コラム・エッセイ 2分20秒3の衝撃 - カランダガンが刻んだ未来への一撃 2025年12月5日 茜色に染まる東京競馬場。府中では見慣れぬ、けれど海の向こうで何度も見てきた、深い緑と燃えるような赤の勝負服が躍動する。 世界が憧れる大舞台を幾度も制してきた、アガ・カーン殿下のあの勝負服が、いま日本の直線を駆け抜けている。 ──カランダガン。 その名が日本を駆けていることに、胸が熱くなる。カルティエ賞年度代表馬に選ばれ... norauma
「名馬」を語る 小倉の空の下 - アサクサゲンキの長い旅路の終わりに寄せて 2025年12月3日 スタンドの呼吸が、ハッと詰まる。無事に飛越を終えると、溜めていた息がふうとほどけていく。 障害競走を前にするとき、スタンドにはいつもよりも少しだけ、「祈り」の成分が多く満ちるように思う。ただ走るだけでも大変なのに、幾つものハードルを飛び越えなければならない。平地以上に危険を伴うその舞台に身を投じる馬たちへ──ファンはど... norauma
「名馬」を語る 大魔神の愛が生み出した偉大な馬。シュヴァルグランが勝利した2017年のジャパンカップを振り返る 2025年11月30日 ■馬主という大きな存在 競馬を予想する際に、馬主を予想の根拠とする手法はあまり聞いたことがない。筆者も馬柱で馬主の名前には目を通すが、それを予想にまで絡めるかというと、そうでもない。しかし、馬主といえば競馬において非常に重要な存在である。 馬主は競走馬のオーナーであり、馬の購入、育成、調教師や厩舎への預託、レースの出走... ムラマシ
「名馬」を語る タップ・ダンス・ダンス。最高の鞍上を迎えて道を切り拓いた名馬、タップダンスシチー 2025年11月29日 ■パドックで「タップダンス」を踊るサラブレッド 音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることがわかるかい? 踊るんだ。踊り続けるんだ。なぜ踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなことを考えだしたら足が停まる。一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう... 高橋薫
「名勝負」を語る 輝きの証明。三冠馬コントレイルが見せた奇跡のような走り - 2021年・ジャパンカップ 2025年11月29日 飛行機雲がひとすじ、空に伸びていく。眩い夕陽が、影を長く引き伸ばす。秋も深まった府中の直線は、どこか哀愁と別れを予感させる。 2021年、ジャパンカップ。正直なところ、この日を迎えるにあたり、私はほんの少し、コントレイルの強さを疑っていた。 三冠馬は、特別な存在であってほしい。圧倒的な強さ。王者の風格。そんな姿を私は求... norauma
「名馬」を語る 黄金旅程の最後の焔 - マイネルヴァッサー 2025年11月29日 いつからだろう。 出馬表に彼の名を見る度に、胸の奥がかすかにざわめくようになったのは。 それはレース前の昂りでも、高まる緊張でもない。もっと静かで、もっと深い郷愁にも似た感情――「ひとつの血が、まだここに生きている」という実感だった。 ひんやりとした風が頬を撫でる晩秋のパドック、小柄な一頭の競走馬が淡々と歩いている。年... norauma
「名勝負」を語る 「負けるという選択肢のない」ラストラン! イクイノックスの2023年ジャパンカップを振り返る 2025年11月27日 イクイノックスのラストランとなった第43回ジャパンカップ。圧倒的な強さでライバルたちを退け、歴史に刻まれる完勝劇を演じた。 2023年11月26日。府中競馬場の年間最終レースとなる12レース。芝2400mに集ったのは、リバティアイランド、ドウデュース、タイトルホルダー、スターズオンアース…名だたるGⅠ馬たちである。しか... 夏目 伊知郎
「名勝負」を語る 生涯連対率100%のダイワスカーレットが魅せたベストレース/2007年エリザベス女王杯 2025年11月15日 ■生涯連対率100%の「重み」 競馬という舞台に置いて、生涯連対率100%、つまり3着以下が無いという完璧な蹄跡は、勝利の記録以上に「重み」を持つ。昭和の高度成長期真っ只中の時期に登場したシンザンは、19戦19連対という生涯成績で五冠馬となり、競馬史にその名を残している。そして、シンザン引退から41年後、生涯連対率10... 夏目 伊知郎
「名馬」を語る 約束の風を、もう一度。パフォーマプロミスの勇姿を綴る 2025年11月9日 11月、アルゼンチン共和国杯の季節になると、思い出す馬がいる。 パフォーマプロミス。彼の名前を思い出すたび、どこか胸の奥が疼く。競馬を見続けていると、不思議とそういう馬が、いくつか心に棲みついていく。 芯が強くて、頑張り屋で、競走生活を終えるとあっという間にこの世を旅立っていった黄金色の駿馬。 彼は最初、派手な存在では... norauma
「名馬」を語る ブエナビスタ - 一番人気に愛され、現役最強を名乗り続けた生真面目な才女 2025年11月6日 ■伝説の少女 2008年10月26日、京都競馬場で伝説となるレースが行われた。 そぼ降る雨の中、京都5レースの新馬戦芝1800mが幕を開ける。例年この時期の芝1800mの新馬戦は、将来的にクラシック出走を意識できる評判の新馬が集まってくる。この年もまた、豪華なメンバーが名前を連ねていた。1番人気は安藤勝己騎手と4枠4番... 高橋薫