突然のピリオド

久しぶりの更新になります。小倉競馬が始まっていますが出張に行かしてもらえず栗東に残り調教に専念していますので競馬の騎乗がないのです。ですからなかなか更新が出来なくて・・・ どうもすみません。それに騎乗出来ませんからストレスも溜まります・・・

──tajihiro HP「diary」2006年8月24日

「久しぶりに更新したと思ったら、やっぱりグチかぁ。田島、全然乗ってないもんなぁ。」

1か月半ぶりに更新された田島騎手の「diary」。そこには騎手なのにレースに騎乗できない葛藤が記されていた。

「ま、仕方ない。秋はディープもフランスだし、ナリタセンチュリーとGⅠ目指して頑張ってくれよ。田島の方が怪我したらシャレにならんからねぇ……」などと私はPCの画面に向かって勝手な妄想を独り言ちていた。

全く油断していた。

(中略) 

秋のG1を期待していたナリタセンチュリーは、放馬先でエビ(深屈腱炎)を発症してしまいました。その話を聞いたのが盆あたりで私自身現地にいませんでしたので詳しい状態は分からないのですが、聞いた話ではかなり重度のエビらしくて復帰するのは難しいらしいです。まだ正式な発表はしていませんが重度のエビですし年齢的に見たら・・・

ただ宝塚記念を使ってすぐに放牧にだし、その時の放牧診断では全く異常がなく安心していたのですが・・・ 1ヶ月ちょっとで何があったのかは分からなく不思議です。今まで脚元には全く不安は無くて前の長期休養も腰の状態ですから・・・ 不完全燃焼な終わり方ですから残念でたまりません・・・

最後にナリタセンチュリーを応援してくれたファンの方々、今までどうもありがとうございました。もし種牡馬になるようでしたら生まれてくる二世を応援してください。

──tajihiro HP「diary」2006年8月24日

声を失った。

二人三脚に、突然のピリオドが打たれた。

行間から、そして何度も打鍵された「・・・」から、田島騎手の無念さが滲み出てくるようだった。

何度も読み返した。

そして最後の一文が、「生まれてくる二世に乗って今度こそGⅠを勝ち取りたいです!」ではなく、「生まれてくる二世を応援してください」であることに気づいた。

そこに、田島裕和騎手「らしさ」を感じて、また私は、哀しくなった。

ナリタセンチュリーは種牡馬となったが、中央競馬でデビューした産駒はわずか4頭。その内3頭が藤沢則雄厩舎所属となったが、田島裕和騎手がレースで騎乗することは一度もなかった。

産駒の初出走は2011年7月16日。

その前年、2010年12月20日付で、田島裕和騎手はジョッキーを引退していた。

ナリタセンチュリーは種牡馬を引退して乗馬に転向。その後2020年春には国内唯一の馬具メーカー、北海道砂川市にあるソメスサドル本社工場の庭でオルフェーヴル・ドリームジャーニーの弟、アッシュゴールドと並んで草を食む姿が同社ウェブサイトにアップされたが、今年(2021年)になって、その動向は発信されていない。


ミッキーアイル×ナリタモード

先ほど元気な女の子を出産。これで今年のお産は終了です。まずは無事に全頭産まれてきてくれた事に感謝です。 皆さんにもたくさんの励ましをいただき本当にありがとうございました。

ナリタモードさんはナリタセンチュリーの娘。たぶん日本で唯一の繁殖だと思います。

産まれたのが女の子なんでセンチュリーの血が繋がって行くことになります。良かった!

引用元:https://twitter.com/0909masuko/status/1396704224759599106

先月(2021年5月)、ふいにこんなツイートが私のタイムラインに流れてきた。先日引退したゴールドシップ産駒、ブラックホールの生産牧場の方が呟いてくださっていた。

ナリタモードはナリタセンチュリーとナリタルナパーク(98年秋華賞2着、99年中山牝馬S勝ち)との間に生まれた牝馬で、ナリタセンチュリー産駒唯一の中央勝ち星(4勝)を上げていた。

「センチュリーの血が繋がって行く」。実際にそうなるには、生まれてきたこの牝馬が順調に育ち、実戦を戦い抜き、無事に繁殖牝馬となり、そして次世代を生む、と、私のような一ファンには想像もつかない、乗り越えねばならない数多くの壁が待ち構えているんだろう。

それでも、このたった一本、蜘蛛の糸のごとく残った血筋から牝系が枝葉を広げ、いつまでも「ナリタセンチュリー」の名前が血統表に残り続ける逆転劇を楽しみにし続けるのも、一ファンとしての競馬の楽しみ方の一つであると、私は思う。

写真:富田直将

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