[オークス]ラヴズオンリーユー、チョウカイキャロル、ミッキークイーン。忘れな草賞をステップにオークスを制した馬たち

牝馬三冠の第2戦オークスは、JRAの牝馬限定戦で最も距離が長いレース。大観衆の前から発走するため、馬によっては平常心で臨むことすらままならず、ゴール前には長い直線と上り坂も待ち受けている。この時期の3歳牝馬にとっては、過酷を極めるレースといえる。

2026年のオークスで人気の中心となるのは、阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞を連勝中のスターアニスだろう。ただ、注目を集めるという意味では、ジュウリョクピエロも負けてはいない。桜花賞当日のリステッド忘れな草賞に出走した同馬は、最後方待機から勝負所で一気に捲ると、直線早々に先頭。最後は2着に2.1/2馬身差をつける完勝を収めた。前走に引き続きコンビを組むのは、女性騎手として初めてクラシックに騎乗する今村聖奈騎手。JRA史上初の快挙が期待されるのはもちろん、2歳時にダートを主戦場としていた点や、オルフェーヴル産駒という点でも注目を集めるだろう。

今回は、忘れな草賞をステップにオークスを制した馬たちを振り返りたい。

■2019年 ラヴズオンリーユー

ディープインパクト産駒で、全兄に2016年のドバイターフを制したリアルスティール、三代母に世界的名牝ミエスクがいるラヴズオンリーユーは、2017年セレクトセール1歳市場において1億7280万円(税込)で(株)DMM.comに落札され、リアルスティールと同じく栗東・矢作芳人厩舎からデビューを果たした。

初戦は11月におこなわれた京都・芝1800mの新馬戦で、出遅れながらも2着に1.1/4馬身差をつけて快勝すると、中2週で臨んだ白菊賞も出遅れながら完勝。2戦2勝でこの年を終え、M.デムーロ騎手に乗り替わった3歳初戦の忘れな草賞を3馬身差で勝利して臨んだのがオークスだった。

この年のオークスは、桜花賞を圧倒的な強さで制したグランアレグリアがNHKマイルCに出走したことで大混戦となった。そんな中、重賞初挑戦ながら1番人気に支持されたラヴズオンリーユーは、出遅れた過去3戦よりいいスタートを切ったものの無理に好位付けせず、先頭から10馬身ほど離れた9番手を追走していた。

一方、前は最内枠から素晴らしいスタートを決めたジョディーがレースを引っ張り、3番人気のコントラチェックが2番手を追走。エールヴォアをはさんだ好位4番手に、2番人気のクロノジェネシスが位置していた。

1000m通過は59.1秒の平均ペースで、前から後ろまでは20馬身ほどの差。縦長の隊列となり、残り800mの標識を通過してからペースは上がったものの、隊列の順序に大きな変化はないまま直線勝負を迎えた。

直線に入るとすぐ、12番人気の伏兵カレンブーケドールが前3頭を交わし先頭に立った。クロノジェネシスとウィクトーリアが内から、シャドウディーヴァとダノンファンタジーが馬場の中央からこれを追うも4頭はいずれも決定打を欠き、カレンブーケドールの勝利が迫る中、強靱な末脚でこの攻防を打ち破ったのがラヴズオンリーユーだった。

坂上で一気に加速すると残り100mで4頭をまとめて交わし去り、ついにはカレンブーケドールも力でねじ伏せると、M.デムーロ騎手が右手でガッツポーズを作りながら先頭ゴールイン。早目スパートから大いに見せ場を作ったカレンブーケドールがクビ差2着となり、クロノジェネシスが激戦の3着争いを制した。

勝ち時計の2分22秒8は、ジェンティルドンナのタイムを0秒8も上回るレースレコード。無敗のオークス制覇は史上5頭目で、鞍上のM.デムーロ騎手にとってはクラシック完全制覇と、記録ずくめの勝利となった。

その後、秋華賞を目指す過程で右前の蹄を痛めたラヴズオンリーユーは、復帰戦のエリザベス女王杯で3着に敗れて初黒星を喫し、しばらく勝利からも遠ざかってしまった。

それでも5歳シーズンに復活を果たし、京都記念でオークス以来1年9ヶ月ぶりの勝利をあげると、ドバイシーマクラシック3着から臨んだ香港のクイーンエリザベス2世Cを勝利。2つ目のビッグタイトルを獲得した。さらに、札幌記念2着から臨んだ米国のブリーダーズCフィリー&メアターフも勝利すると香港Cも連勝。1年で海外GⅠを3勝するという日本調教馬初の快挙を成し遂げ、引退の花道を飾った。

■1994年 チョウカイキャロル

チョウカイキャロルは、史上5頭目のクラシック三冠馬ナリタブライアンと同じブライアンズタイムの初年度産駒。栗東・鶴留明雄厩舎からデビューし、キャリア12戦すべてで小島貞博騎手が手綱を取った。

体質が弱く初戦は1月と遅れたものの、阪神・ダート1800mの新馬戦に出走すると、なんと2着に2秒差をつける圧勝。衝撃の内容で初陣を飾った。

しかし、初めて芝のレースに出走したセントポーリア賞で、後の天皇賞馬オフサイドトラップの2着に惜敗すると、格上挑戦ながら1番人気に支持されたGⅢフラワーCも3着に敗戦。賞金を加算することができず、桜花賞出走の道は断たれてしまった。

それでも、桜花賞の2時間前におこなわれた忘れな草賞で、中間点過ぎから抑えきれない手応えで上昇を開始したチョウカイキャロルは、3、4コーナー中間で早くも先頭に立つと、直線は少し追われただけで4馬身差の圧勝。そこから満を持して臨んだのが、早くも三度目の関東遠征となるオークスだった。

このレースで、桜花賞馬オグリローマンに次ぐ2番人気に支持されたチョウカイキャロルは、五分のスタートを切ると、3頭による激しい先行争いから8馬身ほど離れた5番手につけた。

1000m通過は60.4秒で、当時の馬場としてはかなり速く、前から後ろまでは25馬身近い差があった。そんな展開にもかかわらず、3コーナー過ぎでメモリージャスパーが早くも進出を開始すると、チョウカイキャロルも連れ立つようにスパート。2頭で先行3頭を飲み込み、直線勝負を迎えた。

直線に入っても2頭の激しい争いはしばらく続き、その後、坂の途中でチョウカイキャロルが1馬身のリードを取った。メモリージャスパーが懸命に食い下がる中、マイネマジックとツルマルガール、さらには大外から併せ馬で伸びてきたゴールデンジャックとアグネスパレードがこの争いに加わり、最後は6頭が馬場をいっぱいに使って叩き合いを繰り広げるも、5頭の追撃を凌いだチョウカイキャロルが1着でゴールイン。激戦の2着争いを制したゴールデンジャックとの差は3/4馬身でも、ハイペースを早目先頭から押し切った内容は着差以上に強く、出走できなかった桜花賞の悔しさを晴らすGⅠ初制覇となった。

この後、夏場を休養に充てたチョウカイキャロルは、秋初戦のサファイアS2着から臨んだエリザベス女王杯(当時は牝馬三冠競走の最終戦)で、世代最強牝馬とされた重賞5連勝中のヒシアマゾンと激突。1番人気こそ同馬に譲ったものの、レースは直線、アグネスパレードを交えた3頭で素晴らしい叩き合いを繰り広げ、勝ったヒシアマゾンにはわずか3センチ及ばなかったものの2着を確保した。

そして、古馬の牡馬と初めて対戦した有馬記念と京都記念はそれぞれ8、4着に終わるも、中京記念で2つ目のタイトルを獲得すると、当時は芝1800mでおこなわれていた京阪杯でも2着に好走。続く宝塚記念12着後にのどの病気が判明して休養に入ったが、復帰は叶わず生まれ故郷の谷川牧場で繁殖入りし、19年9月に28歳でこの世を去った。

■2015年 ミッキークイーン

ラヴズオンリーユーと同じディープインパクト産駒のミッキークイーンは、2013年のセレクトセール1歳市場において野田みづきオーナーに1億500万円(税込)で落札され、栗東・池江泰寿厩舎からデビューを果たした。

キャリア全17戦中16戦で浜中俊騎手が手綱を取り(4歳時の阪神牝馬Sのみ、浜中騎手が落馬負傷で休養中のため騎乗できなかった)、初戦は2着に惜敗するも、2週間後の未勝利戦を快勝。2戦1勝で2歳シーズンを終えた。

ところが、馬体を20キロ減らしたクイーンCは、スタートで立ち後れて最後方からの競馬を余儀なくされ、直線はよく追い込んだもののキャットコインにクビ差及ばず2着。さらに、桜花賞では3頭中2頭が当選する抽選に外れてしまい、やむなく目標を忘れな草賞へ切り替えることとなった。

それでも、この負けられないレースで、中団やや後方に待機したミッキークイーンは直線、クイーンCでも接戦を演じたロカとの差し比べを制し快勝。待望の2勝目をあげ、そこから中5週の間隔で臨んだのが再度の東上となるオークスだった。

この年のオークスは、最終的に単勝オッズ10倍未満の馬が5頭もいる混戦だった。その中で1番人気となったのは、桜花賞でも1番人気に支持されながらスローペースに泣き9着に敗れたルージュバックで、桜花賞馬のレッツゴードンキとミッキークイーンが6倍台で続いた。

レースは、内からシングウィズジョイが行こうとするところ、外から押してノットフォーマルが先手を奪った。レッツゴードンキとルージュバックが好位5番手につけ、ミッキークイーンはこの日も中団やや後ろを追走。人気2頭とミッキークイーンの間には、桜花賞で2、3着に好走したクルミナルとコンテッサトゥーレも位置していた。

1000m通過は61.3秒と遅く、逃げるノットフォーマルと後方2頭以外は12、3馬身ほどに固まっていた。そして、残り1000mからペースが上がり、迎えた直線。2番手から抜け出したローデッドにルージュバックとクルミナルが襲いかかって先頭を奪い、外からミッキークイーンもこの争いに加わって、最後は3頭による壮絶な叩き合いとなった。

展開に泣き、本来の実力を出せずに終わった桜花賞の借りを返したいルージュバック。

桜花賞惜敗の悔しさを晴らしたいクルミナル。

その桜花賞に出走すら叶わなかったミッキークイーン。

三者三様の思いがぶつかる攻防は、可憐な3歳牝馬とは思えないほど激しいもので、この争いから最後に抜け出したのはミッキークイーンだった。

素晴らしい瞬発力を繰り出して外からねじ伏せるように2頭を差し切ると、最後は食い下がるルージュバックに3/4馬身差をつけ先頭ゴールイン。桜花賞除外の鬱憤を晴らした末に掴み取った、見事な樫の女王戴冠だった。

その後、休養に入ったミッキークイーンは、ローズS2着から臨んだ秋華賞を快勝。牝馬二冠を達成し、続くジャパンCこそ8着に敗れたものの、JRA賞最優秀3歳牝馬のタイトルを獲得した。

そして、古馬になってからはGI勝利こそなかったものの、4歳時に出走したヴィクトリアマイルが2着。エリザベス女王杯でも2年連続3着となるなど、大舞台でも度々好走した。また、5歳時には阪神牝馬Sを勝利し、ヴィクトリアマイル7着から臨んだ宝塚記念で牡馬相手に3着と好走。その年の有馬記念11着を最後に引退し、生まれ故郷のノーザンファームで繁殖入りした。

繁殖となったミッキークイーンは2025年まで毎年産駒を送り出し、そのうちミッキーロケットとの間に産まれた2番仔ミッキーゴージャスが愛知杯を制覇。産駒初の重賞ウイナーとなった。

さらに、同じ一族からは、自身のめいにあたるブレイディヴェーグがエリザベス女王杯を制し、おいのエピファニーやショウヘイも重賞を制覇。近年、非常に勢いがあるファミリーで牝馬も多く産まれており、一族はこの先もどんどんと枝葉を伸ばしていくだろう。

写真:H.Kaneko、かず

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