![[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]ドコフクカゼのレポジトリー検査(シーズン2-20)](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/06/S__28139529_0.jpg)
請求書がまとめて届きました。エクワインレーシングとNO,9ホーストレーニングメソド、そして千葉県馬主会からのそれです。請求書が入っていると分かると、僕はしばらく放置しておくのですが(笑)、さすがに今月は諦めるような気持ちでひとつひとつ、その場で封を切りました。逃げても隠れても支払う額は変わりません。
まず初めてとなる千葉県馬主会からの封筒を開けてみると、「入会金・年会費の入金のお願い」と書かれています。福ちゃんも船橋競馬場で走らせることになれば、ルリモハリモとドコフクカゼの2頭とも僕の会社名義で走らせる方がややこしくないということで、入会希望の手続きをした次第です。入会金が10万円で年会費が5万円。決して安い金額ではありませんが、ドコフクカゼが船橋競馬で能力試験に受かった場合、100万円の奨励金がもらえますし、その後も様々な手当てが馬主会から出るようなので、この機会に入会しておかないわけにはいきません。
続いて、NO,9ホーストレーニングメソドからの請求書です。現在は張田厩舎の預託費をNO,9ホーストレーニングメソド宛に請求してもらっており、それを折半して半額の請求書が僕に送られてきます。10月分のルリモハリモの預託費として約17万円。ということは、治療費などがなければ、約35万円/月(税込み)ぐらいの預託料ということです。
最後は、エクワインレーシングの角2封筒を恐る恐る開けました。50万円の大台を超えるかどうかドキドキしながら開封すると、今月は55万円!ここまで来ると、金銭感覚が狂ってきて、40万円台だろうが50万円を超えようが、どっちでも良くなります(笑)。今月は何にお金がかかったのかな?と不思議に思って明細を見てみると、基本預託料の他にインフルエンザワクチンが4000円、冬期馬着代が1万2000円、装蹄代に3300円、最も大きいのがその他(治療費)6万5582円となっています。
あらら、どこか怪我をしたのかな、坂路を上がっている映像で左肢の管だけに白いバンテージを巻いていたので、擦れて外傷になったかなと心配していたところでした。もう一枚の診療費の明細を見ると、「左トモ管外側外傷」と記されており、鎮静が2200円、ステープラー3針で5500円、筋肉注射で2420円と明記されています。至って普通だなと思い、他に何にそんなにお金がかかったのか目を凝らすと、レポジトリー検査(内視鏡)が1万円、レポジトリー検査(レントゲン)が4万円となっています。なるほど、現在の喉や肢の骨の状態を把握するためにレポジトリー検査をしてくれたのですね。それであれば、納得の金額です。
ということは、その結果が出ているかもと思い、もう一枚めくってみると、そこには報告書が添付されていました。福ちゃんの姉ルリモハリモはこのレポジトリー検査で膝の骨片が飛んでいるのとボーンシストの兆候が見つかり、セレクションセールに出場できたにもかかわらず主取りになってしまった過去があります。福ちゃんをセリに出すわけではありませんが、喉や脚元に致命的な病気や欠陥が見つかれば、全てが無に帰してしまう可能性も十分にあるのです。最悪、このまま碧雲牧場に戻って、繁殖牝馬になる道は残されていますが、せっかくここまで来た以上、できれば競馬場で皆さんに走る姿を見てもらいたいものです。

恐るおそる報告書を見ました。左前球節を4枚、左後球節を4枚、左後膝を4枚、右前球節を4枚、右後球節を4枚、右後膝を4枚、左腕節を3枚、左飛節を3枚、右腕節を3枚、右飛節を3枚、あらゆる部位をあらゆる角度から、計36枚のレントゲン写真を撮ってくれたようです。それに加えて、内視鏡検査で喉も調べてくれています。なぜ喉を調べるかというと、競走馬にとって喉は意外と重要な部位であり、喉の機能が悪いと呼吸がしづらく、肺に十分な酸素を取り込めなくなるからです。
かつてシモジュウ(大狩部牧場の下村社長)にインタビューして、喉の疾患について詳しく教えてもらったことがあります。
下村獣医師
グレード1は正常、問題なく開いたり閉じたりができる状態です。グレード2は開閉は問題ないのですが、右側と左側の披裂軟骨の動きに若干差がでる状態です。たとえば、右側が開いたあとに左側が開いたりと、わずかに時間差が生じてしまう。グレード3になると、開閉するタイミングがずれるのと、完全な開閉ができないことや、開閉後の静止状態でも左側が少し閉じているように見えます。グレード4になると、ほとんど披裂軟骨が動かなくなります。ここまでくると、息を吸いたいときに空気が十分に入ってきづらくなります。馬は口で呼吸ができませんので、喉が閉じてしまっていると、負荷を掛けて運動したときに、酸素が全身に行き渡らず苦しいはずです。(「馬体は語る」より)
ドコフクカゼの咽頭機能は、グレードⅠで正常、「披裂軟骨の動きがすべて左右同調し、左右対称で、完全な披裂軟骨の外転が可能で維持されうる」と報告されていました。ひと安心です。福ちゃんに苦しい思いをさせたくありません。
その他コメント欄に、「今回の検査において、購買の妨げになる、あるいは競走成績に影響を及ぼす疾患はありませんでした」と書いてありました。実にシンプルというか素っ気ない報告ですが、何も心配することはありません、実に健康な身体ですということなのでしょう。これ以上に嬉しい知らせはありません。
福ちゃんはセリに出なかったので、レポジトリー検査をするきっかけがなく、身体の中までは分からないままここまで来ました。調教が強まるにつれて、どこかが痛くなったりしてあとから発覚するのは嫌だなと思っていました。それでも検査をしてわざわざ欠陥を見つけるのもどうかと思い、見て見ぬふりをしていたのです。お金は多少かかりましたが、今回の検査で問題ないことが分かって良かったです。思い切り鍛えてもらって、心置きなく競走馬を目指すことができます。

最後にもう一枚、馬体写真付きのレポートを読みました。立ち写真はエクワインレーシングのHPでいつも見ているので新鮮味はありませんが、コメントは馬主にしか送られませんので驚きもあります。
「坂路18-18。10月30日に本場に移動し、坂路調教を開始しています。坂路調教を開始してから、気の悪さが見られるようになり、全体的にソワソワと落ち着かない様子が増えてきています。環境の変化に弱いところがあるので、今後は丁寧に経験を積ませながら、精神面の安定を図っていきます。坂路での動きじたいは良く、しっかりと走ることができています。現在は2頭での併せ馬を中心に行っていますが、他馬を過度に気にしている様子はありません。馬体重は468kgです」
と記されています。11月20日付となっていますが、おそらく僕がエクワインレーシングを訪れた週(11月10日~15日)に書かれたものでしょう。あの頃はまだ坂路調教がスタートしたばかりで、たしかにゲートに入るのを嫌ってみたり、ソワソワして落ち着かない面を覗かせていたかもしれません。
それはそうですよね。いきなり坂道を登らされて、隣の馬と競走させられるのですから驚いたと思います。福ちゃんは賢いからこそ、周りが良く見えていますし、この後どうなるのだろうと考えて心配してしまうのです。それは生存本能のようなものであり、逆に言うと、納得して慣れていけば大丈夫なのです。
実際にその後、11月19日には16秒台で坂路を3頭併せで登っていますので、ある程度は変化にも慣れてきたと考えて良いはずです。そうでなければ、翌週にハロン2秒も速い時計で坂路を登らせないでしょう。そもそも、本場に来て坂路調教を開始してから、わずか2週間後に坂路3ハロンを16.7-16.1-16.1の時計で登ってくるなんて、普通の馬であれば難しいのではないでしょうか。
エクワインレーシングに在籍している1歳馬たちの中でも16秒台の時計で上がっている組はまだ少ない中、つい最近、入塾してきた福ちゃんがいきなり上位クラスに入って、勉強について行っている感じです。レポートや坂路の映像からだけでも、ドコフクカゼの才能の片りんと心理的葛藤が伝わってきて、遠くから娘を見守る父親のように、大きな期待と心配を同時に抱えてしまいます。
(次回へ続く→)
![[重賞回顧]幸運は名手と共にやってくる~2026年・安田記念~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/06/202606081-300x200.jpeg)