![[連載・クワイトファインプロジェクト]第48回 牡馬誕生、そして今後なすべきこと](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2025/03/IMG_9256.jpeg)
2月21日、繁殖牝馬バトルクウが、クワイトファインの牡馬を産みました。
クワイトファインにとって、二頭めの牡馬となります。
シンボリルドルフ→トウカイテイオーのサイアーラインを次代に繋ぐという当プロジェクトの命題にとって、牡馬が産まれたことは何より喜ばしいことですが、まずは離乳までの時期を大過なく乗り切ることが最初の関門となります。

そして、プロジェクトが具体的に始まった2019年秋から5年の歳月が流れ、プロジェクトを取り巻く状況も変わってきています。
一つは産駒のデビュー。
もう一つは、最大の味方であり、最大のライバルである、パールシークレットの本邦輸入、供用開始です。
産駒がデビューしたということは、期待値ではなく結果で評価されることになります。実質的な初年度産駒は2頭、いずれも(母馬にとって)初仔である等のハンディはありましたが、世間は結果でしか評価しません。それが現実です。その意味では、現2歳世代には本当に結果を出してほしいと願っています。
一方、パールシークレットの存在も、良くも悪くも(個人的には良い方が90%ですが)当プロジェクトに大きな影響を与えています。
最大の味方であることは、先般のウマフリコラムやYouTube動画でお伝えした通りであります。日本だけでなく全世界(とくに欧州)で種牡馬の寡占化が進み、ほとんどの種牡馬がファラリス系の主要3系統、すなわち欧州のノーザンダンサー、北米のミスタープロスペクター(+僅かにボールドルーラー)、日本のヘイルトゥリーズンで独占され、遺伝的多様性が急速に喪われていく現状。それに強い危機感を抱いた獣医師かつ生産者である下村優樹氏が、ホースマン人生をかけてパールシークレットを輸入しました。
私がクワイトファインを種牡馬とした理由もベースは全く同じであり、これからも全面的に下村さんを支持します。パールシークレットの成功のために微力ながら、いや、現在出来うる最大の協力をしたいと考えています。
一方で、「パールシークレットが日本に来たのだから、もはやクワイトファインはその役目を終えた」という意見も多く見られます。
単にバイアリーターク系の存続・発展を願うなら、パールシークレットだけに全集中すればいい。そして、彼のポテンシャルと日本の優秀な牝馬との配合で産み出された実力馬たちの貴重な血を再び欧州や米国に還元することは日本競馬の責務であり、それは(全世界の)競馬界の未来のためにとても重要なことです。
しかし、私のプロジェクトを5年の長きにわたり支えていただいたトウカイテイオー・シンボリルドルフのファンの皆様の熱量、それを無視する訳にはいきません。遺伝的多様性の確保のためバイアリーターク系を守り育てるという医学的・遺伝学的な大義名分と、テイオー没後12年弱を過ぎても衰えることのないファンの皆様の後押し、それは車の両輪です。
これまで私は2013年のクワイトファインの名義取得以来、様々な形で競馬サークルへの訴えを続けてきましたが、大義名分だけでもファンの皆様の声だけでも戦えませんでした。車の両輪は同じスピードで回ってこそ推進力になります。下村さんの「英断」によりようやく片輪の推進力が強くなってきた今、もう一つの車輪であるファンの皆様の熱量、その後押しが今後どれだけ力を増すかが、プロジェクトの行く末を左右します。
しかし、日々数値をチェックして今後の活動方向を模索している私として、ファンの皆様の熱量を具体的な数値に反映させられないもどかしさ、イコール自分の力不足を痛感しております。いや、力不足だけでなく「致命的な人格的欠陥」なのかも知れません。正直、私には「カリスマ性」がない。それがストレートに数字の差になって突き付けられています。
私は本来、裏参謀タイプなのかも知れません。冷静に現状を分析して、情に流されず、出来ることとできないことを峻別して、できないことはスパッと諦めたうえでタイミングを図って策を打ち出す方が向いているのでしょう。クラウドファンディングの立ち上げから今に至るまで、二兎も三兎も追うようなことはしてこなかったし、したくても出来なかった。それは今後も変わりません。どんなに批判を受けようとも(今だけを見るのではなく)プロジェクトの将来まで見据えたうえで大局的判断をしなくてはなりません。
この2025年3月は、プロジェクトにとっていくつかの大きな決断・選択を迫られる月になりそうです。厳しいご批判もあるでしょう。しかし、1年でも長くクワイトファインを現役種牡馬として供用していくため、そのために安定した基盤を作るため、「裏参謀」として、情に流されることなく、ぶれずに貫いていきたいと思います。