![[重賞回顧]57.5㎏を背負って一撃、雨の小倉に決まったフリッカージャブ~2026年・北九州記念~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/07/202607051-scaled.jpeg)
夏の小倉開催、サマースプリントシリーズ第2戦。芝1200mを舞台に行われるハンデ重賞、北九州記念。
昨年は好天のもとで行われ、ヤマニンアルリフラ、ヨシノイースター、アブキールベイが上位を占めた。その上位3頭が、今年も再びこの舞台に顔をそろえた。
1年を経て、同じ小倉芝1200mでどのような走りを見せるのか。リピーターレースとしての側面も注目される一戦となった。
一方で、今年の北九州記念は新たな挑戦者も個性豊かだ。オープン競走の鞍馬Sをレコードで制したフリッカージャブ。昨年のアブキールベイと同じく、葵Sからの続戦ローテで挑む3歳牝馬デアヴェローチェ。昨年秋のオープン入り後、今年は2走連続2着と堅実な走りを続けるアンクルクロス。
さらに、2勝クラスを勝ったばかりの格上挑戦で臨むジェニファーもいる。小倉芝では1勝、2着3回のコース巧者で、田山旺佑騎手が50㎏で騎乗。重賞好走馬相手でも見逃せない存在だ。
フルゲートには届かない13頭立て。それでも、昨年の上位馬に上昇馬、3歳馬、軽ハンデの小倉巧者が加わり、短距離ハンデ重賞らしい難解さは十分にある。
そして今年は、天気も大きな鍵を握ることになった。昨年の北九州記念は夏らしい青空の下で行われたが、今年は春競馬の後半から雨が続き、小倉も土曜朝まで雨が残った。日曜も雨が降ったり止んだりを繰り返し、芝は重馬場での施行。軽いスピードだけで押し切れる舞台ではない。
馬場を味方につけるのは、昨年の上位馬か。勢いある挑戦者か。それとも、道悪をこなす伏兵か。
夏の小倉で行われるサマースプリントシリーズの一戦。雨脚が強まったり弱まったりする中、今年の北九州記念はゲートインを迎えた。
レース概況
飛び出しが良かったのはフリッカージャブ。対照的に、デアヴェローチェはスタートでよれたところへ前にアメリカンビキニが出たことで、後方からのスタートになった。
勢いよく飛び出したフリッカージャブと松山弘平騎手のコンビは、8枠12番からの発馬。内ラチに寄せず、内の様子をうかがいながら進めていく。内にいたサウンドモリアーナ、スタートから押してハナを目指すアメリカンビキニ、内枠のプロトポロスを見ながら、3番手で追いかける競馬を選んだ。
サウンドモリアーナから数馬身後ろには、重馬場巧者のオタルエバー、8歳馬ヨシノイースター、そして最軽量ハンデのジェニファーもこの一団に入り、ちょうど中団付近で前を追いかける。
最内枠を生かして、ランフォーヴァウは内ラチ沿いをロスなく追走。その他の馬は内ラチから4、5頭分ほど離れて馬群を形成し、フリッカージャブはその大外のまま進んでいく。ランフォーヴァウの後ろにはイツモニコニコ、アブキールベイ。後方2番手に昨年覇者ヤマニンアルリフラが控え、アンクルクロスはその内から、ランフォーヴァウと同様にインを狙う。デアヴェローチェは最後方から外差しを狙う形となった。
前半600mは33秒1。重馬場としては速い流れでレースは後半戦に入る。フリッカージャブはここで先頭に立ち、押し切りを狙った。逃げていたアメリカンビキニ、先行していたプロトポロスが苦しくなる一方、その外からジェニファー、サウンドモリアーナが位置を上げてくる。サウンドモリアーナの後ろには、ヨシノイースターの黒い馬体も見えた。
先頭に立ったフリッカージャブを、ジェニファーが懸命に追いかける。サウンドモリアーナも3番手で粘り込みを図り、その外からヨシノイースターが脚を伸ばして前を狙った。
残り200mを過ぎても、フリッカージャブの脚色は鈍らない。追いかけるジェニファー、さらに迫るヨシノイースター。外からイツモニコニコ、アブキールベイも末脚を伸ばしたが、その時にはすでにフリッカージャブがセーフティリードを築いていた。
フリッカージャブが後続各馬を寄せ付けず、重馬場の小倉芝1200mを押し切って完勝。2着にはクビ差でジェニファーが入り、大健闘を見せた。さらにクビ差の3着にはヨシノイースター。8歳馬ながら、小倉巧者、道悪巧者としての実力を改めて示している。
昨年の勝ち馬ヤマニンアルリフラは後方から差を詰め切れず9着。アブキールベイは最後に脚を伸ばし、後方組からは唯一となる掲示板入りの5着に入った。デアヴェローチェも最後方から川田将雅騎手の叱咤に応えて脚を伸ばしたが、大外から苦しくなった馬たちをかわして10着でレースを終えた。
各馬短評
1着 フリッカージャブ 松山弘平騎手
鞍馬Sのレコード勝ちに続き、今度は重馬場の小倉で重賞タイトルを手にした。
好スタートを決めたが、松山弘平騎手は無理にハナを奪わず、内の動きを見ながら3番手を選択。直線に向く前から勢いに乗せると、重い馬場を苦にすることなく先頭へ立ち、そのまま後続を寄せ付けなかった。
57.5㎏のハンデを背負いながら、重馬場の小倉芝1200mを正攻法で押し切った。
北九州記念が1800mで行われていた時代や別定戦だった時期も含め、1986年以降初めてとなる快挙であり、数字の上でも、見た目の上でも、強さが際立つ勝利だった。

父サートゥルナーリアにとっても、産駒のスプリント重賞初勝利。
さらに、西園翔太調教師にとっては調教師としての重賞初制覇となった。
雨の小倉で見せた完封劇は、馬、父、厩舎、それぞれにとって大きな意味を持つ一勝である。
2着 ジェニファー 田山旺佑騎手
2勝クラスを勝ったばかりの格上挑戦で、最軽量50kgのハンデを生かして2着に好走した。
田山旺佑騎手はフリッカージャブの真後ろを追走し、勝ち馬が動いたところを見ながら、こちらもスムーズに進出。重賞の舞台でも慌てず、馬の小倉適性をしっかり引き出した。
最後はオープンクラスで実績を積んできたフリッカージャブに押し切られ、後方からは歴戦の猛者ヨシノイースターにも迫られた。それでも2着を守り切ったことで本賞金1600万円を加算。
2勝クラス勝ち直後の立場から、一気にオープン馬に昇格した。
最軽量ハンデの恩恵はあったが、小倉芝で崩れないコース巧者ぶりはここでも確かだった。
重馬場のスプリント重賞で見せたこの走りは、今後へ向けて大きな財産になるだろう。
3着 ヨシノイースター 田辺裕信騎手
8歳となった今年も、得意の小倉で実力馬の意地を見せた。
近走は勝ち切るところまでは届いていなかったが、GⅡ、GⅢでも大きく崩れず、重賞戦線で存在感を保ってきた馬である。今回はメンバー最年長、トップハンデ58kg。それでも重馬場のハイペースをものともせず、最後までしぶとく脚を伸ばした。
田辺裕信騎手は先週のラジオNIKKEI賞を勝ったばかり。
夏は福島を主戦場にしながらも、この馬とのコンビを継続して小倉へ参戦したことにも納得できる。
道中は前を見ながら運び、直線では斤量差が8kgあるジェニファーに迫るところまで脚を使った。
トップハンデを背負ってこの走りができるなら、オープンクラスでまだまだ戦える。
昨年2着馬としての存在感、そして小倉巧者、道悪巧者としての確かさを改めて示した3着だった。
5着 アブキールベイ 西村淳也騎手
昨年は坂井瑠星騎手とのコンビで3着。当時420kgだった馬体は、1年を経て440kgまで成長していた。今回は後方からの競馬となり、前に行ったフリッカージャブ、ジェニファーがそのまま押し切る流れ。
展開を考えれば、後ろから差を詰めるには簡単ではないレースだった。
それでも、最後は大外を回って5着まで追い上げている。上がり3ハロンは、前にいたヨシノイースター、イツモニコニコと同じ34秒5。前が止まり切らない中で、後方組から唯一掲示板に入ったことは評価したい。
過去2走は愛知杯13着、鞍馬S12着と2桁着順が続いていたが、今回は復調気配を感じさせる内容だった。昨年の好走馬として、そして一回り成長した4歳牝馬として、再び短距離重賞で楽しみを持てる走りだった。
10着 デアヴェローチェ 川田将雅騎手
フィリーズレビュー4着で桜花賞の権利を逃した後、距離を1200mへ短縮して連勝。
葵Sを制し、重賞ウィナーとして古馬相手の一戦に臨んだ。
これまでは4番手~6番手あたりで追走する競馬を続けていただけに、今回はスタートで流れに乗り切れなかったことが惜しまれる。
川田騎手は3コーナーから促し、大外を回して進出を図った。最後も叱咤に応えて脚を使っており、上がり3ハロンはヨシノイースター、アブキールベイ、イツモニコニコと同じ34秒5。
着順ほど力を出せなかったわけではなく、重馬場の小倉1200mで序盤の位置取りが後ろになったことが響いた印象だ。
今回の敗戦により、次走も軽斤量で出走できる可能性はある。
3歳牝馬としてのスピードはすでに重賞で証明済み。条件がかみ合えば、夏の短距離路線でもう一度巻き返す場面があっていい。
レース総評
今年の北九州記念は昨年とは打って変わって、重馬場の小倉芝1200mで行われた一戦となった。
雨が降ったり止んだりする中、良馬場の高速決着とは違い、単なるスピードだけでは押し切れないコンディション。それでも勝ったフリッカージャブは、57.5㎏のハンデを背負いながら、正攻法の競馬で後続を寄せ付けなかった。昨年の上位馬3頭のうち、ヨシノイースターは3着、アブキールベイは5着、そしてヤマニンアルリフラは9着。ハンデ差や天候の違いによって、同じ小倉芝1200mでも一筋縄ではいかないレースであることを示している。
勝ったフリッカージャブの“試合展開の作り方”は見事だった。スタートを決め、無理にハナへ行くのではなく、前に馬を行かせて3番手から運ぶ。勝負どころでは外から自ら動き、直線では後続の追撃を封じ込める。鞍馬Sをレコードで勝ったスピードに加え、控える競馬、重馬場への対応、そして斤量を背負って押し切る底力まで示した内容だった。この後のGⅠ、スプリンターズSで、チャンピオンのレイに挑む姿が楽しみになる勝利である。
2着のジェニファーも、最軽量50kgを生かして大きな結果を残した。2勝クラスを勝ったばかりの格上挑戦で、フリッカージャブの真後ろから運び、最後まで食い下がっての2着。これで本賞金を加算し、一気にオープン馬となった。小倉巧者としての適性に加え、重賞の流れでも通用する力を示したことは、今後へ向けて大きな収穫だろう。
3着のヨシノイースターは、8歳、トップハンデ58㎏という条件で実力馬の意地を見せた。昨年2着に続いて今年も上位に入り、小倉巧者、道悪巧者としての確かさを改めて証明している。5着のアブキールベイも後方組から唯一掲示板に入り、復調を感じさせる走り。10着のデアヴェローチェはスタートで流れに乗り切れなかったが、最後は大外から脚を使っている。次走の巻き返しに期待したい。
昨年の上位馬が再び顔をそろえ、新しい挑戦者がそこへ加わった今年の北九州記念。
その中で最も強く見えたのは、やはりフリッカージャブだった。重馬場でも、斤量を背負っても、逃げ一辺倒ではなくても勝ち切れる。スプリント路線の新しい主役候補として、堂々と名乗りを上げた一戦だった。
そして、この勝利は厩舎にとっても大きな意味を持つ。今年2月、シルクロードSではフィオライアが西園正都元調教師に、引退前最後の重賞タイトルを届けた。水色地に赤い星のメンコが、京都の直線を先頭で駆け抜けた日から約半年。今度は西園正都元調教師の長男、西園翔太調教師が、黒地に赤い星のメンコを着けたフリッカージャブで、自身初の重賞タイトルを手にした。
父の最後から、息子の最初へ。雨の小倉で鮮やかに決まったフリッカージャブの押し切りは、サマースプリントシリーズの行方だけでなく、秋の大舞台、そして“西園翔太厩舎”の新しい物語が広がる勝利となった。
写真:@demekeiba113
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