天皇賞・秋。それは数々の名勝負と記憶をうみだしてきた、伝統の一戦でもある。 皇帝が悔し涙にくれ、芦毛の馬は走らないという定説を打ち砕いた2頭が熱戦を繰り広げ、復活を賭した白いシャドーロールが馬群に沈み、女帝が牡馬を一蹴し、音速の貴公子がスピードの向こう側へと駆け抜けていく──。 府中の2000mには魔物が住むとまで言わ...
小早川 涼風
サイレンススズカを愛してやまない一般男性。ペンネームは先頭を涼し気に走り続ける彼の姿と名前から。
小早川 涼風の記事一覧
「……2億4000万円ございませんか! 落札価格、2億3000万円でございます」 時は2013年セレクトセール。税込みにして2億4150万円。 母マルペンサ・父ディープインパクトの鹿毛の牡馬が、超高額と言っていい価格で、「サトノ」の冠名を持つ里見治氏に落札された。 2年後、無事に競走馬としてデビューを果たすことになる彼...
岩手県の中心地、盛岡。 競馬ファンにとっては、盛岡競馬場がある場所として有名なスポットであるが、それだけではなく「チャグチャグ馬コ」という、馬に色とりどりの鈴や衣装を身に着け街中を行進する伝統行事も執り行われている、いわば「馬どころ」でもある。 そんな盛岡市から車を20分から30分走らせ、隣の滝沢市に向かうと、ひとつの...
今でこそクラシックにも外国産馬が出走でき、更には海外の外国馬も出走できるほどにその幅が広がった日本競馬。しかしかつてはクラシックや天皇賞には外国馬の出走が許されていなかった。どれだけ強くとも、外国馬はクラシックは未出走。NHKマイルCが「マル外ダービー」と呼ばれていた時代も、確かにあった。 時は進み、いまやマル外ダービ...
1996年。 半兄にオースミタイクーンを持ち、父に欧州の名種牡馬サドラーズウェルズ、アイルランド生まれの良血馬シンコウエルメスがデビュー戦で5着に敗れ、勝ち上がるための調教を積んでいたその時──事故は起きた。 重度の骨折だった。到底助かる見込みのないようなその怪我の重さは、診断した獣医に「残念ですが、かなり難しい状況で...
河崎五市氏×西園正都調教師。2人の名前を聞いて、競馬ファンならば出てくる馬が1頭か2頭ほどいるのではないだろうか。その2頭は、どちらも逃げ馬。 1頭は、マイルから中距離戦線で時に逃げ切り、時に後続に飲み込まれながらも、決してレースを作る役割だけは誰にも渡さなかった、シルポート。 ──そしてもう1頭。あの世界の短距離王、...
マチカネ軍団──。 かつて競馬界をにぎわせたその軍団は、今も多くの人の記憶に残る。 G1を制したフクキタル、G1勝ちこそないものの蜘蛛を食べて蕁麻疹になった(らしい)など古馬戦線を色んな意味で賑わせたタンホイザ、ダートで活躍したワラウカド、超良血のアレグロに皐月賞馬ハードバージの半弟、ダビスタで多くのプレイヤーを虜にし...
夏を感じる風物詩。きっとそれは花火であったり西瓜であったり、人によってそれぞれだろう。 かくいう私は、北海道で競馬が開催される季節になると「ああ夏が来た」と感じる。 そんな北海道開催の名物重賞のひとつ、クイーンS。中山競馬場時代から数多の名馬が参戦し、またここから飛躍する馬達も数多い牝馬限定戦だ。 ……ところが意外にも...
2002年、夏。北海道の牧場で、ある大物馬主と開業前の調教師が出会った。そしてその場で「開業してから俺が面倒を見てやる」と調教師と口約束を交わしたというその馬主は、約束通り自分の多くの馬達を師へ預託した。 ──そんな話から6年後の2008年、5月の京都競馬場。 その馬主、近藤利一氏が所有するアドマイヤジュピタが天皇賞春...
競馬における"1998年世代"。それはまるで、漫画やドラマに描かれる脚本のような世代である。 産まれてすぐに母を亡くし、乳母に育てられた良血馬。自身・鞍上、共に偉大過ぎる両親の宿命を背負う良血馬。 ──そんな2頭のスターに立ち向かっていった、ある1頭の芦毛がいた。 父はデビュー時には既に消息不明。母も無名の繁殖牝馬。周...
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語り継がれし「名馬」たち
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