[対談]熾烈なマイル種牡馬たちの戦いに!?2021年デビュー新種牡馬について──治郎丸敬之×緒方きしん

2021年に産駒がデビューする新種牡馬たち。
顕彰馬・キタサンブラックに注目が集まりがちだが、それ以上に繁殖牝馬を集めた馬もいるように、かなり期待されている種牡馬が多い印象だ。輸入種牡馬、実績馬、良血馬──その中で抜け出した活躍をしそうな種牡馬はどの馬だろうか?

治郎丸敬之「成功しそうなのはドレフォンかなと思ってる」

緒方:2021年に産駒がデビューする新種牡馬たちも、粒ぞろいというか、かなり面白そうな面々が顔を揃えましたね。前回はキタサンブラックについて話しましたが、今回は他の種牡馬についてふれていきましょう。

治郎丸:確かに興味深い種牡馬が多いね。そのなかで成功しそうなのはドレフォンかなと思ってるよ。

緒方:ブリーダーズカップ・スプリントを始め、アメリカの1200m〜1400m戦で活躍した馬ですね。社台グループが輸入した期待の新星。初年度から良い繁殖を集めましたし、かなり期待されていますよね。

治郎丸:筋肉の豊富な馬体が魅力だね。いわゆるストームキャット系の種牡馬だし、サンデー系の繁殖牝馬との相性は良さそうだと思う。

緒方:ディープ牝馬との配合ができるのが強みです。ディープ牝馬は良血馬ばかりですし、ディープ×ストームキャット系の相性の良さは証明済みです。

治郎丸:ただ、初年度産駒にはちょっとバラつきがあるらしい。2年目以降は安定して「ドレフォンっぽい馬」が出てきているらしいんだけど、初年度は短距離馬・中長距離馬と色々いるみたいなんだよね。そこがどう作用するかが気になる。

緒方:単純にドレフォンに似た馬(短距離系)の方が良さそうな気もしますけどねぇ。

治郎丸:どんな牝馬と配合したかにもよるだろうな。ドレフォン自体は短距離馬けど、産駒はスプリンターよりもマイル前後というイメージかなぁ。サンデーが入っていないミッキーアイルというか。ミッキーアイルよりもパワフルだから、ほっそりした繁殖とは種付けしやすそう。

緒方:馬格があるから、生産者の方々からも良い印象を持たれるでしょうね。

治郎丸:馬格があると、芝がダメでもダートがあるし、選択肢は多くなるからね。実はドレフォンは現役時代、普段は大人しくてで、スプリンターとしては珍しいタイプだったそう。種牡馬として社台スタリオンパレードで観たときもそうだった。オンオフがはっきりしているみたいだね。スイッチが入ると無我夢中で走るんだと思う。ロードカナロアみたいに、繁殖の質によってはクラシック距離もいけそう。万能系だろうなぁ。

緒方:最近の社台系種牡馬とはイメージ変わりますね。近頃はハービンジャーとかノヴェリストとかチチカステナンゴとか、欧州系が多いですから。調べてみたら、アメリカからの種牡馬輸入は2003年のウォーエンブレム・スウェプトオーヴァーボード導入以来なんだとか。その2頭の活躍ぶりを考えると、ドレフォンにも期待したくなりますね。

治郎丸:社台グループは翌年にもマインドユアビスケッツを輸入しているし、ここらで手堅く活躍するサンデーの血が入っていない種牡馬を当てたいところだろうね。

緒方きしん「フジキセキの後継種牡馬として、イスラボニータは成功すると思っています」

緒方:似た距離を走っていたという点では、イスラボニータもいます。こちらも2021年に産駒がデビューしますが、初年度から繁殖を集めているようで、高い期待がかけられているようです。僕もフジキセキの後継種牡馬として、イスラボニータは成功すると思っています。

治郎丸:イスラボニータは体の柔らかさからフォームが他馬とは全然違う馬だったよね。コジーンからきている柔らかさだと思っていたけど、聞くところによるとフジキセキも柔らかかったらしい。そのあたりの柔らかさがうまく遺伝すると(筋肉で走るというよりは)バネで走るタイプになるだろうね。430〜440あたりがベスト体重かもしれない。強さのタイプが違う、面白い存在になると思うよ。

緒方:フジキセキは名種牡馬でしたし、種牡馬の父としても素質があると思うんですよね。サンデー全盛に父と肩を並べて人気を集めていましたし、サンデー直仔種牡馬の全盛にもキンシャサノキセキ・カネヒキリらが堂々たる成績を残しました。世代交代の流れがきているこの時期にこの馬が種牡馬となったことは、フジキセキ系の継続に向けて追い風だと思います!

治郎丸:現1歳馬を見ていくとイスラボニータと瓜二つな産駒もいるし、ファンとしては楽しみだろうね。怪我しにくそうなのは好感が持てるな。

緒方:楽しみですね! 一方、同路線で活躍したロゴタイプは、あまり牝馬が集まりませんでした。こちらも貴重な血を繋ぐ活躍馬なのですが、初年度から苦境に立たされています。

治郎丸:うーん、難しいよね。仕上がりが早いのに長く活躍したタイプだから種牡馬としてのポテンシャルは高いはずなんだけど、あまりにも競合するタイプが多い。サンデーも入ってるし、並み居る種牡馬たちの中からあえてロゴタイプを選ぶという理由がなかなか見つからないかも。

緒方:ロゴタイプにとって不幸だったのが、母父サンデーの種牡馬が軒並み苦戦しているという状況下で種牡馬になったことですよね。血統も良いので、配合次第ではかなり面白い産駒が登場するんじゃないかと思うんですが。血統も良いですから、前評判をひっくり返すという観点ではこの馬に着目するのは面白いと思いますよ。4連勝で朝日杯FSや皐月賞などを制覇した3歳春など、引退のタイミング次第ではもっと人気になったはずですが、一方でそこで引退してしまっていたら感動の安田記念制覇が見られなかったのですから、まさに競馬とは難しいなと痛感させられます。さて、短距離路線からは、ビッグアーサーも種牡馬となっています。

治郎丸:ビッグアーサーも2021年度の新種牡馬か! 本当に層が厚いね。ただこの馬も苦戦しそうな印象があるかな。

緒方:そうですか!? 僕はかなり期待しているんですが……。

治郎丸:何と言ってもゴツい馬だったよね。グランプリボスよりもゴツい。そのグランプリボスも苦戦しているし、産駒はどうなるかなぁ……。

緒方:確かに馬体の上ではそうした懸念があるかもしれません。ただ、グランプリボスとの大きな違いは血統面──つまり、サンデーの血が入っていないことでにあるでしょう。それだけでも大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。名種牡馬・サクラバクシンオーの血は、いつの時代でもブレイクする可能性を秘めている血だと思います。キタサンブラックの母父としてみんなを驚かせてくれたことも記憶に新しいですし、あの名種牡馬の後継が現れたら生産者の皆さまからも頼りにされる種牡馬になるはずです。

治郎丸:筋肉もあるし、ダート路線でも面白いかもしれないね。緒方君の言う通り、確かにサクラバクシンオーはすごい馬だった。最強馬というのは10年もすれば塗り替えられるけど、僕の中で最強スプリンターは長い間サクラバクシンオーだった。ロードカナロアが出てきてようやく塗り替えられたんだけど、その間ずっと僕にとっての短距離王者だったんだよね。どんな馬が出てきても「いやいや、バクシンオーの方が強いでしょ」って思っていた。伝説のスプリンターだね。そういう意味では、一か八かにはなるんだろうけど、ビッグアーサー産駒のデビューを楽しみにするのも面白そう。

緒方:テスコボーイから続く名種牡馬の系譜がここにきて繋がりそうなことに、ロマンを感じています。高い勝ち上がり率を維持しながら大物を出して、父系を繋げていって欲しいですね。その可能性は十分にあります。ロマンという意味では今1番応援している種牡馬かもしれません。どうにか時代を築き上げて欲しい……。

治郎丸:あとは、以前少し話したけど、サトノアラジンも前評判を覆しそうという点で楽しみにしているよ。母父のストームキャットが強くでているタイプで、ダートマイル路線でもかなり面白い存在になると思う。

緒方:そう! サトノアラジンも楽しみなんですよね。どうしても現場での評判が良い馬というのは楽しみになってしまうものですから。もちろんレースで使ってみてどうか、というところはあるのですが……。そういう意味ではイスラボニータは、私の知り合いの関係者さまからの評判が高いので、どんな走りを見せてくれるか楽しみです。もちろん血統を取り入れるという意味では輸入種牡馬にも頑張って欲しいですが、イスラボニータ産駒VSロゴタイプ産駒を安田記念で見られたりしたら大興奮です! 今からデビューを楽しみに待ちたいと思います。

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