今回はホッカイドウ競馬と岩手競馬における3歳クラシック路線についてご紹介したいと思います。
ホッカイドウ競馬と岩手競馬に共通していることがあります。
それは「冬期のシーズンオフがある」ということです。
気候的にどうしても冬場の競馬開催が難しいという事情から、クラシックへ挑む道のりというのは他地区と少し変わっていると言えるかもしれません。
ホッカイドウ競馬
ホッカイドウ競馬は現在でこそ門別単独開催となっていますが、過去には札幌、旭川、帯広、岩見沢と様々な競馬場で開催されており、開催時期や競馬場、距離など、三冠レースの条件は頻繁に変更がされてきました。
ホッカイドウ競馬の三冠レースは北斗盃 (1977-)、北海優駿(1973-) 、王冠賞 (1980-)の3 レースですが、ここ最近で言えば北斗盃は短距離で行われることが多く、2010年から2014年までは1200mで行われ、北海優駿の2000m、王冠賞の2600mと条件的に大きな違いがあり、この条件で三冠を達成するのはかなりの難関であったと言えます。
その中で三冠を達成したのが 2010年のクラキンコでした。クラキンコは牝馬で初の北海道三冠馬となりました。さらに驚くべきは父クラキングオー、母クラシャトル共に北海優駿を制しているということ。まさしく「親子制覇」と言えるでしょう。
ホッカイドウ競馬の三冠馬はクラキンコ以前に3頭います。トヨクラダイオー (1981年) 、モミジイレブン (1999年) 、ミヤマエンデバー (2001年) がそれぞれ三冠の栄誉を手にしています。ホッカイドウ競馬の三冠競走で記憶に新しいところで言えば 2015年のオヤコダカをあげる人も多いのではないでしょうか。
現在ではホッカイドウ競馬のトップホースとも言える同馬は一冠目の北斗盃を圧倒的な強さで勝利し、北海優駿でも圧倒的1番人気に推されて二冠は間違いないと思われました。
しかし、結果はスタートでの落馬競走中止という信じられない結末でした。
オヤコダカは三冠目の王冠賞をあっさり勝利したので、幻の三冠馬とも言えるかもしれません。2015年門別競馬場に内回りコースが新設されたことにより、三冠の距離が変更され、北斗盃が1600m、北海優駿が2000m、王冠賞が1800mと、マイルから中距離で三冠を争う形になりました。
それではホッカイドウ競馬の三冠レースを見てみます。
ホッカイドウ競馬クラシック路線
※開催日程は2016年度を参考にしています。
一冠目の北斗盃は2008年からホッカイドウ競馬の開幕初日に組まれているというのが特徴ではないでしょうか。つまり、トライアルレースが存在しません。
前年のシーズン終了 (11月上旬) からここへ向けて英気を養ってきた馬、またシーズン終了後門別所属のまま他地区へ遠征してきた馬、そして他地区へ転入して実戦を使いながらシーズン開幕に合わせてホッカイドウ競馬に再転入してきた馬、更にはJRAや他地区から転入してきた馬と、多様な臨戦過程を経てきた馬たちがぶつかるレースになります。
なかなか力の比較は難しいですが、それこそが楽しみの一つではないかと思います。過去の勝ち馬にはクラキンコやオヤコダカ、そしてJRAにも転入したシーギリヤガール、ロクイチスマイルなどがいます。
そして迎える二冠目・北海優駿ですが、 2007年にダービーウィークに組み込まれ、2009年からは門別2000mでの開催となっています。
優先出走権は北斗盃1.2着馬、そして北海優駿トライアルの1着馬に与えられています。北斗盃から直行してくる馬、さらには間に北海優駿トライアルを挟んでくる馬、条件戦から挑んでくる馬が主なメンバーとなります。牝馬の場合、古馬との戦いとなりますが、北斗盃のあと、間にヒダカソウカップ (H3 1600 m)を使うということもできます。
北斗盃が1200mで行われていた時期と重なるということもあるかもしれませんが、北海優駿はトライアル勝ち馬が2012年から2015 年まで4年連続で優勝しており、北海優駿トライアルにも注目すべきと言えるでしょう。
北海優駿1着馬はジャパンダートダービーにおいて、同一地区内の他馬より優先して選定馬とされます。主な勝ち馬には前出のクラキングオー、クラシャトル、クラキンコの他、ササノコバン、ニシノファイター、ミータロー、さらには JRAGIでも活躍したコスモバルクなどがいます。
三冠最終戦となる王冠賞ですが、北海優駿から約 2か月開くということもあり、直行してくるというケースはあまりなく、日程に余裕があればジャパンダートダービーを使ってくる馬や、他地区の重賞を使う馬、あるいは JRAへ遠征する馬、門別であれば条件戦、古馬との重賞星雲賞 (H3 1600 m)を使うケースもあり、北海優駿からの期間で力をつけた馬と実績馬との対決ともなりますが、基本的には上位人気、春の実績馬が上位を形成する傾向が見られます。主な勝ち馬にはクラキングオー、クラキンコ、フーガ、ボク、ニシノファイター、オヤコダカなどがいます。
なお、ホッカイドウ競馬の三冠レースは全国交流競走のため、他地区の馬でも出走が可能です。
ホッカイドウ競馬 3歳クラシックの注目ポイント
- 北斗盃での休み明け馬と実践を使ってきた転入馬の対決
- 北海優駿は北海優駿トライアル組にも注目
岩手競馬
岩手競馬は盛岡、水沢とタイプの違う競馬場を有し、盛岡競馬場には芝コースもあるので、芝・ダート、距離のバリエーションも豊富でクラシックを目指す馬たちも様々なレース選択が可能な地区と言っていいのではないかと思います。
また、3歳の牝馬限定重賞も充実しており、牝馬路線でも白熱したレースが見られます。
なお、 2016年には重賞格付けが導入され、より体系がわかりやすくなったのではないでしょうか。岩手競馬の 3歳三冠レースは2016年現在、岩手ダービーダイヤモンドカップ (1981-)、不来方賞(1969-) 、ダービーグランプリ (1986-)の3レースですが、これまで競走体系の変更やダービーグランプリの休止などもあり、三冠レースについては一時期阿久利黒賞が組み込まれるなど、日程条件については何度か変更がありました。
三冠が確立されたのは2007年からとなりますが、現在の3レースでの三冠が確立されたのは 2010年にかつてダートグレード競走として開催されていたダービーグランプリを地方全国交流競走として復活させてからとなります。
岩手競馬の三冠馬はセイントセーリング (2007年) 、2011年震災の影響で東京で行われた南部杯で悲運の死を遂げたロックハンドスター (2010年) の2頭です。
ダービーグランプリが全国交流となり 2013年からは3 年連続で南関東勢が勝利しています。南関有力 3歳馬の秋後半の一つの目標となったことで、南関から強豪が遠征してくるダービーグランプリが岩手勢にとって壁となりつつあります。それでは岩手のクラシック路線を見てみたいと思います。
三冠路線をメインとして、ローテーション的に繋がらないと思われる重賞は省略します。
岩手競馬クラシック路線
※開催日程は2016年度を参考にしています。
岩手競馬は 1月上旬からシーズンオフに入り、 3月下旬の特別開催を経て 4月上旬に開幕を迎えますが、開幕を迎える3歳馬にとってまず目指すべきレースがスプリングカップであり、牝馬の場合はあやめ賞となります。
ホッカイドウ競馬のように他地区へ転入する馬も見られますが、オフ期間も短いので、比較的岩手所属のまま休み明けで開幕を迎えるケースが多くなっています。その後牝馬の場合はグランダムジャパンに組み込まれている留守杯日高賞、牡馬の場合はやまびこ賞へ向かいます。
やまびこ賞は岩手ダービーダイヤモンドカップのトライアル競走とされており、上位3着までにダイヤモンドカップへの優先出走権が与えられます。
岩手競馬春シーズンの最大目標となる一冠目の岩手ダービーですが、とにかく1番人気が強いレースとなっています。過去 10年で1 番人気が7勝2着2回3着1回と、圧倒的成績を残しており、毎年のように確固たる中心馬が存在するのが特徴ではないでしょうか。そしてその中心馬が期待を裏切らずダービー馬になる、というケースが非常に目立ちます。
また3着以内を見ても上位人気で占められることが多くなっています。なお、出走頭数に差があるとはいえ牝馬の戴冠は過去10年見られず、牝馬には厳しい戦いとなっています。
人気馬が強いということは王道であるスプリングカップ、やまびこ賞での上位馬が強いということですので、前哨戦を使ってくる有力馬には注目です。
ダイヤモンドカップの1着馬はジャパンダートダービーにおいて、同一地区内の他馬より優先して選定馬とされます。過去の主な勝ち馬にはスイフトセイダイ、モリユウプリンス、JRAのフェブラリーSを勝つなど大活躍し、先日惜しくもこの世を去ったメイセイオペラ、バンケーティング、ロックハンドスター、現在も活躍中のライズラインなどがいます。
ダイヤモンドカップには「岩手ダービー」の名がついていますが、二冠目となる不来方賞は岩手競馬のダービーとして位置づけられる歴史ある競走とされています。秋に行われるのでダイヤモンドカップからは間隔が開いてしまいますので、その間にはジャパンダートダービー、黒潮盃への遠征や、オパールカップなどの芝重賞への参戦、古馬との戦い、牝馬の場合はひまわり賞への参戦などが見られます。
不来方賞は一時期全国交流競走とされていましたが、ダービーグランプリの全国交流競走としての復活により、ダイヤモンドカップと同じく岩手所属馬限定競走となり、ダービーグランプリのステップレースとして位置づけられました。上位2着までにはダービーグランプリの優先出走権が与えられます。
不来方賞も1番人気が強く、2015年までの過去10年で1番人気は7勝しています。主な勝ち馬には前出のスイフトセイダイ、モリユウプリンス、メイセイオペラ、バンケーティングロックハンドスターの他、オウシュウクラウンやカミノヌヴォー、ロッソコルサなどがいます。
岩手三冠最終戦となるダービーグランプリは2010年に地方全国交流として復活して以降、岩手三冠の最終戦としてだけでなく、各地の強豪が集い、シーズン終盤の地方3歳チャンピオンを決める一戦ともいえるレースとなりました。2010年から2015年までを見てみると、岩手所属馬が優勝したのは最初の3年だけとなっており、その3頭ロックハンドスター、カミノヌヴォー、ロッソコルサは全て不来方賞を制していました。その3頭以外では、2015年の3着レッドサヴァージを除けば、3着以内全てが他地区所属馬で占められており、不来方賞勝ち馬以外の岩手勢には厳しい戦いとなっています。
1番人気は1勝のみと、力の比較もさることながら上位は混戦模様のレースと言えます。
ダートグレード競走時代も含めた主な勝ち馬にはスイフトセイダイ、トミシノポルンガ、イシノサンデー、タイキヘラクレス、レギュラーメンバー、ゴールドアリュール、ユートピア、パーソナルラッシュ、カネヒキリ、ロックハンドスターなど錚々たる名前が見られます。
岩手競馬 3歳クラシックの注目ポイント
- ダービーは前哨戦を勝った人気馬を素直に信頼
- 三冠路線では牡馬が優勢
- ダービーグランプリ好走には不来方賞勝ちが条件
この3点を挙げておきたいと思います。
写真:Y.Noda