凱歌が揚がった瞬間、中山競馬場は大きな歓声に包まれた。 方々で拍手の音も聞こえる。 いわゆる「馬券勝負」に勝った観客だけでなく、負けた観客すら拍手を送った。観客全体がこれだけ一体となって当日の主役を祝福するという場面は、鉄火場の代表格たる競馬場においては当時あまり見られない光景だった。まるでそこにいる観客全員が歓びを等...
コラム・エッセイ
コラム・エッセイの記事一覧
時は平成9年(西暦1997年)のことである。 三冠馬ナリタブライアンや女傑ヒシアマゾンといった『スターホース』が競馬場を去り、中央競馬界に“スーパーサイアー”サンデーサイレンスの時代が到来していた頃。 牡馬クラシック戦線ではブライアンズタイム産駒が猛威を振るい、春には“元祖・砂の女王”ホクトベガが異国ドバイのナド・アル...
今も昔も、桜花賞馬はどうにも儚いというか、散り急ぐというか……要は活躍期間が短めの馬が多いというイメージがある。こう思っているのは私だけでは無いのではないだろうか。その点、2015年の桜花賞馬レッツゴードンキはそうしたイメージとかけ離れた活躍を見せた。逃げから差し&追い込みにモデルチェンジしたとは言え、堅実さはそのまま...
──またこの季節がやってきた。年末になると、かならず思い返す出来事がある。 この話は、2004年まで遡る。 2004年12月31日。 当時まだ「青年」だった私は、モヤモヤと葛藤していた。「今日で終わってしまう」累積赤字により高崎競馬の廃止が決まってからそれまで、ルーチンワークのように、なんとなくボンヤリとした思いで高崎...
「アップ、ごめん」 場内に響く悲鳴とどよめきを耳にしたときから、何も言えず、ただ行く末を見つめていた。そのすぐそばで新たに誕生した障害王者が、あたたかい拍手と声援とともに讃えられていた。 屈腱炎を克服し、幾多の死闘を繰り広げてきたニホンピロバロン。 くしくも絶対王者・オジュウチョウサンが連勝街道を歩み始める直前に最後の...
1995年3月5日、中山競馬場。この日に行われた弥生賞で、衝撃的なレースぶりからクラシック皐月賞への最有力候補へと名乗りを挙げた1頭の名馬がいた。 2歳王者となった前年末のレースも、逃げ馬を射程に捉え、追い込んでくるスキーパラダイスをクビ差抑えるという正攻法の競馬だった。その王者たる走りは、多くの競馬ファンを虜とした。...
事の発端は、その1ヶ月前に遡る。 小倉サマージャンプを現地観戦すべく準備を進めていた矢先に発生した台風12号──東から西へ逆走するという異例のコースを辿ったこの台風が、よりによって週末に九州北部を直撃したのだ。 出発前日のギリギリまで小倉行きを強行するかどうか迷ったが、家族に心配をかけてまで出掛けるのは本意ではない。泣...
2018年12月2日、チャンピオンズカップ(GⅠ)が行われました。そこでは3歳馬のルヴァンスレーヴ(美浦・萩原清厩舎)が1番人気に応え、見事優勝。3歳シーズンを終えて8戦7勝──さらにはたった一度の敗けも2着、という素晴らしい戦績はまさにチャンピオンに相応しいものでしょう。そんな若き王者が初めて挙げた重賞勝利──それが...
競馬ファンの方々にとって「ラフィアン」といえば、どんなイメージが浮かぶでしょうか? マイネル・マイネの冠名。岡田総帥。2歳戦に強い! ……と言ったところでしょうか。実は近年ラフィアンでは、繁殖牝馬になる事を意識してか、冠名を使っていません。マイネという冠名のイメージによって、産駒の価値が変わらないようにするためでしょう...
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語り継がれし「名馬」たち
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