ウマフリ読者の皆さん、こんにちは。
元JRA調教師の角居勝彦です。
「東映エージエンシー×ホースコミュニティ」のクラウドファンディングにご協賛いただいた皆様、ありがとうございました。その返礼として、ウマフリにて6回にわたり思い出の馬を語っていこうと思います。
まず最初に取り上げるのは、ウオッカです。
ウオッカ
父:タニノギムレット
母:タニノシスター
獲得賞金:13億487万円
生年月日:2004年4月4日
お父さんは、タニノギムレットというオーナーが持っている種牡馬で、お母さん馬もオーナーが持っている繁殖牝馬。このお母さんの子供は僕が調教師になってからずっと預からせて貰っていました。
タニノギムレットの産駒も1年目だったということもあって、どういう子供が生まれるのだろうと期待と不安が入り交ざった感じでした。
初対面では、牝馬で身体がちょっと薄いかなと思いましたが、バランスは良く、「タニノギムレットってこういう子供が生まれるんだ」と感じたのを覚えています。
オーナーの谷水さんとは開業前からのお付き合いで、生産牧場のカントリー牧場も事有る毎に行かせて貰っていました。ウオッカについても生まれてすぐ見させていただき、その後も何度も通いましたが、彼女については「会う度に順調に成長している馬」という印象でした。
ウオッカの育成方針は、当初は普段と変わらないものを選択。ダービーを勝つまで、いつも通りの角居厩舎スタイルでの調教をしていました。レース選択もクラシックに向けてという取り組みで、一般的なセオリー通り行きましたけど、ダービーを勝ってからは崩れちゃったというか……それから安田記念を勝つまでは、ちょっと何をして良いものかわからなくなったという感じでした。
もちろん凱旋門賞にチャレンジだとかドバイへ行くだとかいう話も出てきます。海外レースを含めた選択肢を前に、さらに訳がわからなくなってしまったんです。
馬の体調に合わせてというのではなく、レースを決めて競馬に向かっていたという感じがあったので、そういうことは非常に苦労したなという風に思います。
一番レースとして印象に残っているのはやっぱりダービーになるでしょう。
角居厩舎として初めてダービーに挑戦した馬でしたし、ましてやそれが牝馬だったということで……そのエントリーがいかに大変なことか、無謀なことかということも何も考えずにいました。そしてエントリーしたあとに、事の大変さに気が付いたという感じでした。
ウオッカを一言で表すなら、角居厩舎を国内メジャーにしてくれた馬です。
本当にウオッカのファンは沢山いらっしゃいますし、そのファンが角居厩舎を支援してくれているというイメージもあります。厩舎を本当に国内メジャーにしてくれた馬だったなあと思っています。
私の引退が決まってウオッカも死んでしまったというのは本当に寂しいなという想いがあります。
しかし、皆さんの心の中にいつまでも残しておいて貰いたい馬だなあと思っています。
写真:Horse Memorys