[ジャパンカップ]G1レース直前プレビュー

今週は秋競馬の大一番、ジャパンカップが行われます。
今年は外国馬4頭が参戦して、非常に楽しみなレースになりました。まずは今年新設された国際厩舎と外国馬の紹介、そして前哨戦である天皇賞秋についてお話していきたいと思います。

今後も継続的な外国馬の参戦が見込める!?
新設された国際厩舎に注目。

近年のジャパンカップは、外国馬の参戦が少ないのが問題視されていました。
その要因として、大きく6つの問題があったと個人的に考えています。

  1. 日程、レーススケジュール的な問題
  2. 検疫のために一度、千葉県白井市の競馬学校の厩舎に入り、その後東京競馬場に移るので競走馬の負担が大きい。
  3. 検疫の手続きが非常に煩雑
  4. ジャパンカップに出走する馬に帯同する馬を一緒に連れていきにくい
  5. 馬房が狭く、遠征した競走馬にとって負担である
  6. 日本の馬場が外国馬、特に欧州馬には合わない

ただし「6.日本の馬場が外国馬、特に欧州馬には合わない」に関しては走りやすい馬場を追求していったため仕方のない面があり、「1.日程、レーススケジュール的な問題」に関してはどうしても欧州競馬の日程上の問題があります。欧州の平地馬のシーズンが春から秋の始め辺りで、凱旋門賞を境に秋から冬は障害馬のシーズンになるため、第一線で戦ってきた馬たちは来年を見据えて休養に入ります。そして12月の始めに香港の国際競走が新設されるとそちらに欧州の有力馬が参戦するようになり、ジャパンカップへ参戦する外国馬が少なくなっていきました。そこで残る4つの問題点を解消するために建てられたのが、東京競馬場の国際厩舎と考えています。

きっかけは東京五輪の馬術競技だったという国際厩舎。来日する馬が滞在するために建てられた馬事公苑の馬房が外国人関係者に非常に好評だったため、JRAでも東京競馬場に同じ厩舎・馬房を建てることによって海外馬から参戦する馬の負担を減らせるのではないか、ということで今年の6月に6棟12馬房が完成しました。それを海外の競馬関係者にアピールすることで、今年の4頭の参戦に繋がったのでしょう。空港から直接東京競馬場に入厩できるようになったので、以前より馬の負担が少なくなったのは間違いありません。

参戦する外国馬の紹介

オネスト レベルの高かったパリ大賞の勝ち馬

今年参戦する外国馬の4頭の中で中心になるのはオネストでしょう。
仏ダービーでは5着でしたが、その後のパリ大賞(G1)で勝利。このパリ大賞が非常に評価の高いレースで、2着のシムカミルはその後凱旋門賞の前哨戦のニエル賞勝ち馬です。さらに3着のエルボデゴンは仏ダービーで2着の実績があり、パリ大賞の後は豪国のコックスプレート(G1)で3着の成績。4着のエルダーエルデロフは後に英国のセントレジャー(G1)で勝利と負かした馬たちが後に結果を残しています。

オネスト自身も愛チャンピオンSでは勝ったルクセンブルクとの叩き合いに敗れたものの2着。凱旋門賞では10着と敗れてしまいましたが、2022年の中距離戦線でトップクラスの1頭であることは間違いありません。日本の馬場と瞬発力勝負になってどうか、という面はありますが、長くいい脚を使えるので天皇賞秋の様な大逃げ展開を追いかけて、長くいい脚を使いつつ底力勝負に持ち込めれば…というところでしょうか。

グランドグローリー 昨年のJC5着、今年の凱旋門賞5着

昨年のJC5着のグランドグローリーは、今年に入ってプリンスオブウェールズSで3着と健闘。同レースでシャフリヤールが4着だったことを考えると地力は高いですし、凱旋門賞5着は日本馬と比べると力上位の結果です。あとは日本の馬場と展開に対応できるかどうかが鍵になりますが、昨年ジャパンカップでは2コーナーで不利がありながらも直線でしぶとく伸びて5着と健闘しています。3着のシャフリヤールから0秒3差、上り3ハロンも34秒2を出せたことを考えると日本の馬場の適性も十分と言えるでしょう。

凱旋門賞などを見る限り、昨年の能力を維持できていると考えられるので、シャフリヤールとの比較で考えるなら日本馬を加えても相対的に力上位。昨年の5着を上回る可能性も十分あると言えるでしょう。あとは凱旋門賞後の疲労がどうか、という点に注意したいところです。

シムカミル 伸びしろ十分の3歳馬

シムカミルは仏国の3歳馬。春のクラシックには間に合いませんでしたが、G3を勝って挑んだパリ大賞がオネストの2着と好走しています。続く凱旋門賞の前哨戦であるニエル賞では勝利をあげ、急成長を見せている3歳馬です。ニエル賞では日本からドウデュースが参戦していましたが、シムカミルが先に抜け出して押し切りました。陣営はニエル賞後から、凱旋門賞には参戦せずにジャパンカップへの参戦を公表していたそうなので、陣営の本気度が窺えます。馬場や展開が合うかどうか、という疑問はありますが、勢いのある3歳馬ですし、ドウデュースを負かした点を考慮すれば激走してもおかしくないと言えるでしょう。

テュネス ドイツの3歳馬

テュネスはドイツの3歳馬です。戦績は6戦5勝2着1回と、ここまでほぼ完璧な成績を残しています。

圧巻だったのは前走のバイエルン大賞(G1)。スタート後からハナに立つとそのまま後続に並ばせずに最後は2着に10馬身差をつけて勝利しました。逃げての勝利というよりもマイペースで進んでいたら後続がちぎれたというレースで力の違いを見せました。ただ、これまでのレースは重馬場や不良馬場でのレースばかり。日本の速い馬場に対応できるかが、鍵になりそうです。

天皇賞・秋を振り返る

JCの前哨戦として、天皇賞・秋を振り返ります。

スタートからパンサラッサが先手を取って、前半1000Mを57秒4で通過。2番手以降に大きな差をつけて逃げましたが、当時の東京の馬場は通常よりも2秒は速い時計が出るんじゃないかという超高速馬場です。逃げたパンサラッサが超Hペースで逃げたわけではありませんでした。加えて当時はとにかく速い上りを出した馬が直線で差し切るという展開がほとんど。天皇賞秋のプレビューでも書きましたが、天皇賞秋までの東京芝2000Mは上り3ハロン最速を出した馬が8戦8勝と圧倒的な成績を残していたのもあってか、2番手以降が控えたために逃げたパンサラッサと大きな差ができたので大逃げの形になったという展開と言えます。

つまり、2番手以降はスローからのヨーイドンの形になっての上り3ハロン勝負。

勝ったイクイノックスは上り3ハロン32秒7を出して差し切っています。
逃げたパンサラッサが1馬身差の2着。内目から伸びたダノンベルーガは上り3ハロン32秒8を出したものの3着という結果でした。

逃げたパンサラッサ以外は上り3ハロンが速かった順に上位になっているので、上り3ハロンの速さがそのまま着順に繋がってると言えるレースです。JCではユニコーンライオンが逃げるだろうと思いますが、天皇賞・秋と同様に2番手以降はスローからのヨーイドンになる可能性が高いので、JCで最も参考になるレースと言えるでしょう。

天皇賞秋3着のダノンベルーガはJCに出走するメンバーの中では一番の上りの速さを見せました。JCでもその切れに期待したいところですが、天皇賞・秋で激走した分の疲労が気になります。

また、皐月賞、ダービー、天皇賞・秋と、これまあでなかなか勝ち切れないところがあるのも気になりますが、東京芝2400Mの持ちタイムはメンバー1位(ダービー時)。引き続き高速馬場なら勝ち負けを期待できるでしょう。

天皇賞秋5着のシャフリヤールは明らかに休み明けという感じの競馬でしたが、それでも3着のダノンベルーガからは0秒4差。目標はJCの馬ですから、前哨戦としてはまずまずの結果でしょう。叩いた上積みが大きいですし、G1では前哨戦で敗れるも、本番ではきっちり勝ち切るパターンの多い藤原厩舎の所属。C・デムーロ騎手に乗り替わってさらに上積みも見込めるならより期待できそうです。


昨年コントレイルが勝ったJCから1年、いろいろな面が大きく移り変わった1年でしたが、今年は国内外から有力馬が集まって、JCが本来目指した日本馬VS海外馬という構図ができたように思います。

外国厩舎の新設だけではなく、海外の関係者へのアピールもあってこそのJC参戦だったと思うので、厩舎を建てて終わりというわけではなく、今後もアピールを続けて継続的な海外馬の参戦を願いたいです。そのうえで国内外の有力馬が鎬を削る好勝負を期待したいですね。

レースを楽しむうえでこの記事が参考になれば幸いです。

写真:かぼす

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