![[北九州記念]一攫千金は夏の小倉千二にあり。北九州記念で波乱の立役者となったスプリンターたち](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/05/2026053101-1-scaled.jpg)
夏の小倉開催を代表するレースのひとつである北九州記念。秋の大舞台に向けて重要な前哨戦である一方、馬券的にも数々の波乱を生み出してきた競走でもある。
今回はそんな北九州記念で穴を開けた伏兵たちの走りを取り上げ、振り返ってみたい。
2006年 コスモフォーチュン
前年まで芝の1800mで行われていた北九州記念だったが、2006年からサマーシリーズが始まり、夏の番組編成が変化。これにより、同レースは距離を芝の1200m戦に短縮したうえでサマースプリントシリーズに組み込まれ、スプリンターズSに向けた前哨戦として開催されることになった。
そんな改革初年度の北九州記念は、ここまで同シリーズを戦い抜いてきた馬の参戦に加え、GⅠでも好走した実力馬も出走。人気は前年のスプリンターズSで4着の実績があるマルカキセキがやや抜けた1番人気だったとはいえ、各馬とも差がないかなりの混戦オッズであった。
ゲートが開くと好発を決めたコスモフォーチュンが先手を主張するが、彼女に先んじてサチノスイーティーがハナへ。アイビスサマーダッシュを制してきた快速少女の動きを見て、コスモフォーチュンは競り合うことなく引いて2番手に控えた。結果的にこの判断がレースの結果を左右することとなる。
600mの通過は32.9秒とやや速めの流れで進む中、4コーナーで馬群はかなり外に寄る。開催が進んだ芝の荒れ具合を嫌ったか、各騎手が少しでも馬場の良いところへ持ち出そうという思惑がこの隊列を生み出していた。
だがその中でただ1頭、コスモフォーチュンと角田晃一騎手だけはインを進み、馬場のやや内から真ん中あたりでコーナーを回る。その勢いのままサチノスイーティーを交わして直線に向くと、後はもう独走状態。伸びあぐねる後続を尻目に更に脚を伸ばして、単勝11番人気の低評価を覆す重賞初制覇を飾って見せた。
人気が割れていたためそこまでの大波乱とはならなかったが、3連単の払戻金額は10万7960円と高配当に。条件が変更された初年度から、いきなり伏兵が激走した。
逃げたサチノスイーティーが新潟の千直を勝利していたように、コスモフォーチュンもまた、前走でその条件を勝ってここに臨んだ馬だった。1000万下の条件戦とはいえ、速さの問われる舞台を最内枠から勝利していた強さは、重賞で好勝負を繰り広げていたライバルたちに負けず劣らずの強さ。同型馬が行くのを見るや引き、しっかり相棒の末脚を溜める姿勢を見せた鞍上、角田晃一騎手(現:調教師)の手腕も光った一戦であった。
2007年 キョウワロアリング
14頭立てだった前年から2頭増え、16頭立てとなった2007年の北九州記念。しかし、混戦ムードだった前年とは違い、この年は断然人気の支持を受けていた馬がいた。
その馬の名はアストンマーチャン。前年の阪神JFでのちに牝馬で64年ぶりにダービーを制するウオッカの2着となり、クラシック一冠目の桜花賞でもダイワスカーレット、ウオッカと共に人気を分け合った3強の一角である。今回はそれ以来の出走となったが、ここまでの実績を評価されて1.8倍の1番人気に推されていた。
それに続く2番人気のメイショウトッパーも、キャリア9戦で掲示板外は僅か1度という安定ぶり。さらにはアストンマーチャンと同世代で、クラシックを盛り上げたカノヤザクラや、前走のアイビスサマーダッシュで11番人気ながら圧勝劇を見せたサンアディユなど、前年以上の強豪が顔を揃えていた。
レースは快速馬ギャラントアローを筆頭に激しい先行争いが繰り広げられ、アストンマーチャンもこれを追走。さらにシルヴァーゼットやサンアディユも加わり、3コーナーの入り口までハナ争いは続いた。その結果600mの通過タイムは32.1秒という、過去の小倉芝1200m戦のなかでもトップタイの速さを記録。さすがにこの展開では逃げた馬達の脚色は鈍り、4コーナーですでに脚が上がっていた馬も少なくなかった。
彼らに代わって、スタート後中団で脚を溜めていたアルーリングボイスとキョウワロアリングが大外から進出。直線はこの2頭が内で抵抗するアストンマーチャンとカノヤザクラを置き去りにして競り合いに持ち込むと、最後はキョウワロアリングがぐっと抜け出し、先頭でゴール坂を駆け抜けた。
人気上位馬が総崩れし、11番人気→6番人気→10番人気で入線したこのレースの3連単の配当は、なんと157万690円。馬単でも11万、3連複でも16万円台の払戻金額で、前年以上の高配当となった。そしてこの年も勝利したのは角田晃一騎手。前年は逃げ、今年は追い込むという対極のスタイルで、2年連続の波乱を演出した。
ちなみにこのレースで6着となったアストンマーチャンは、次走のスプリンターズSで600m通過33.1秒という超ハイペースを刻みながら逃げ切り勝ちを収めている。さらにこの北九州記念でも、スタートから先行争いをした馬達の中では、唯一二桁着順になっていない。超ハイペースを先行しながらもここまで粘れるというのは、やはりこのメンバーの中でも実力は水準以上だったという事を示している。
2014年 リトルゲルダ×メイショウイザヨイ×カイシュウコロンボ
2007年以降は2年連続で3連単以外の券種は万馬券にならないという決着が続いた。
だが、フルゲートになった2010年は3連単の配当が20万円となり、久しぶりの高配当に。そして2年後の2012年に再び18頭立てとなると、今度は3連単が99万円、3連複でも13万円馬券という波乱となる。やはりこのレースのフルゲートは相当に波乱の見込める条件であるとファンが思い始めた2014年の北九州記念は、超大波乱の結末を迎えた。
この年の1,2番人気は、サマースプリントシリーズの第2戦であるCBC賞で好走したエピセアロームとベルカントがそれぞれ推され、他はやや離れたオッズに。
彼女たち以外に前走で馬券圏内に入っていた馬は少なく、条件戦からの転戦も多かったため、実績が抜けていた2頭が支持を集めるのも納得のいくメンバー構成だった。だが、結果としてこれが波乱の引き金となる。
ゲートが開くと、逃げて好成績を残してきたアンバルブライベンが先手を主張し、それにメイショウイザヨイ、リトルゲルダがついていく。その後ろにバーバラ、アイラブリリ、アルマリンピアが並んでいくが、ここまで挙げた5頭は全て6番人気以下。人気各馬は後方からレースを運び、エピセアロームやベルカントも中団から進めていた。
600mの通過タイムは33.1秒と一見速そうに見える。だが、2010年代から馬場の高速化がより一層進んでいたうえ、時計の出る小倉の野芝ではそこまでハイペースとは言えない。こうなると、前で進めた各馬には有利な展開である。
そして直線に向き、2番手から抜け出したメイショウイザヨイとリトルゲルダが激しい競り合いを繰り広げ、逃げたアンバルブライベンは内で粘る。先行した3頭が全く止まらずこのまま決まるかと思われたところに、3~4コーナーでうまくインのポケットから先団に進出したカイシュウコロンボが一気に突っ込んでゴールイン。最後は僅かにリトルゲルダがメイショウイザヨイを交わして勝利し、アンバルブライベンをカイシュウコロンボが捉えて3着に上がっていた。
上位3頭の人気入線順は8番人気→13番人気→17番人気で、3連単の払戻はなんと395万3810円。これは2026年6月現在でもレース史上1位の払戻記録となっているかつ、重賞でも歴代10位にランクインするほどの大波乱であった。
勝利したリトルゲルダは次走のセントウルSも勝利し、北九州記念馬として初のサマースプリントシリーズの王者に輝いた。年末には香港スプリントにも挑戦した同馬は翌年以降も短距離戦線で存在感を発揮し、この勝利が決してフロックではないことを証明して見せた。
2020年 アウィルアウェイ
2014年以降も3連単で100万馬券が飛び出すなど、やはり荒れる重賞として存在感を示していた北九州記念。だが2020年は、通常とは異なる理由でレースに異様な雰囲気が漂っていた。
新型コロナウイルス感染症により、無観客での開催が続けられていた中央競馬。春先に発令された緊急事態宣言は解除されたとはいえ未だその脅威は収まるところを見せず、夏競馬になっても有観客での開催はなされなかった。
そんな状況下で行われた北九州記念。1番人気には同年の高松宮記念を勝利したモズスーパーフレアが推され、やや抜けた人気に。スタートから飛ばす彼女の速さに魅せられたファンは多く、今回もその走りに期待が集まっていた。
そしてゲートが開くと同時に、いつも通りモズスーパーフレアは逃げて行く。まとわりつく時代の嫌な空気を振り払うかのように飛ばした彼女が刻んだ600mの通過タイムは32.4秒。タイムの出る小倉とはいえ、前年彼女がこのレースで刻んだ32.7秒よりさらに速い超ハイペースである。そしてやはりと言うべきか、残り200mで彼女の逃げ足は鈍った。
そこに飛び込んできたのがレッドアンシェルとアウィルアウェイ。まず先にレッドアンシェルが抜け出し、粘るモズスーパーフレアを一気の末脚で外から捉えに行ったアウィルアウェイがアタマ差まで迫ったところでゴールイン。3連単の払戻は9万3990円と高配当となった。
そして3着のアウィルアウェイは、次走のスプリンターズSでもその末脚を遺憾なく発揮。直線、後方から異次元の末脚で差し切り勝ちを決めたグランアレグリアのさらに後ろにいたアウィルアウェイは、彼女とコンマ1秒しか変わらない上り3Fで3着に入線し、3連系の万馬券を生み出す立役者となった。
2022年 ボンボヤージ
コロナウイルス感染症も落ち着いて競馬場に歓声が戻り始めたこの年は、サマースプリントシリーズの初戦である函館スプリントSを勝ち、スプリンターズSへの最終仕上げとしてここを選んだナムラクレアが出走。春には桜花賞で2着と好走した実績と軽斤量を評価され、抜けた1番人気に支持されていた。
そして彼女に続く人気各馬も、CBC賞で日本レコードを記録したテイエムスパーダや、同レースで3着に入線したアネゴハダなどの3歳牝馬が中心に推されており、どこか新時代の到来を予感させていた。
レースはCBC賞同様に先手を取ったテイエムスパーダが逃げ、600m32.8秒という通過タイムで逃げる。しかし、4コーナーでその差を広げた前走とは違い、逆に馬群は密集。内から忍び寄るアネゴハダが先頭に立とうかという所で、そのさらに内から抜けてきたのがボンボヤージだった。
後ろからタイセイビジョンや、4コーナーの不利で仕掛けの遅れたナムラクレアも追撃してくるが、それらを振り切ってゴール坂へ。単勝オッズ164.3倍の伏兵が、人気馬を打ち倒して大金星を挙げた。
これにより、2,3着馬が人気馬だったにもかかわらず、3連単の配当は49万3589円と2026年6月現在でもレース史上4位となっている高配当を記録。加えて、1着から3着馬までに騎乗していたのは全てこの地方出身の騎手という「九州男児決着」もレース後は話題を呼んだ。
そして見事に北九州記念を制したボンボヤージの兄は、競走中の事故により志半ばでターフを去ったファンタジスト。彼は小倉2歳Sを制していたことから、兄妹揃って同じ条件、しかも同じ時期に重賞制覇を遂げた。レース後、そんな事実を知ったことで、どこか不思議な縁を感じたのは私だけではないはずだ。

写真:突撃砲
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