近年、地方競馬 IPATの導入、そして2006年に創設された「ダービーウィーク」の展開により、地方競馬の「ダービー」の知名度は飛躍的に向上したと思います。
しかし、地方競馬各地区においては、それぞれ「ダービー」だけではなく、三冠レースが整備されています。「ダービー」がない地区もありますが、「ダービー」がない地区にも三冠レースが整備されているのです。
ちなみに、南関東には牝馬限定の牝馬三冠がありますが、その他の地区には牝馬限定三冠というものは存在しません。ですから南関以外の地区の牝馬は、牡馬を相手に自地区の三冠を戦っていくということになっていましたが、2010年に世代別牝馬重賞シリーズ「グランダムジャパン」が創設されたことにより、3歳の春シーズン、各地区の3歳牝馬は牡馬相手に自地区のクラシックに挑むのか、あるいは「グランダムジャパン」に参戦し各地を転戦してシリーズチャンピオンを目指すのか、選択の幅が広がりました。
また、地方所属の牡馬についてもクラシックへ挑む道のりは一つではありません。中央と同様に様々なステップレースやトライアルレースなどを経て、三冠レースへ挑んでいくことになります。
そこで今回は、地方競馬の3歳クラシック路線について、地区ごとにご紹介していきたいと思います。第1回となる今回は、南関牡馬にスポットをあてていきます。
南関東牡馬
南関東の牡馬クラシック路線は、現在の三冠が確立されるまでに何度かの変更がありました。
現在の羽田盃 (1956-)、東京ダービー(1955-)に加えて、 1964年に東京王冠賞が作られたことで「三冠レース」が創設されました。
かつては東京王冠賞のみ秋に行われていましたが、1996年に東京王冠賞が春へ移行されたことで、三冠全てを春に行うスタイルとなりました。ちなみに、それぞれの距離についても、これまで何度か変更がされています。
1999年にダートグレード競走であるジャパンダートダービーが創設され、2001年に東京王冠賞が廃止となったことで、2002年から羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートダービーという現在の南関東三冠が確立されました。
これまで南関東三冠を制した馬は7頭で、「女傑」ロジータや、 JRAのフェブラリーSでも 2着に入ったトーシンブリザードなどがいます。ロジータは唯一の牝馬による三冠を達成した馬です。また、トーシンブリザードについては東京王冠賞、ジャパンダートダービー共制しており、四冠馬とも言われています。
南関東三冠の達成においてはやはりJRAの強豪が出走するダートグレードのジャパンダートダービーが最難関であり、2003年ナイキアディライト、2011年クラーベセクレタ(牝馬)、2014年ハッピースプリントが春二冠を制しながらも三冠を逃しています。
次に、現在の南関東牡馬の3歳クラシック路線を見てみたいと思います。
南関東牡馬3歳クラシック路線
※開催日程は2016年度を参考にしています。
南関東牡馬のクラシック路線の王道は、京浜盃(1978-)をステップに三冠レースに挑むローテーションになるかと思います。
というのも、南関牡馬の三冠レースは全て大井コースで行われており、京浜盃が初めて大井で行われる3歳重賞となっているからです。実際に、三冠好走馬の多くは京浜盃出走馬という傾向もあります。
年明けのニューイヤーカップの1.2着馬や、準重賞である雲取賞の1~3着馬という、京浜盃のステップレースで優先出走権を得た馬、そして2歳時に実績を上げてきた馬、さらには、ホッカイドウ競馬からの有力転入馬などが一堂に会する……そんなレースが京浜盃であり、その年の南関牡馬クラシックを占う上で最重要とも言えるレースとなります。
とは言え、京浜盃自体は圧倒的に人気馬、ホッカイドウ競馬出身馬が強いレースであり、順当な決着が多くなっているようです。
そして迎える一冠目、羽田盃 (1956-)ですが、こちらも京浜盃と同じく上位人気、ホッカイドウ競馬出身馬が圧倒的に強いレースです。優先出走権は京浜盃の1~3 着馬に加え、クラウンカップの1.2着馬にも与えられていますが、過去 10年の羽田盃で3着以内に好走した馬の約 2/3が京浜盃組であり、さらにホッカイドウ競馬出身馬は毎年連対を果たしています。
羽田盃の主な勝ち馬にはロジータ、トーシンブリザード、ナイキアディライト、クラーベセクレタ、ハッピースプリントなどが挙げられます。
二冠目となる東京ダービー(1955-)は羽田盃の上位5着までと、東京湾カップの1.2着馬、東京ダービートライアルの勝ち馬に優先出走権が与えられています。
東京ダービーでもホッカイドウ競馬出身馬の好走は目立ちますが、羽田盃に出走していない組や人気薄の台頭もよく見られます。ただ、東京ダービートライアル組は不振な成績が続いているようです。
また、 JRAのダート路線が少ないこともあり、東京ダービーを狙って転入してくる馬も見られ、2016年はバルダッサーレが転入初戦で圧勝しています。
さらに東京ダービーで毎年注目されるのが、「大井の帝王」とも呼ばれる的場文男騎手。名手である的場騎手が、なぜか東京ダービーには縁がなく、35回騎乗してまだ未勝利ということです (2着は9回)。
東京ダービーの主な勝ち馬にはロジータ、ナイキアディライト、アジュディミツオー、シーチャリオット、マカニビスティー、クラーベセクレタ、ハッピースプリントなどがいます。
そして迎える三冠最終戦ジャパンダートダービー(1999-)ですが、ダートグレード競走であり、出走馬はバラエティに富みます。南関牡馬の優先出走権は羽田盃1着馬、東京ダービー1.2着馬に与えられており、 JRAから出走する強豪、さらには各地のダービーを制した馬たちも出走してくるので力の比較は難しいものとなりますが、さすがにJRA勢の優位は揺るがず、全18回の歴史でも地方馬が制したのはオリオンザサンクス、トーシンブリザード、フリオーソ、マグニフィカの4頭のみ (全て南関所属)となっており、南関所属で3着以内を目指すには前二冠に出走して上位に入っていることが求められます。
ジャパンダートダービーの勝ち馬にはゴールドアリュールやカネヒキリ、サクセスブロッケン、テスタマッタ、ノンコノユメなど、その後のGI戦線でも活躍した名馬が名を連ねます。
南関牡馬クラシックの注目ポイントとしては
- 京浜盃出走馬
- ホッカイドウ競馬出身馬
- 的場文男騎手の東京ダービー制覇なるか
を挙げておきたいと思います。
写真:Y.Noda