[引退馬支援]帝王の血を守る! トウカイテイオー産駒の会の奮闘とは。

トウカイテイオーの血を受け継ぐ産駒たちを引き取り、引退後に乗馬転向するための後押しをしている団体・トウカイテイオー産駒の会。今回はその代表である早川さんに、トウカイテイオー産駒たちの近況を伺ってきた。

繁殖牝馬を、乗馬に! トウカイテイオー産駒の持つ『乗馬としてのセンス』

2013年に引退したヤマニンバッスル、翌年に引退したゴールドショットの2頭を群馬の赤城乗馬クラブへと送り出してきた早川さんと「トウカイテイオー産駒の会」。
競馬雑誌や地元新聞紙、WEBメディアなどに、会の活動とテイオー産駒たちの取材記事が掲載されたことで「乗馬クラブにトウカイテイオーの子どもたちがいる!」と話題になった。

さらに2019年には、元繁殖牝馬であるリラン(乗馬名)を引き取り、乗馬としてのリトレーニングを馬事学院(以下、バジガク)に依頼。競走馬・繁殖牝馬そして乗馬と、3つ目の活躍のステージを求め、時間をかけながらゆっくりとトレーニングをしてきた。
しかし、リランはトウカイテイオー産駒の会の想定を超える成長を見せてくれたという。

「リランについては、元繁殖牝馬なので乗馬調教には時間がかかるかなと思っていました。
繁殖牝馬と乗馬では生活スタイルが違うため、1頭だけで洗い場で待つことができないリランを根気よく教育して、少しずつ乗馬に必要なことに慣れてもらいました。

そろそろ1年が経つタイミングでご挨拶に伺ったところ、バジガクさんから『もう問題ないです。どこの乗馬クラブに行っても大丈夫なレベルですよ!』と太鼓判をもらえたんです。正直、想像していた以上のペースで、嬉しい誤算でした!」

そうなれば次は乗馬クラブ探しという流れになるが、早川さんはどこに声をかけるか悩んでいたという。何故ならば、赤城乗馬クラブにはすでにヤマニンバッスルとゴールドショットの2頭を管理してもらっている。信頼関係は出来上がっているものの、さすがに3頭目となると、ご迷惑ではないか──そうした懸念があった。
しかしそうした懸念は、すぐに払拭される。
赤城乗馬クラブから「リランの乗馬調教が完了したのであれば、ウチで是非!」とオファーがあったのだ。

「ヤマニンバッスル・ゴールドショットの2頭が乗馬として活躍していたこともあり、赤城乗馬クラブさんのお客様から好評だったそうです。4月1日には千葉のバジガクから群馬・赤城乗馬クラブに移動となりました。赤城乗馬クラブさんからは『トウカイテイオーの産駒は乗馬の適性が高い傾向がある』と嬉しい言葉をいただきました! 多くのトウカイテイオー産駒には、気性的にも問題なく、障害も飛べるようなポテンシャルがあるようです」
そうして先輩である2頭に続き、リランも赤城乗馬クラブに移動後はあっという間に、レッスンや外乗(がいじょう)で活躍、障害を飛べるようにもなり、1頭の乗馬として自分の居場所を確保していく。

「皆さんのおかげでこんなに順調にいくとは、ちょっと怖いくらいですね!」と、早川さんは顔をほころばせる。「今となっては、繁殖牝馬時代の面影もないくらいです。もしかしたら出産と育児で度胸がついているのかもしれません。動じない性格で、とても頼もしいです」

そんなリランがヤマニンバッスル・ゴールドショットの放牧地に一緒に出るようになった。当初は「セン馬と同じ放牧地で大丈夫かな?」と心配した早川さんだったが、そんな周囲の心配も関係なくすぐに馴染んだリランは、今では4頭のセン馬たちを尻目に放牧地のボスとして君臨している。

先輩のヤマニンバッスルとゴールドショットは放牧地ではいつも一緒に過ごしており、先日は「ソフト競馬」のGⅠ「天柔賞」でワンツー(1着ヤマニンバッスル、2着ゴールドショット)を決めるなど、相変わらず仲睦ましい。

──こうして赤城乗馬クラブは、世にも珍しい『トウカイテイオー産駒が3頭いる乗馬クラブ』となったわけだが、話はそれだけでは終わらない。

なんと、4頭目のトウカイテイオー産駒が仲間入りを果たしたのだ。

現役最後のトウカイテイオー産駒を救え! 先輩たちが切り開いた「道」

「トウカイテイオー産駒で最後の現役競走馬・トウカイフェスタは、2020年8月に引退しました。彼は、気性も極めておとなしい馬。500キロを超える雄大な馬体で、尻尾も長く品があり、顔もイケメンとあって、間違いなく乗馬に向いてそうだと感じていました」

トウカイフェスタは、父トウカイテイオー・母トウカイデンヒル・母母トウカイスコールという血統。中央でデビューし、南関や岩手、高知、金沢などを経て10歳で引退したという功労馬だ。通算116戦と、長い期間現役で頑張ってきた。

「フェスタについては赤城乗馬クラブさんに『すごく乗馬向きの子がいるので、ぜひお願いしたい』と提案してみたんです。乗馬としての将来性を感じていましたので、画像・映像を確認してもらうと、御眼鏡に適ったようで、引退後にそのまま移動という運びになりました」

トウカイフェスタは、競走馬時代からオーナーが将来を気にかけていた大切な馬だった。
トウカイテイオー最後の現役馬とあって、ファンの注目も集まっていたということもある。
早川さんも、オーナーと引退後について話す機会もあったが、いつ引退するかは馬次第、不自然に早めても遅らせても、馬のためにはならない。
オーナーと話をしてからも、一年くらいは見守ることになったのだという。
そしてついに引退となったタイミングで全てが噛み合ったからこそ、トウカイフェスタの第二の馬生がスタートしたのだろう。そこには、偶然ではない、先輩たちの功績があった。

「フェスタの引退のタイミングがリランの移動時期と被らなくて、本当に良かったです。先に乗馬クラブに移動したリランの素晴らしい頑張りが、テイオー産駒への更なる信頼に繋がり、トウカイフェスタを乗馬へと導いてくれたと思っています。

かつて、ヤマニンバッスルがゴールドショットの怪我による危機を救い、その2頭がリランの乗馬としての未来を開いたように、トウカイテイオー産駒たちはリレーバトンを繋ぎ、ともに支えあっているのだと感じます」

トウカイフェスタは、乗馬転向後1月ほどでジュニアを乗せてレッスンができるほどの高い適性を見せ、競走引退から3カ月で部内馬術競技会にもデビューし、早川さんたちを驚かせた。

さらにはトウカイテイオーファンが協力して、テイオーの子どもたちを乗馬にしようと奮闘する会の活動を、乗馬クラブの会員さんたちも応援・後押しして盛り立ててくれている。そこに「皆さんの温かい気遣いを感じて、本当にありがたい」と、早川さんは語る。群馬の地に、トウカイテイオー産駒が集まる乗馬クラブが存在するのは、多くの方たちの支えと、1頭1頭の頑張りによるものだろう。

トウカイテイオー産駒最後の現役馬は、群馬の地で乗馬としての第二の馬生を迎えている。

トウカイテイオー産駒が、トウカイテイオー産駒の引退後の道を切り開く。
新しい引退馬支援の形が、そこにはあるような気がするのだ。

写真:櫻井克真(テイオー会@あかぎ団)

赤城乗馬クラブHP:http://www.akagi-johba.co.jp/
新型コロナの感染拡大を防ぐために、体験乗馬など赤城乗馬クラブへのご来場は、
事前のご予約とマスクの着用をお願いします。

トウカイテイオー産駒の会HP:
https://team-teio.jimdofree.com/
https://twitter.com/tokaiteiosannku
https://www.facebook.com/team.goldshot

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