イクイノックスの躍動、若手騎手の台頭、今村聖奈騎手の飛躍…。2022年中央競馬トピックスを振り返る。

2022年の中央競馬も28日で終了し、2022年の全ての日程が終了しました。
そこで今回は2022年の中央競馬で起こった主な出来事を振り返ってみたいと思います。様々なカテゴリーに分類した競馬ニュース、トピックスを挙げて1年の締めくくりとしていきましょう。この記事で『ああ、そんなこともあったなあ』と感じていただければ幸いです。

2022年に活躍した名馬たち

まずはレースそのものについて振り返りましょう。
2022年の中央競馬は、アーモンドアイ・コントレイルが去って、エフフォーリアの時代が到来するかと思われていましたが、天皇賞春、宝塚記念ではタイトルホルダーが連勝。先行して押し切るスタイルはどこか懐かしい印象も受けるようなスタミナ型の先行押し切りタイプでしたが、その強さは本物でした。秋には凱旋門賞にも出走。結果は残念でしたが、積極的に逃げて存在感を示しました。

古馬牝馬ではソダシ、メイケイエールの白毛一族がその外見と走りで話題になりました。ソダシはヴィクトリアマイルで勝利。その白毛馬という珍しい毛色ながらも強さを見せて、スター性を改めて示しました。メイケイエールはG1こそ勝利できませんでしたが短距離戦線ではトップクラスの力を示しました。写真集も発売されるなど、1年を通じてその人気ぶりがうかがえる1頭でした。

3歳馬ではイクイノックスの活躍が特に目立ちました。2022年は皐月賞から始動し、春は皐月賞・ダービーと2着でしたが、秋は天皇賞秋・有馬記念と連勝し、一気に現役最強クラスへと躍り出ました。2022年の競馬界の中心はイクイノックスだったと言っても過言ではないでしょう。キャリア僅か6戦で有馬記念を勝った馬はおらず、競馬界の超エリートというべき同馬。今後のレース選択とその走りに、競馬ファンから注目が集まります。

3歳牝馬路線はスターズオンアースが春に2冠を達成。やや混戦ムードだった桜花賞前の雰囲気の中で力を示しました。秋の秋華賞は残念ながら3着でしたが、いまだ馬券圏外がないという同馬。こちらも来年が楽しみです。

海外に渡った日本馬たち

2022年は、中央競馬が海外との関係がより深くなった1年でもありました。

一番大きな話題になったのが凱旋門賞です。過去最多の4頭が凱旋門賞に出走。4頭がそれぞれ違うタイプ・臨戦過程だったこともあり欧州でも注目になったそうですが、残念ながら結果は出ませんでした。直前の雨と馬場に苦しまされましたが、レース後に矢作調教師が『馬場が悪いのは分かっていた事。そんなことは言い訳にならない』と話していたのが印象的でした。いつの日か、日本調教馬が凱旋門賞を勝てる日が来ることを信じて応援したいですね。

海外との関係性という点では、今年のジャパンカップは4頭の参戦がありました。その招待に一役買ったのが東京競馬場の内馬場に新設された国際厩舎です。これにより、空港から直接東京競馬場に入ることができ、JCまで環境を変えることなく調整できるようになったことで、海外馬の負担軽減につながりました。22年の凱旋門賞馬アルピ二スタこそ残念ながら直前で回避してしまいましたが、かなり豪華なメンバーが揃ったと言えるでしょう。来年以降のJCでも、欧州の大物が参戦することを期待したいですね。

さらに、外国人騎手の来日、活躍も目立った一年でした。R.ムーア騎手や、D.レーン騎手、C.デムーロ騎手などに加えて今年はC.ホー騎手、T.マーカンド騎手、H.ドイル騎手、D.イーガン騎手、B.ムルザバエフ騎手が初来日。中でもムルザバエフ騎手はホープフルSを、C.ホー騎手はレパードSを勝って存在感を示しました。来年も海外からどんな騎手が来日するのか楽しみです。

お別れについて

明るいニュースばかりであれば良いのですが、2022年の競馬界でも、様々な別れがありました。
中でも大きな話題になったのがエリザベス女王の死去でしょう。『競馬界最大のパトロン』とも呼ばれたエリザベス女王はとにかく競馬が大好きで、ロイヤルアスコットの観戦はもちろん、自ら競争馬を所持していた事でも有名でした。所有馬の子孫にはディープインパクトにもつながる馬がいたので日本競馬とは非常に大きな関係があったと言えます。日本や香港でその名を冠したレースがあるように世界的に愛された女王の別れの年になってしまいました。ご冥福をお祈りします。

そして、タイキシャトルとの別れもありました。『日本の競馬史上における最強マイラーは?』という議論が出ると、必ず名前が挙がるほどの名馬でした。競走成績だけではなく、種牡馬としてもメイショウボーラーを輩出するなど、種牡馬引退後も話題を提供した馬でした。鬣を切られてしまった事件があったのは2019年。その後はメイショウドトウと仲の良い姿を見てほっこりする方も多かったことでしょう。晩年までファンの注目を集めていた馬と言っていいのではないでしょうか。

死別ではありませんが、お別れという意味では競馬関係者の方々の引退も注目されました。

2月の調教師の引退では7名の調教師が引退することになりましたが、中でも藤沢和雄調教師の引退は大きな話題になりました。JRA通算1570勝、重賞126勝、G1を34勝という成績はJRAの歴史上に残る大記録ですし、管理したタイキシャトル、シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ、レイデオロ、グランアレグリアなどの名馬は競馬ファンの記憶に残り続ける馬達でしょう。22年3月から、JRAからフリーな立場で助言ができる「アドバイザー」に就任したそうですので新たな立場からの活躍を期待したいですね。

そして、ダービーを3勝し、22年のリーディングでも上位だった福永祐一騎手が23年の2月に騎手を引退して調教師になると発表されました。現役バリバリのトップジョッキーが調教師に転身という事で話題を呼びましたが、お別れではなく新たなチャレンジととらえたいですね。

引退馬たちの新たな活躍

2022年の競馬界は、これまで以上に引退馬がクローズアップされる年でもありました。

ゲームアプリ『ウマ娘 プリティダービー』の人気ぶりは以前からですが、その熱の高まりから引退馬により注目が集まるようになったこともあるでしょう。そのハイライトがアドマイヤジャパン号のCM出演です。『快適過ぎて動けなくなるほどのソファ』をモットーに、ソファやクッションを販売する『yogibo』という会社の宣伝に、アドマイヤジャパン号を起用したCMが大ヒット。クッションを下にして横になる姿はストレートに気持ち良さが伝わるCMとして競馬ファン以外からも注目を集めました。第2弾、第3弾のCMが出る日も近いかもしれません。

また、『ウマ娘』で競走馬の内面や、性格をクローズアップしたことが人気になった点から、引退馬の内面や性格により注目が集まりました。02年のダービー馬のタニノギムレットは趣味で牧柵を蹴って壊してしまうことや、01年の宝塚記念を勝ったメイショウドトウは穏やかな性格で猫を背中に乗せていることなどが、ある意味では現役時以上に注目を集めていました。今後も競走馬や引退馬の性格・内面が、よりクローズアップされることになるのではないでしょうか。

若手、中堅騎手の飛躍

2022年の中央競馬で印象的だったのが若手、中堅ジョッキーの活躍です。コロナ禍で海外から有力騎手の来日ができなかった時期があったのは確かですが、結果を残しました。なんといっても、今年の新人騎手としてデビューした今村聖奈騎手の活躍は特筆すべきと言えるでしょう。

今村聖奈騎手は22年3月にデビューし、3月13日に初勝利を挙げると、5月には女性騎手デビュー年の最多勝を更新。そして7月のCBC賞では初重賞騎乗初制覇を達成。日本レコードでの勝利だったこともあって大きな話題になりました。その後も勝利を重ね51勝をマーク。デビュー年で50勝以上したのは過去に5人だけという歴史的な記録となります。この記録は武豊騎手(69勝)、福永祐一騎手(53勝)も記録していますが、彼らの様な活躍を今村騎手ができるかどうか、注目が集まります。

また、高松宮記念では丸田恭介騎手が、スプリンターズSでは荻野極騎手が、秋華賞では坂井瑠星騎手が、チャンピオンズカップで石川裕紀人騎手が初G1勝利を挙げることができました。

ベテランのトップジョッキーや外国人騎手がG1を勝つケースが多いJRAにおいて、中堅・若手騎手がG1で多くの勝ち星をあげたことはインパクトがありました。さらに、騎手リーディング10位以内に20代の騎手が3人も入っていることから、若手・中堅騎手の頑張りがあった1年と言えるのではないでしょうか。


ざっくりと、今年の中央競馬の代表的なトピックスについて挙げてきました。

まだまだお話しできていないことは多々あるかと思いますが、それぞれの話題を振り返るきっかけになれば幸いです。2022年の中央競馬には大いに楽しませてもらいました。2023年もまた、さまざまな出来事が起こっていく中で、明るい話題、楽しい話題が一つでも増えることを楽しみにしたいですね。

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