[重賞回顧]府中の王者・コスタノヴァ、復活のG1連覇!~2026年・フェブラリーステークス~ 

2026年2月最後の日曜日。いよいよ今年最初のG1、フェブラリーステークスがやってきた。
前年のチャンピオンズカップ上位3頭による再戦が実現。舞台は東京ダート1600m、国内マイル王者決定戦である。

人気を集めるのはダブルハートボンド。牝馬によるフェブラリーステークス制覇はホクトベガ以来なく、しかも彼女が勝利した1996年はG2格での最後の開催だった。勝てばG1となってからは初となる牝馬の同レース勝利に加え、史上8頭目のフェブラリーステークス、チャンピオンズカップ(ジャパンカップダート含む)のダブル制覇達成となる。

対するはウィルソンテソーロ。チャンピオンズカップ3年連続2着は実力の証だ。2年前はダートスプリント戦並みのハイペースに飲まれたが、今年はマイル以上を主戦場とするメンバー構成。流れひとつで逆転も十分に見込める。

5歳馬ラムジェットは末脚が戻ってきた。東京ダービー以降、常に強豪と戦い続けてきた経験値を武器に、これが最後のG1挑戦となる佐々木晶三調教師へタイトルを届けられるか。

ラムジェットと同世代のシックスペンスも、国枝栄調教師が最後にG1へ送り出す挑戦者だ。初ダートとなったマイルチャンピオンシップ南部杯ではウィルソンテソーロの2着。チャンピオンズカップではダブルハートボンドのペースに挑んで崩れたが、芝G2を3勝している実力馬が巻き返しを狙う。

昨年の覇者コスタノヴァは“出遅れ”との戦いが続く。前走の武蔵野ステークスでも唸る末脚で2着まで追い上げた。ゲート再試験をともに合格したルメール騎手が鞍上、最初の一歩が勝敗を左右する。

2年前の覇者ペプチドナイルも侮れない。勝利を分かち合った藤岡祐介騎手はこのG1には騎乗せず、小倉大賞典でケイアイセナに騎乗予定。今回はリステッドの大沼ステークスを共に勝った富田暁騎手との再コンビで復活を目指す。

勝利の餞か、新たな伝説か、それとも古豪の意地か。
好天に恵まれ、乾ききったダートコースに、フルゲート16頭が静かにゲートへと収まっていく。

レース概況

注目のスタート。コスタノヴァは五分の発進を決めた。一方でラムジェットはトモを滑らせるような格好で出遅れ、三浦騎手が押してポジションを取りにいく。

気合をつけて前へ出たのはペプチドナイル。ダートコースへ入るとロードクロンヌが先頭に立ち、さらに内の5番枠からスタートしたシックスペンスがこれに並びかける。1枠のオメガギネス、ハッピーマンが先行集団を形成し、ダブルハートボンドはその外目。チャンピオンズカップよりやや後ろの位置取りとなった。

その直後をウィルソンテソーロがぴたりとマークし、さらにその後ろ、馬群の外で機をうかがうのがコスタノヴァ。ウィルソンテソーロの内にペリエール、外にサイモンザナドゥ、その後ろ、コスタノヴァの内にはブライアンセンスとサクラトゥジュールが続く。後方にはロングラン、今回は控えたナチュラルライズ、出遅れたラムジェット、最後方にサンライズホークという隊列で4コーナーへ向かった。

残り600m、シックスペンスとロードクロンヌが引っ張る流れに、外からペプチドナイルが並びかける。古豪が意地を見せるなか、オメガギネスも進出を開始。ダブルハートボンドは外目で進路を探り、ウィルソンテソーロはその背後で射程圏を確保した。コスタノヴァはさらに大外へ持ち出し、末脚を解き放つ。

残り200m、ペプチドナイルの直後にブライアンセンスが迫り、その外からダブルハートボンドとウィルソンテソーロが横並び。そこへ大外からコスタノヴァが一気に脚色を強めた。

先頭に立ったコスタノヴァに、川田騎手の鞭に応えたウィルソンテソーロが食らいつく。しかしブリンカーを着けたコスタノヴァは、まるでゴールだけを見据えているかのように伸び続けた。半馬身差で押し切り、フェブラリーステークス連覇達成である。

2着はまたしてもウィルソンテソーロ。G1級競走7度目の2着となった。ダブルハートボンドは東京初参戦ながら先行集団から抜け出して3着。能力の高さを改めて示した。4着にはブライアンセンス。久々の府中で上位に迫る走りを見せた。

5着以下は3馬身差。オメガギネス、ペプチドナイルがハナ差で続き、外から伸びたナチュラルライズ、出遅れたラムジェットが追い込んだ。

なおラムジェットは入線後に三浦皇成騎手が下馬。取材に答えた佐々木晶三調教師によれば、右トモを捻ってしまった可能性があるとのことだ。大事に至らず、快癒することを願いたい。

各馬短評

1着 コスタノヴァ ルメール騎手

ゲート再試験明けで迎えた一戦。最大の課題だったスタートを五分に決めた時点で、勝負の土俵は整ったと言っていい。東京では8戦7勝2着1回、連対率100%。とりわけ東京マイルでは別格の存在であることを、改めて示した。昨年はキング騎手との先行抜け出し、今年はルメール騎手との後方一気で異なるポジションから連覇を達成した点も価値が高い。

武蔵野ステークスでの大出遅れからの豪脚2着は、通常なら大敗してもおかしくないミスだった。それでも追い込み一気の末脚で差を詰めてみせた内容は、能力の高さを物語っている。

今回も大外から力強く伸び、ウィルソンテソーロの追撃を封じ込めた。出遅れ癖という己との戦いにも打ち克ち、“府中の王者”が堂々のG1連覇である。

昨年は国内戦で出遅れて後方からの競馬が続いたが、今年はゴドルフィン・マイルの招待を受諾しており、順調に進めば次走は中東の舞台となる見込みだ。
再びスタートを決め、その末脚を世界の舞台で発揮する姿を期待したい。

2着 ウィルソンテソーロ 川田将雅騎手

またしてもG1級2着。これで7度目となるが、内容は決して悲観するものではない。
ダブルハートボンドを射程圏に置き、直線ではしぶとく脚を伸ばしてコスタノヴァに迫った。

坂井瑠星騎手のジョッキーカメラには、ゴール後に「なんかいますね、いつも」と声をかけられる様子が収められていた。ウィルソンテソーロはレモンポップ、フォーエバーヤング、そしてダブルハートボンドと、幾度となく坂井騎手の騎乗馬に挑み続けてきた存在だ。G1初挑戦の4歳時から、7歳となった今年まで衰えを見せないのは、マイルチャンピオンシップ南部杯、佐賀競馬場でのJBCクラシックを制したG1級2勝馬としての地力があるからこそ。今回は南部杯を勝ったダート1600mでの経験値が生き、ダブルハートボンドに先着。尾張で果たせなかったリベンジを府中で果たした格好となった。

それでも決め手比べで一枚上のコスタノヴァがいた。ただそれだけの差だが、その差は小さくて大きい。
東京マイルへの高い適性を改めて示し、G1級2勝の実績は伊達ではないことを証明した。
JRAのG1タイトルまではあと一歩。壁は厚いが、挑み続ける力はまだ十分にある。

3着 ダブルハートボンド 坂井瑠星騎手

牝馬初の”G1フェブラリーステークス”制覇こそならなかったが、その能力の高さは改めて示した。東京初参戦ながら先行集団の外で流れに乗り、ロングスパートで粘り込む内容。チャンピオンズカップ勝ち馬としての地力は本物である。

ジョッキーカメラを見返すと、内には1400m戦を主戦場としてきたハッピーマンやオメガギネスの姿があり、その直前を走るペプチドナイルらをしっかりと追走していた。昨秋のみやこステークス、チャンピオンズカップでハイペースを刻んだ走りが、府中の舞台でも再現できていたことがうかがえる。

今回は府中巧者が揃った一戦。それでもウィルソンテソーロと再びハナを合わせて勝負に持ち込んだ姿は、体質の弱さに悩んできた馬とは思えない力強さだった。適性の差がわずかに響いた形だが、牝馬ながら牡馬混合戦で頂点に挑み続ける姿勢は高く評価できる。

4着 ブライアンセンス 岩田望来騎手

直線では有力馬が外から迫るなか、内から鋭く脚を伸ばして上位3頭に肉薄。最終盤で外へよれたペプチドナイルの内をすくうように進路を取り、ゴール前まで見せ場を作った。勝ち馬とはわずかな差で、展開ひとつで馬券圏内も十分にあった内容だ。

G3マーチステークスの勝鞍が示す通り、近走は1800m戦を中心に使われてきたが、3歳時には東京マイルのユニコーンステークスで3着の実績がある(この時の勝ち馬は隣枠のペリエール)。久々の府中マイルで改めて適性を示した形だ。中団付近で脚を溜め、直線で確実に伸びるのがこの馬の持ち味である。

前走は岩田望来騎手がAJCCでディマイザキッドに騎乗していたため坂井瑠星騎手が代打騎乗となったが、今回はマーチステークスをともに制した岩田騎手とのコンビに戻っての一戦。人気上位馬に迫る走りは、重賞戦線での存在感を改めて示すものだった。

上位3頭が人気馬で決着するなか、10番人気で4着、勝ち馬から1馬身3/4差に食い込んだ価値は小さくない。マイルから中距離まで対応できる適性の広さを示し、今後の選択肢を広げる走りとなった。

レース総評

混戦模様と思われた一戦も、終わってみれば上位人気馬による決着。G1の舞台では、やはり地力が問われる。

勝ったコスタノヴァの上がり3ハロン35秒2は、良馬場開催のフェブラリーステークス勝ち馬として最速タイム。昨年サンライズジパングが同タイムで2着に入っているが、勝ち馬としては史上最速の末脚である。東京マイルという条件で、その決定力が最大限に発揮された。

一方で、10番人気ブライアンセンス、8番人気オメガギネス、11番人気ペプチドナイルと、このコースで実績を残してきた馬たちが上位に食い込んだ点も見逃せない。力のある馬が揃ったからこそ、“府中1600m”という舞台適性が色濃く反映された一戦だった。

そしてコスタノヴァは、G1級競走11勝を挙げたコパノリッキー、ワンターンのマイル戦で無類の強さを誇ったカフェファラオに続く、史上3頭目のフェブラリーステークス連覇を達成。
それぞれが2勝を挙げた際の騎手が異なるというのも、競馬という競技の奥深さを感じさせる。

2026年のG1開幕戦。暖かい西日に包まれた府中で、5万人を超えるファンがマイル王者コスタノヴァの連覇を祝福した。

写真:ぼん(@Jordan_Jorvon)、s1nihs

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