[連載・馬主は語る]馬主登録証(シーズン1-21)

首を長くして待っていると、ようやく地方競馬の馬主登録証が届きました。その間、およそ4か月。忘れた頃に届きますよと馬主の先輩に言われつつも、ひと時も忘れることなく待ち続けたのに、ほんとうに忘れかけた頃に届きました。

時期が時期だけに、繁殖牝馬セールやサラブレッドオークションに間に合うのかという不安がありました。僕が申請書を提出したのが4月のことなので、さすがに10月の繁殖牝馬セールには間に合うとしても(ノーザンファームの繫殖牝馬セールは生産者か馬主でなければ参加できない)、サラブレッドオークションの方はタイミングを逃してしまうのではという恐れがありました。もし僕が一口馬主として出資しているクラブ馬がどうしても勝ち上がることができず、サラブレッドオークションに出された場合、何としても手に入れたいと考えている馬がいたからです。

中央競馬の未勝利戦は3歳の8月までですから、ギリギリまで走ったとしても、9月以降にはサラブレッドオークションに出場してくる可能性があります。なんとか勝ち上がってもらいたいと思いつつも、もしかすると自分が1頭持ちできるかもと考えると、実に複雑な気持ちです。もちろん、それだけの素質を秘めている馬であり、繫殖牝馬としても魅力のある血統背景を持っている馬です。そんな馬でも、中央競馬で勝ち上がることは簡単ではなく、途中にアクシデントがあるとタイムオーバーになってしまうものです。中央競馬には縁がなかったとしても地方競馬で活躍できるかもしれませんし、牝馬であれば、競走馬としては能力全開できなくても繫殖牝馬として発揮するかもしれません。

まあ、とにかく、間に合ったので良しとしましょう。

馬主登録証の到着について具体的な話をすると、いきなり登録証が届くわけではなく、最初に「馬主の手引き」が届きます。この手作り感が地方競馬っぽくて良いですね。なぜ表紙の馬はカメラを持っているのか不思議です。もしかすると、僕たちは馬主になって馬を自分のものとして所有しているつもりでも、馬から見ると、それは人間の浅はかな営みであり、虚栄であり、珍しい生き物として映っているという意味なのかもしれませんね。さすがにそんなに深くはないか(笑)。同封されている鏡文に示されている地方競馬全国協会の口座に登録料1万円を振り込むと、あとから馬主登録証が別送されてくるという流れです。

馬主登録証が届くまでの間、「馬主の手引き」でも読んでおこうと目を通してみると、馬の登録から共有制度、馬主の登録に関しての記載があります。一度でもレースに出走してしまうと馬名の変更はできませんので、サラブレッドオークションで購入した馬に名付けることはできません(未出走の馬は除く)。それでも名前に関するルールは興味があるので詳しく読んでみると、以下のように記されています。いくつか抜粋します。

B、有名な馬の馬名と同じもの又はこれらと紛らわしいもの
→さすがに地方競馬でもアーモンドマイとかはNGなんですね。

D、当協会又は競馬会の登録を既に受けているもの若しくは抹消されてから概ね5年を経過しないもの又はこれらと紛らわしいもの
→僕がつけたいホゲットミーノットは20年前ですから大丈夫そうです(と思っていたら、誰か他の方が同じ名前を再びつけていました…)

F、奇きょうなもの
→あまり聞きなれない表現ですが、分かりやすくいうと変な名前はNGということですね。かなり曖昧な基準ですが、小田切さんの馬のようにギリギリを攻めることはできそうです。

G、一字又は十字以上のもの
→10字以上は知っていましたが、そういえば1字もだめなんですね。まあ1文字の名前つける人はいないでしょうが。

H、広告宣伝を目的として附したと認められる会社名商品名等と同じ馬名で、かつ、競走馬の馬名としてふさわしくないもの
→つまりラウンダーズはNGということです。ラウンダーズはオーストラリアでつけてみようかな。ROUNDRSって、英語だと響きの良い馬名ですね。

それから、馬主登録の取り消しについては念入りに記載されていますが、個人的にまたは新しく馬主になる方が気になるのはやはり以下の文章ではないでしょうか。

⑫正当な理由がなく、馬主登録を受けた日から1年以内に協会の登録を受けている馬を所有しないとき又は所有しなくなってから1年以上経過したとき。

僕の場合は、令和3年8月3日から1年以内に馬を所有しなければ、馬主登録を取り消しされるということです。正当な理由がどこまでの範囲なのか不明ですが、買いたかったけど買いたい馬が買えなかったというのは認められないかもしれません。これは競走馬を所有しなければというプレッシャーになりますし、馬主特典(馬主席や見栄など)だけを享受して競馬界に貢献しないナンチャッテ馬主に対しての警告ということでしょうか。馬を所有するために馬主になったのですから、当然と言えば当然の基準だと思います。

最後に馬主登録証の再交付について書いてあります。500円で再交付をしてくれるみたいなので、僕のようにコンビニの証明写真機で撮影した写真を使ってしまい後悔している人は、カメラマンに格好よく撮ってもらったものに差し替えることもできますよ。

馬主登録証が手元に届いたことで、馬を買うことが現実味を帯びてきました。今すぐにでも馬を購入して走らせることができる。そう思うと胸の鼓動が高まると共に、背筋がゾクっとする気もします。お子さんがいらっしゃる男性は分かるかもしれませんが、「妊娠したよ」と言われたときの感覚に近いかもしれません。楽しみな気持ちの裏側には、責任という重しが背中に乗せられたような不安もちょっぴり生まれるのが正直なところです。僕はサラブレッドという生き物を家族に迎え入れられるほどの人間なのでしょうか。

いろいろと調べた結果、現時点における僕の考えは、サラブレッドオークションと繁殖牝馬セールの両にらみです。サラブレッドオークションに目当ての馬が出品されてきたら購入して走らせ、その後、繫殖牝馬に上げる。もしくは繁殖牝馬セールに行って、ダービー馬を誕生させられるような牝馬に出会えたら購入し、友人の牧場に預かってもらう。種付けをして、生まれた仔は自分で走らせるか、セリで買ってもらう。どちらと決めつけるのではなく、天秤にかけながら、良い牝馬が自分の手の届くところに現れたら全力で掴もうと考えています。

(次回へ続く)

あなたにおすすめの記事