イギリス競馬入門〜その歴史を知ろう〜

過去に日本馬も参戦したことで、国内でも名前が広まった「ロイヤルアスコット開催」は、世界で最も有名な競馬開催の一つでもあります。
2018年には、日本産馬・サクソンウォリアーの参戦した英ダービーが日本で初めて生中継されるという出来事もありました。
近年は更に注目度も高まっている伝統のイギリス競馬、今回は主な情報や基本を紹介してみたいと思います。

そもそも「イギリス」とは?
基本情報や歴史について

イギリスという国の正式名称は「グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国」。それを略して、英国と呼ばれます。
主にイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの地域で構成されている欧州の国家です。
英語では「United Kingdom」「British」と呼ばれることが多く、略称では「UK」「GB」という文字が一般的には使用されています。

「競馬は貴族の遊び」という言葉があるように、近代的な競馬を始めたのはイギリスの貴族だと言われています。

そんなイギリス最古の競馬場は、チェスター競馬場。同地で初の競馬が開催されたのは、16世紀の1539年とされています。伝統的に王族の方も競馬に参加していたようで、アスコット競馬場の建設を指示したのはアン女王だと伝えられています。

競馬場は自然を大いに活用した造りになっているため、急な坂も多く非常にタフで、消耗戦になることも少なくありません。
よく「広大な草原に柵を置いただけ」とも評されますが、実際に見てもほぼそのような光景で、延々と芝生が広がっています。
広さも日本では考えられないほどで、ニューマーケット競馬場にはマイル戦を直線で行うコースが存在します。
コースの起伏も、中山競馬場を上回るほど。有名なエプソム競馬場の高低差は最大で約40mだと言われています。

色々と日本では考えられない規模の施設が存在しているため、数字で比較すると桁違いの大きさに驚かされます。

イギリスでは「有名政治家も馬主だった時期がある」という話も多く、競馬が文化の一部と認められています。
ダービーに関するエピソードが残されている元首相のチャーチル氏も、競走馬を多く所有していた有名な競馬愛好家です。
また、2019年7月まで首相の座に就いていたテリーザ・メイ氏も、過去に何頭かの競走馬を所有して勝利もあげていました。
尤もそれらは、自ら牧場を所有するほどの競馬好きとして知られるエリザベス女王の影響も大きいのかもしれません。

サラブレッドを品種改良の末に初めて生産した国もイギリスで、世界初の血統書を発行したのも同国。
以前はイギリス以外で生産された馬はサラブレッドとして認めないジャージー規則という規定も存在していたほどです。
しかし一番影響を受けていたアメリカが猛抗議。ジャージー規則が出来てから約40年後の1949年に廃止が決定しました。

また、イギリス競馬の独特の文化といえばブックメーカー。簡単に説明すれば民間の会社が運営している「賭け屋」です。
オッズは独自にブックメーカーが設定する方式で、競馬ファンは数社を比較してから馬券を購入するシステムになります。
もし大穴の人気薄が勝てばブックメーカーは一気に儲かりますが、本命が勝てば大損失を被るという仕組みです。
前売り馬券発売もありますが、馬券を購入した馬が出走できなかった場合でもハズレ扱いで返金はされません。
なおブックメーカーは、日本では法律により違法です。賭けに参加した場合は処罰されるケースもありますのでご注意を。

世界最大級の競馬開催国であるイギリス競馬には、イギリス人だけではなく外国人馬主も大勢参加しています。
アラブ圏出身の大富豪ではゴドルフィンのモハメド殿下、ジュドモントファームのハリド・アブドゥラ殿下などがその中心です。
日本人馬主がイギリスで馬を所有している場合もありますし、近年は中国人馬主の所有馬も時折見かけるようになりました。
イギリスで開催されるセールでは、毎年多数の日本人が競走馬や繁殖馬を購入して、日本に輸入しています。

そしてイギリス競馬の聖地といえば、馬産から調教施設までが揃っているサフォーク州のニューマーケット。
広大で豊かな土壌には栄養豊富な青草が多く生えていますし、さらには天然の坂もあるため、調教に向いている条件が揃っている土地です。
調教場には有名なウォーレンヒルなどの坂路コースが存在し、イギリスの多くの厩舎が拠点を構えています。
更に競馬場もあるため、全て一貫して競走馬育成ができる世界屈指の素晴らしい場所だと評されています。

ちなみにスコットランドにも競馬場はありますが、日本でも知られているような大レースの開催はあまりありません。

さらには、イギリスでは障害競走が非常に高い人気を誇っている点も、忘れてはいけない情報でしょう。

ここまで、イギリス競馬の歴史や基本情報をお話してきました。本稿が皆様の海外競馬への興味を引き立てるものであれば幸いです。

写真:Y.Noda

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