![[今週の注目]夏の上り馬を探せ!母ルージュバックのボニープリンス](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/07/IMG_7672.jpg)
夏競馬も3週目に入り、今週の主役は福島の七夕賞。この時期になると、普段は競馬場での観戦を好む私でも、毎週のテレビ観戦にすっかり馴染んでくる。エアコンの効いた部屋で競馬新聞を広げ、レースを楽しむ——その快適さに、毎年夏の訪れを実感してしまう。
なかでも七夕賞デーの福島は、テレビ越しにこそ味わえる「季節の気配」がある。この日の特別レースは「織姫賞」「天の川S」「七夕賞」「彦星賞」と続き、画面にレース名が順に映し出されるたび、子どもの頃に胸が高鳴った「夏が来た!」という感覚がよみがえる。七夕が過ぎれば夏休み——あの、終わりの見えない自由が広がっていた季節である。
大人になって夏休みはなくなったけれど、季語をまとったレース名を目にすると、あの頃の軽やかな気分が少しだけ戻ってくる。これもまた、夏競馬の楽しみ方のひとつかもしれない。
そして、夏競馬の楽しみはもうひとつある。秋華賞や菊花賞へと続くクラシック戦線に向けて、「夏の上り馬」と出会えることだ。
この時期の1勝クラス、2勝クラスでは、斤量差もあって3歳馬が勢いよく勝ち上がってくる。その中で、ゴール前でひときわ鋭い末脚を光らせる馬に出会うと、思わず胸が高鳴る。
春のクラシックに間に合わなかった馬、デビューが遅れたがようやく成長が追いついてきた馬——夏の条件戦には、秋に羽ばたく可能性を秘めた若駒たちが数多く姿を見せる。
今週の福島にも、そんな期待を寄せている3歳牡馬が出走を予定している。前走の2000m未勝利戦を危なげなく勝ち上がり、今回は同じ距離の1勝クラスへ。夏の福島でどんな走りを見せてくれるのか。この3歳馬に、秋の大舞台への夢をそっと重ねながら、今週はレースを見届けたい。
■名牝ルージュバックの4番仔、ボニープリンス!
その期待の3歳馬こそがボニープリンスである。母と同じくカクテルの名を冠したこの牡馬は、血統背景からしても「夏の上り馬」としての魅力に満ちている。母ルージュバックは、きさらぎ賞や毎日王冠など重賞4勝。クラシックでは桜花賞こそ1番人気で9着に敗れたものの、オークスではミッキークイーンと名勝負を演じて2着。前脚を高く上げる独特のフォームから鋭い末脚を繰り出し、5歳の暮れまで一線級で走り続けた名牝だ。
その産駒たちも、母譲りの切れ味を随所に見せてきた。初仔フラーバック(牝・父ロードカナロア)は中央未勝利に終わったが、2番仔フレーヴァード(牡・父モーリス)は3歳秋に3勝目を挙げて素質を示した。脚部不安で古馬になってからは思うように使えず、6歳春に引退したものの、末脚の冴えは確かなものだった。3番仔は未出走で、今回のボニープリンスは4番仔にあたる。前走の未勝利戦では、兄姉と同じく鋭い加速を見せ、直線で一気に抜け出して勝ち上がった。

ボニープリンスの父レイデオロは、産駒が幅広い距離で活躍しているのが特徴。ダービー卿CTや東京新聞杯を勝ったトロヴァトーレ、阪神大賞典ではサンライズアースとアドマイヤテラで2年連続制覇など、マイルから中長距離まで多彩なタイプを送り出している。とはいえ、もっとも勝ち星が多いのは1800〜2000mの中距離。福島の小回りでも、2025年のラジオNIKKEI賞を制したエキサイトバイオが実績を作っている。ボニープリンスが今回挑む福島の2000mは、レイデオロ産駒なら心配はいらないのかもしれない。
■ボニープリンスのデビューから3戦を振り返る
ボニープリンスという馬が、どんな道のりを経て今の走りにたどり着いたのか——これまでの3戦を振り返っておきたい。
デビュー戦は2歳10月、雨の府中1600mの新馬戦。パドックでは幼さが目についたものの、1番人気に支持され、C.ルメール騎手を背にレースへ向かった。道中は内の好位でじっと脚を溜め直線に向くと、内の狭いところを通りゴール前で鋭く伸びて先頭の2頭に迫ったが、あと一歩届かず4着。まだ体も気持ちも整いきらない中で、片鱗のような末脚を見せた初陣だった。

続く2戦目は12月の中山1800m未勝利戦。1枠1番から中団の内で動けず、4コーナーまで我慢の競馬。直線ではT.マーカンド騎手が内のスペースを探りながら、6着まで追い上げた。前残りの流れの中で上がり3F34秒5は16頭中3番目。結果以上に、狭いところを割って伸びてきた脚に成長の兆しがあった。
そして前走、3戦目となる府中2000mの未勝利戦。オークス前日の良馬場の好舞台で、鞍上にはD.レーン騎手を迎え、ここは「勝ちに行く」確かな構えで臨んだ一戦だった。スタートから積極的に前へ出し、道中は先頭集団の外をスムーズに追走。4コーナーでは3番手で直線へ向き、内の2頭を見ながら残り200mでD.レーン騎手がGOサインを出す。ボニープリンスは、鋭く反応して先頭に立つと、そのまま押し切った。鞍上の巧みなリードと、馬自身の集中力が噛み合った、内容の濃い勝利だった。

2000mという距離、道中のスムーズさ、そして直線での加速。この走りは、上のクラスでも十分に通用する——そう思わせるだけの説得力があった。
■そして、今週。秋への布石にしたい「大切な一戦」
そして今週、ボニープリンスがいよいよ秋へ向けて始動する。鞍上は、母ルージュバックの主戦として数々の名場面をともにした戸崎圭太騎手。今回の福島開催ではすでに8勝を挙げており、コース適性と好調ぶりは申し分ない。一週前追い切りにも騎乗しており、ボニープリンスの感触や特徴をしっかりつかんでいるはずである。血統の背景、前走の内容、そして頼れる鞍上——条件は整った。
舞台は11日土曜日の7レース、3歳以上1勝クラス・芝2000m。
レイデオロ産駒がもっとも力を発揮しやすい距離であり、福島の小回りでも戸崎騎手なら安心して任せられる。ボニープリンスがどんな走りを見せてくれるのか。今週の「見逃せない一戦」となるはずだ。

ボニープリンスという名は、ブランデーをベースにトランブイとライムジュースを合わせて作るカクテル「ボニープリンス・チャーリー」に由来する。「ボニー」には「可愛い」「華麗な」という意味があり、直訳すれば「可愛い王子」。その名の響きは、どこか若駒らしい瑞々しさと、未来に向かって成長して行く頼もしい姿をイメージする。
「夏の上がり馬」として求められる要件は、すでに十分に満たされている。そして、ここを勝ち切れば、秋へ続くトライアルレースへの道が開ける。「可愛い王子」が、夏を越えてたくましく成長し、秋の大舞台へ歩みを進めていく姿を是非見届けたい。

写真:ぼん(@Jordan_Jorvon)、I.Natsume
