったものではないでしょうか。
アドマイヤムーン 2006年 7着
皐月賞前までは6戦5勝2着1回と、非常に安定感のある走りを見せていたアドマイヤムーン。
弥生賞・共同通信杯・札幌2歳Sといった名だたる重賞を3勝した実績から皐月賞で1番人気に推されたものの、そこで4着に敗れます。
そして続くダービーでは、二冠を達成したメイショウサムソンに0.9秒差をつけられて7着。
これが現役時代、唯一となる掲示板外の大敗でした。
このままズルズルと長いスランプに入ってしまうのではないかと危惧されましたが、そこからはアドマイヤムーンの意地が炸裂。
夏に札幌記念を制覇し復調をアピールすると、翌年にはドバイDF・宝塚記念・ジャパンCを勝利。
1777m戦〜2400m戦と幅広い条件で活躍し、年度代表馬にも輝きました。
種牡馬としても2018年最優秀短距離馬・ファインニードルをはじめ、多くの活躍馬を送り出しています。
ジャスタウェイ 2012年 11着
ディープブリランテ・岩田騎手、フェノーメノ・蛯名騎手の壮絶な叩き合いが繰り広げられた2012年ダービー。3着トーセンホマレボシ、4着ワールドエース、5着ゴールドシップとタレント揃いのダービーでしたが、その舞台で勝ち馬と1.0秒差でゴールをしたのが、ジャスタウェイでした。
ジャスタウェイはアーリントンCで優勝、新潟2歳Sで2着といった実績をあげ、NHKマイルCにてG1初挑戦。そこでは1着馬カレンブラックヒルと0.8秒差の6着に敗れますが、そこから果敢にダービーへの挑戦を敢行しました。
ジャスタウェイにとって、ここでの11着が現役時代唯一の二桁着順。
その後成長を遂げると、4歳では天皇賞・秋を制覇。
2着のジェンティルドンナに4馬身差をつける完勝でした。
さらには翌年、ドバイDFで6馬身差の快勝劇を演じます。
その走りが評価され、ベストレースホースランキングにおいて日本初の世界単独トップに立つという快挙を成し遂げました。
さて、ここまで7頭の「ダービーで負けた名馬」をご紹介してきました。
ダービーというのは特別な舞台です。
しかし、ダービーが終わった瞬間に、次なる戦いが始まっているのです。
別の路線に進む馬。
そのまま中長距離路線で頑張る馬。
夏に早くも古馬との戦いを済ませて独自路線を切り拓く馬。
自身の成長・本格化を待ち、じっくりと鍛錬に励む馬。
いつ才能が開花するかは、その馬次第です。
ダービーに負けてからも前を向き続ける馬が飛躍する瞬間もまた、競馬の醍醐味のひとつと言えるでしょう。
サイレンススズカも、テイエムオペラオーも、ゴールドアリュールも、ダービーでは負けてしまっているのですから。