「名勝負」を語る 響き渡った「みんな頑張れ頑張れー!」の実況。カネヒキリが勝利した2008年東京大賞典を振り返る 2025年12月29日 ■2008年 リーマンショックに揺れた社会 2008年(平成20年)という年を思い出すとき、最初に思い浮かぶのは、リーマンショックに端を発した金融不安である。私事になるが、その年私は大学を卒業し、新卒で就職したものの会社が合わず、なんと1か月で退職。なんとか競馬で食いつなぎ(今思うと恐ろしい)、7月に再就職をしたものの... ムラマシ
「名馬」を語る 誇り高き岩手の皇帝 - 漆黒の雄・トーホウエンペラー 2025年12月29日 漆黒の馬体が凍てついた地面を力強く蹴る。砂塵が舞いあがり、蹄音が響く。 厳冬を乗り越えた四肢は、しなやかで逞しく、美しい。ひとつ、またひとつと確かな軌跡を刻んでいく。 東北の雄、トーホウエンペラー。 幾度の冬を超え、皇帝としての才を開花させた。そして地方に在りながら、中央の強豪と渡り合い、その名が示すように、砂の頂へと... norauma
競馬を学ぶ 有馬記念、もうひとつのラストラン物語/スマートレイアーとアエロリット 2025年12月28日 「有馬記念は名馬のラストランを見送るレースである」。 その言葉には、「別れ」への一抹の寂しさと、次のステージに旅立つ「夢」が宿る。 長い歳月をかけて磨かれた血が、冬の中山に最後の蹄跡を刻む瞬間。私たちは勝敗だけでなく、名馬が今まで積み重ねてきた勝利の記憶までも見届けようと、静かに息を呑む。 ラストランとは、終わりではな... 夏目 伊知郎
「名馬」を語る グランプリこそ彼女の舞台 - 芦毛のヒロイン・クロノジェネシス 2025年12月28日 ぼくは、アスリートと呼ばれる人たちとは無縁の生活を送ってきた。幼稚園児のころから運動は不得意だったし、小学生になると体育の時間は苦痛以外の何物でもなかった。クラスの中で一握りの「運動が得意な児童たち」の華やかな活躍を冷ややかに眺めている、ノリの悪いその他大勢。そんなクラスのスターたちに対して憧れの気持ちを持っていなかっ... 高橋薫
「名馬」を語る 兄よ、弟よ - ニュービギニングが放ったひとつの輝き 2025年12月27日 私には、6つ年上の兄がいる。 兄は幼少期からずっと賢くて、私とは違う速度で物事を理解していた。 兄の背を追って地元の中学、高校に進学した私に、先生方は決まって兄の話をした。 兄は博士号を取得し、文筆の道に進んだ。 毎日大量の本を読み、思索に沈みながら紡いだ言葉は、やがて賞や書籍という形になった。兄は今、自らの名でキャリ... norauma
「名馬」を語る [有馬記念]イクイノックスという「天才」が教えてくれたこと 2025年12月26日 1.撰ばれてあることの恍惚と不安と二つわれにあり 撰ばれてあることの恍惚と不安と二つわれにあり ヴェルレエヌ 死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目が織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていよう... 縁記台
「名勝負」を語る ドウデュースと武豊、最強buddyへの序章 - 2021年・朝日杯フューチュリティステークス 2025年12月21日 ■2021年秋の「2歳牡馬勢力図」は? 秋の深まりと共に、固まり始めるのが2歳馬たちの勢力図である。天皇賞(秋)の前後からジャパンカップにかけて、秋のGⅠシリーズが開催と並行した、2歳馬の登竜門レースが行われる。アルテミスステークス、京王杯2歳ステークス、ファンタジーステークス、デイリー杯2歳ステークス、京都2歳ステー... 夏目 伊知郎
「名勝負」を語る 風立ちぬ、そして風は止む - ルヴァンスレーヴの物語/2017年・全日本2歳優駿 2025年12月17日 ■ダート三冠体系の「序章」 全日本2歳優駿 フォーエバーヤングが日本競馬の夢を叶えた、BCクラッシック制覇。日本調教馬がダート競馬の頂点を極めたことで、ダート主戦場にする馬たちにとっては活気づくニュースとなった。 2024年、中央競馬と地方競馬が連携してスタートした「ダート三冠体系」は、芝中心だった日本競馬においてダー... 夏目 伊知郎
「名馬」を語る 異国からやってきた、スピード自慢の可憐な少女 - ヤマニンパラダイス 2025年12月14日 まだ私が小さい頃、土日は父に連れられて祖父母のところへ遊びに行っていた。 競馬好きの祖父のために父が場外馬券場へ馬券を買いに行き、その間に彼らの家で私は帰りを待つというのが毎週末のルーティン。その最中、よく私は一口馬主をやっていた祖父の出資馬のビデオテープを手に取って眺めていた。 当時社台レースホースの会員であった祖父... 小早川 涼風
「名馬」を語る 二階級制覇の名馬、モーリス〜グラスワンダー、スクリーンヒーローから受け継ぐ、その血の運命〜 2025年12月13日 1.「クレオパトラの鼻」 「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、世界の歴史も変わっていたであろう」とは、哲学者ブレーズ・パスカルの言。歴史の転換は些細な事象によって起こるものだ、という警句だが、小説家の芥川龍之介はこの説に対して次のような反論を行っている。 クレオパトラの鼻が曲っていたとすれば、世界の歴史はその為に... 縁記台