![[今週の注目]「25頭目の二冠馬」の挑戦 - ロブチェンが挑む三冠の瞬間](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/10/0O9A3084-scaled.jpg)
秋華賞では、モンローウォークが評判どおりの強さを発揮。無傷の5連勝でGⅠ馬となった。そして今週、いよいよ菊花賞を迎える。
今週最大の焦点は、2020年のコントレイル以来となる三冠制覇をロブチェンが成し遂げられるかどうかだ。これまで皐月賞と日本ダービーを制した馬は、ロブチェンを除いて24頭。そのうち菊花賞に出走できたのは16頭で、半数の8頭が三冠馬となった。2000年以降の二冠馬は6頭。その中でネオユニヴァースが3着(2003年)、メイショウサムソンが4着(2006年)。ドゥラメンテは故障により出走できなかった(2015年)。一方、ディープインパクト、オルフェーヴル、コントレイルは三冠を達成している。過去のデータでは、菊花賞に出走した二冠馬の勝率は50%。ロブチェンが歴史に名を刻めるか、「25頭目の二冠馬」の挑戦に注目したい。

■三冠に挑むロブチェンのライバルたち
三冠達成には、相手関係も重要になる。
古くは1963年の二冠馬メイズイ。三冠確実といわれ、単勝1.2倍の圧倒的な支持を集めたが、結果は6着。皐月賞、日本ダービーでともに2着だったグレートヨルカが雪辱を果たし、三冠を阻んだ。1992年のミホノブルボンも、日本ダービー2着のライスシャワーに徹底的にマークされ、ゴール手前で差し切られた。2000年代では、ネオユニヴァースが日本ダービー3着から秋に調子を上げたザッツザプレンティに、メイショウサムソンが夏の上がり馬ソングオブウインドに敗れている。
二冠馬を脅かす存在は、大きく二つに分けられる。春からしのぎを削ってきたライバルと、素質を秘めながら春は無名で、夏を越して急成長した上がり馬だ。
ロブチェンの場合はどうか。皐月賞で接戦を演じたリアライズシリウスは天皇賞(秋)へ向かい、日本ダービー2着のパントルナイーフは故障で休養中。3着のバステールと4着のゴーイントゥスカイは、秋初戦のセントライト記念でともに掲示板を外した。春の実績馬には、ロブチェンを脅かすだけの勢いがまだ見えてこない。

そうなると、注目は春にロブチェンとの対戦がなかった新興勢力だ。ダノンベルーガの半弟ダノンヒストリー、セントライト記念を制したジャスティンシカゴ、5月の未勝利戦から3連勝中のマジョレルブルー。いずれも春のクラシック戦線には縁がなかったものの、夏を越して力をつけてきた「夏の上がり馬」たちである。
立ちはだかる新たなライバルを退け、ロブチェンは史上9頭目の三冠馬として競馬史に名を刻めるか。その走りに注目したい。
■三冠達成がもたらす「もうひとつの広がり」
ロブチェンの三冠挑戦には、もうひとつ大きな意味がある。菊花賞を制すれば、鞍上の松山弘平騎手と管理する杉山晴紀調教師は、ともに史上初となる牡馬・牝馬三冠制覇を成し遂げることになる。
松山騎手がデアリングタクトと牝馬三冠を達成したのは、コロナ禍にあった2020年。春の桜花賞とオークスは無観客で行われ、秋華賞も見守ったのは抽選をくぐり抜けた1000人足らずの観客だった。その異例の舞台で、松山騎手はデアリングタクトを牝馬三冠へと導いた。
今度はロブチェンとともに、牡馬三冠へ挑む。達成すれば、史上初の「牡馬・牝馬三冠ジョッキー」の誕生だ。武豊騎手でも、C.ルメール騎手でもなく、着実に腕を上げてきた松山騎手が最初の達成者となる——そう考えると、どこかうれしくなる響きである。

一方、杉山調教師にも新たな記録がかかる。菊花賞を制すれば、史上5人目となる5大クラシック完全制覇(皐月賞、日本ダービー、菊花賞、桜花賞、オークスの5レース)を達成する。過去の達成者は、尾形藤吉、田中和一郎、藤本冨良、武田文吾の4調教師。いずれも昭和の競馬史に名を刻んだ名伯楽である。平成には現れなかった5人目の達成者が、令和の時代に誕生するかもしれない。それだけでも、ロブチェンの挑戦が持つ意味は大きい。
ちなみに、5大クラシック完全制覇を成し遂げた騎手は過去11名。松山騎手が菊花賞を制すれば12人目となり、レジェンド武豊騎手に肩を並べる。さらに松山騎手は今年、スターアニスで桜花賞を制しており、菊花賞を勝てば同一年で5大クラシックの4タイトル制覇となる。この記録は、1975年にカブラヤオーとテスコガビーで春のクラシック4タイトルを制した菅原泰夫騎手以来、史上2人目の快挙である。

三冠制覇を目指すロブチェンの血統にも、菊花賞の物語が息づく。父ワールドプレミアは2019年の菊花賞馬であり、祖父ディープインパクトも2005年の覇者。ロブチェンが勝てば、菊花賞史上初となる「父子三代制覇」が成立する。
ワールドプレミアは種牡馬入り後、種付頭数が年々減少し、4年目の2025年は24頭まで落ち込んでいた。しかし今年、ロブチェンの活躍によって状況は一変。種付頭数は120頭を超え、再び注目を集める存在となった。

■三冠、父子三代、そして新時代へ
ロブチェンが菊花賞を制し三冠馬となれば、数々の記録が生まれ、競馬史に新たな章が刻まれる。その瞬間は、数字や肩書きだけでなく、ひとつの時代の到来でもある。
春の陽光の中で皐月賞を駆け抜け、初夏の風を切って日本ダービーを制し、そして今、深まりゆく秋の空の下で最後の一冠へ向かう。季節をまたぎながら積み重ねてきた蹄跡が、ひとつの頂へと収束していく。その頂に手を伸ばすのは、ロブチェンだけではない。松山騎手、杉山調教師、そして血統に刻まれた父子三代の夢——多くの想いが、ひとつのゴールへ向かって重なり合う。
週末の京都には、きっと緊張感のある空気が流れることだろう。そんな中、ロブチェンが歴史を動かす瞬間を、私たちはまもなく目撃できるかもしれない。
今週も楽しみな週末がやってくる——。
Photo by I.Natsume
