こんにちは。ウマフリライター、徳澤泰明です。
世の中に様々ある、家宝級の競馬アイテム──。
今回は馬券編の第7回目として、「ウマ娘」にも登場する競走馬の紙馬券をご紹介します。
「ウマ娘」については、筆者自身、最初は斜に構えて遠目から見ていたのですが、ひょんな事からアプリにハマり、アニメを見てみると凄く細かいところまで競走馬の特徴や癖が描かれていたり、各馬(各陣営)の苦悩やレース展開が忠実に再現されていたり、それでいて全てを忠実に描き切るわけでもなく、奇跡的なバランス感覚でファンが見たかった「夢」をブレンドしていたりと、少なくとも筆者よりも俄然競馬史に明るく、圧倒的に情熱を持った方々によって作品化されている事を感じました。
また、以前ウマフリにも登場した伊藤隼之介氏(アニメ「ウマ娘 プリティーダービー」プロデューサー(第一期)、「ウマ娘 シンデレラグレイ」漫画企画構成)と偶然バーで隣の席になり何時間か語らせていただいた際、競馬に関する記憶の多さ、それを言葉で表す上手さ・的確さ、何より競馬愛の深さに感銘を受けっぱなしで、「ウマ娘」が競馬界にとどまらず社会現象とまでなっている理由が分かった気がしました。
筆者も自分なりのスタイルで、馬券という一枚の紙から見る競馬の面白さや奥深さ、馬券から思い返される当時のファンの抑えきれない感情や景色を伝えていきたいと思います。
ウマ娘から競馬を始めた方が楽しめる事はもちろん、競馬歴が長くコアなファンも思わず唸ってしまうような記事に出来ていれば幸いです。
それでは、見ていきましょう!
※以前ご紹介した物も、改めて掲載しております。
※他の記事と同じく、画像の無断転用はお控え下さい。
物語の始まりとなった、デビュー戦の現地馬券
波乱にも満ちた各馬の輝かしい戦績は、ここから競馬史に刻まれていきます。
「血統や馬名が好きで注目している馬」「ノーチェックだったけど走りを見てファンになる馬」を新馬戦から応援すべく、関西中心に毎週競馬場に足を運んでいる方からとても貴重なお写真をいただきました。
戦績上の終着点、ラストレースの馬券
一方、こちらはラストレースの馬券です。ただ、ラストレースといっても様々。
最後だと分かって買ったもの、思いがけず最後になってしまったもの……。
泣いても笑っても、最後となった一枚です。
まずは、現地で声を届けたレース、遠方で走る姿を画面越しに手に汗握って見届けたレースなど、様々な思い出が染み込んだサイレンススズカの馬券集です。
やはり筆者は、どうしても右下の2枚(最後の2戦)に目が行ってしまいます。
錚々たる名馬が集い、GⅡにも関わらず13万人もの観客が東京競馬場に集まった1998年毎日王冠。そのレースを単勝オッズ1.4倍もの人気に応えて強く勝ち、1.2倍という絶大な人気と期待を背負って迎えたGⅠ天皇賞・秋。「沈黙の日曜日」とも称された悲しいラストレースとなりましたが、当馬が魅せた力強さやスタートからゴールまで先頭の景色を譲らない美しさ、多くのファンが夢見た「その先」はずっと色褪せない事でしょう。
こちらは、阪神・淡路大震災の影響により京都で行われた1995年宝塚記念ライスシャワーの現地馬券です。
ミホノブルボンのクラシック三冠やメジロマックイーンの天皇賞・春三連覇の前に立ちはだかり、物語の中で「ヒール」として描かれた当馬。当日の単勝オッズは3番人気でありながら、「ファン投票1位」で迎えた晴れ舞台でした。この事からも、レースの適性や相手関係といった馬券的な旨み云々よりも、シンプルに競走馬としての大きな魅力と人気があった事が窺えます。あのような最後は、ただただ残念でなりません。
自身だけでなく共に走った馬も巻き込んで、時には残酷なまでに光と闇のコントラストを鮮やかに際立たせた生涯。根強いファンが今でも多い競走馬です。
続いてこちらは、「トウカイテイオーが来た!?」でお馴染み、1993年有馬記念の馬券です。
「有馬記念で骨折して1年後の有馬記念で復帰・快勝」という、誰が語ってもドラマチックにならざるを得ないレース名と馬名が刻まれています。
また、長期休養明けGI勝利の最長記録(前回出走から中364日)は2022年7月時点で未だ破られておらず、故障による休養を余儀なくされた馬や関係者にとっての希望・道標となるような軌跡を最後に残してくれました。
アグネスタキオンが無敗の4連勝で制した2001年皐月賞の現地馬券です。
全兄アグネスフライトが前年の日本ダービーを制していただけでなく、母アグネスフローラは桜花賞を、祖母アグネスレディーも優駿牝馬を制している良血馬。多くのファンがダービーへの出走はもちろん、競走馬としてのその後の活躍を期待する中、左前浅屈腱炎による無念の引退発表。早すぎるラストレースとなりました。
種牡馬としても急性心不全により「11歳」と早逝してしまいましたが、初年度からGⅠを含む重賞戦線で勝ち星をあげる産駒を輩出し、2008年にはディープスカイが日本ダービーを、ダイワスカーレットが有馬記念を制すなど圧倒的な存在感を示し、内国産種牡馬としては51年ぶりとなる「JRA総合リーディングサイアー」に輝いています。
2001年テイエムオペラオーのラスト3戦、同年の有馬記念を走ったナリタトップロード。そして、宝塚記念と、当時まだGⅡだった大阪杯のエアシャカールの現地馬券です。いずれも勝ち馬にはなりませんでしたが、大切に保管されている様子やそれぞれ最後まで食らいついて「もう1勝」を積み重ねんとする姿を見て、戦績だけが栄誉ではない事、勝つ事だけが有終の美ではない事に改めて気付かされました。
数万人の思いが交錯した、数々の名場面
続いて、皆さんお持ちの馬券から、数々の名場面に触れていきましょう。
一枚一枚が「歴史的瞬間の立ち合い人となった証」とも言えるのではないでしょうか。
こちらは、第1期の主人公スペシャルウィーク、そしてウマ娘のアニメにも登場した武豊騎手が日本ダービーで勝利した時の全現地馬券と、勝ち馬が堂々と載った翌年の入場券です。
1996年阪神大賞典。3着以下を9馬身離した直線での競り合い──。多くの歓声と胸の高まりが刻まれた、ナリタブライアンとマヤノトップガンの馬券です。
「2頭の馬連」ではなく、「それぞれの単勝」というところからも、複雑なファン心理、熱い思いが伝わってきます。
こちらも、秋の大舞台でのレコード決着、競馬ファンならきっと一度は目にした事がある名勝負ですね。
兄弟に目立った活躍馬がいなかったウオッカと、社台ファーム出身でダイワメジャーの半妹という事でデビュー前から注目されていたダイワスカーレット。さらにその年のダービー馬ディープスカイも交えて名ライバルが繰り広げた世紀の大接戦。現地で見届けた方が羨ましい限りです。
こちらは、その大接戦をウオッカの単勝を買って見届けた方よりいただきました。
JRAでは馬券のコピーサービスを行っており、換金前にこのようにコピーする事も可能です。
「確定」の赤ランプが灯るまでの13分にも及ぶ写真判定中のドキドキ、そして換金した時の喜びまで思い返される宝物ですね。
「推しの2頭を1枚に収めたい」という思いで買われた2007年エリザベス女王杯の馬券です。
デアリングハート(デアリングタクトの祖母)、キストゥヘヴン(タイムトゥヘヴンの母)、フサイチパンドラ(アーモンドアイの母)など、母馬として今も競馬界を大いに盛り上げている名牝達が顔を合わせており、色褪せるどころか、時代を経てから振り返る事で一層深みが増しているレースですね。
1993年に「有馬記念3年連続3着」となったナイスネイチャの現地単勝馬券です。
2022年7月現在、有馬記念で3年連続馬券内に入ったのはゴールドシップ(2012年1着、2013年3着、2014年3着)、キタサンブラック(2015年3着、2016年2着、2017年1着)、ナイスネイチャの3頭。それだけ安定して好走を魅せた3頭のうち、勝ってないのはナイスネイチャのみ。他のGⅠでも何度か5着以内となり掲示板に乗るも、最後までGⅠは勝ちきれませんでしたが、筆者はそんな馬だからこそ何だか愛おしく思えてしまいます。
続いて、「グラスワンダーは新馬戦以外全部単勝で持っている」という方から、グラスワンダーとセイウンスカイの馬券のお写真をご提供いただきました。
一頭を追いかけ続ける情熱が、そのまま形になって残っていて素敵です。
chocolat様が父親から譲り受けた馬券集です。小さい頃から競馬場に連れていってもらい、いつの頃かサラブレッドの美しさに魅了され、ナリタブライアンに一目惚れしたそうです。
「当たらない」事から交通安全のお守りにもされたいうエピソードも有名なハルウララの馬券です。
なんとこちらは、100戦(或いは100敗目)の現地馬券。ご利益や、いかに!?
当時の高知競馬場の馬券には馬名が入らず、ハルウララのハンコを押していただいたそうです。
この年からGⅠに昇格した大阪杯の現地馬券。ご覧の通り、特別仕様の馬券になっています。
JRAの平地GⅠ全制覇まであと僅かである武豊騎手が颯爽と勝ち取っていったのが印象的でした。
なお、2022年7月現在、武豊騎手がまだ勝っていないのは大阪杯と同じく2017年にGⅠに昇格した「ホープフルステークス」ただ一つです。
1991年天皇賞・秋。1着入線かと思いきや斜行による降着で最下位となり、悔しさも詰まったメジロマックイーンの馬券です。
GⅠでの1着入線馬の降着は史上初の出来事でした。
メジロマックイーンは天皇賞・秋で降着となった後、単勝オッズ1.9倍の人気を背負いながら4着となったジャパンカップを経て、スタミナと強さが求められるため多くのファンが得意条件と見込んだ有馬記念を1.7倍で迎えました。しかし、結果は「これはびっくり、ダイユウサクゥ!?」という有名な実況の通り。超大穴の伏兵ダイユウサク(137.9倍)に先頭を譲っての2着。
アニメseason2-12話のあの名シーンの大号泣が、ここでも聴こえた気がしました。
ウマ娘から、現実世界の競馬への「逆輸入」!?
こちらは、アプリ内の育成シナリオ「アオハル杯 ~輝け、チームの絆~」にライバルとして登場したキャラクターと同じ名前の競走馬、ビターグラッセのデビュー戦現地馬券です。
馬主の山口功一郎さんは、ビターグラッセと同じくアオハル杯に登場したリトルココン、URAシナリオに登場するハッピーミークも、所有馬に命名なさっています。
今後のデビュー・活躍が楽しみです!
2022年4月29日に笠松競馬場にて行われた「ウマ娘シンデレラグレイ賞」全頭の現地馬券です。
名馬オグリキャップの毛色にちなみ、芦毛馬・白毛馬限定での実施となりました。
雨も降る中、公式発表された来場者数は15時30分(入場無料として解放される前であり、メインレースの2時間前)の時点で4634名。IPATでの購入対象外だったにも関わらずこのレースだけで約8800万円の売上となり、ウマ娘の人気を改めて実感しました。
また、勝ち馬ヤマニンカホンの鞍上は、このレースで紅一点の深澤杏花騎手。2020年の春にデビューして以来、8ヶ月間のレース休止等の苦難を経て、大きな拍手に迎えられての逃げ切り勝利。一躍注目を浴びる形となり、「シンデレラグレイ賞」にふさわしい結果となりました。
メイタイファームが馬名を公募し、応募総数187通の中から「面白枠」として12本の候補に残り、最終投票で第一候補となったパクパクデスワのデビュー戦現地馬券です。
アニメ、アプリともに「パクパクデスワ」という台詞は出てきていませんが、スーパーマーケット「スーパー万代」の店内POPに書かれていたメッセージ内にこの言葉があった事からファン達の中でも話題となりました。
また、「面白枠」には他にエイエイムン、タヅナサン、ウマドルの3頭が候補に残っており、馬主の大田恭充さんの所有馬にはウマピョイとアゲマセンもいるそうです。
ウマ娘ファンとしては他人事(他馬事?)とは思えず、こちらも今後のデビューや活躍が楽しみです。
家宝級競馬アイテムのお写真、まだまだ募集中です
いかがだったでしょうか。
今回の記事だけでは到底紹介しきれない競走馬達のドラマがあり、これから出てくる新たな馬が拓く世界も楽しみで、まだまだ筆者自身も馬券等を通じて様々な出来事や目撃者となった方々の熱い話に触れていきたいと思います。
珍しい馬券やお宝グッズをお持ちの方、Twitter等から筆者(徳澤)まで気軽にご連絡下さい。
それでは、また。
※いただいたお写真は、他の写真との兼ね合い等で、掲載できない場合もございます。
※「ご自身で買ったもの」「友人やコレクター仲間等から記念品として譲り受けたもの」を中心にご紹介しております。