[連載・馬主は語る]定款に夢を入れる(シーズン1-4)

実はもうひとつ、地方競馬の馬主申請書を提出する前にすべき仕事がありました。僕は今回、個人名義ではなく、会社名義で馬を走らせようと思っており、そのためには法人の定款(ていかん)を変更する必要があったのです。

定款とは、会社の基本情報や株数、株式総会などについて記載された書類です。その中に会社の活動目的が箇条書きになっています。それらの目的のひとつに、「競走馬の所有及び競走への出走」という文言がなければ、法人名義で馬主資格が取れないという決まりがあるのです。分かりやすく言うと、活動目的に馬を所有して走らせることが明記されていない法人は馬主になれませんということ。まあ、当たり前と言えば当たり前の話です。

たとえば、僕の会社は教育事業がメインなので、1番目にそう記されています。それだけではなく、出版や有料職業紹介、コンサルティング事業、駐車場の管理など、やりもしない事業がこれでもかというぐらい盛り込まれています。というのも、定款は会社を設立する際に作成するものですが、当初は自分の会社がどういう方向に成長するのかなんて分かりませんから、とりあえず思いつくところを入れておくわけです。

今思い返しても、なぜあのとき、法人として馬主になることを1ミリも想像していなかったのか不思議でなりません。趣味はあくまでも趣味として切り分けようと考えていたのか、それとも法人として競走馬を所有することができると知らなかったのか。なぜ夢の1つであった馬主事業を定款の目的に入れさえしなかったのか、今でも分かりません。とにかく、会社の目的に入っていない以上、お金(3万円)を払って手間をかけて書類を作成し、法務局に足を運んで、定款を変更しなければならなくなったのです。

定款の目的に、「競走馬の所有及び競走への出走」と入れつつ、ついでにもうひとつ、いつかの日のために「競走馬の生産及び販売」という一文も加えました。またそのときになって、なぜあのとき…と後悔しないよう、夢は惜しみなく定款の目的に入れておくことにしました。夢は書けば叶うではありませんが、夢は定款に入れると叶うかもしれません。

定款の変更はつつがなく完了し、その定款を含めて馬主の申請書類を提出することに。審査の期間は長くて半年ほどかかるそうですが、2、3か月で通ったというケースも聞いており、まあ気を長く、首を長くして待つしかありませんね。

それにしても、半年もかけて、審査とは何をするのでしょうか。書類上の審査は分かりますが、噂によると聞き取り調査もあるということ。公正競馬を保っていくためには、素性の怪しい人を馬主にするわけにはいきませんからね。胸に手を当ててみても、巨悪を働いた記憶はありませんし、ほとんど裏表のない人間だと思っているのですが、叩けばいくらでもホコリぐらい出そうです。清廉潔白な人間かと問われると土下座して謝るしかない僕ですから、身辺調査なんて言われると年甲斐もなくソワソワしてしまいます(笑)。大人になると、攻められると困る角度というものがあるのです。昔の彼女にヒアリングされたら、僕が借金をして馬券を買っていたことが明るみに出てしまうかもしれません。エッチな動画の閲覧履歴が暴かれたり、仕事中にうたた寝していることがバレてしまうかもしれないのです。ああ恐ろしい。

心配してばかりでも仕方ないので、地方競馬の馬主資格が発行されるのを待つ間、どのようにして馬を手に入れ、どこで走らせるのかを具体的に検討することにしました。サラブレッドを買うにも数多くの場所や方法があり、またどこの競馬場で走らせるか、どの厩舎に預けるかも決定したわけではありません。せっかくなので、この審査期間中に僕もいろいろと審査してみようと思います。

まずは「どのようにして競走馬を買うのか」について考えていきましょう。

(次回へ続く)

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