[連載]イーストスタッドブログ・第6回 イーストスタッドの人気者、ホッコータルマエについて

ウマフリ読者のみなさま、こんにちは。
イーストスタッドのマネージャー佐古田直樹です。

4月に入り春の陽気が感じられる日も増えてきました。放牧地も新緑が芽吹いて微かに色付き始めたところです。種付けシーズンはいよいよピークに突入し、連日たくさんの牝馬が入場しています。久々に再会する生産牧場の方々と挨拶を交わし情報交換するのも、スタリオンならではの光景かもしれません。話題の中心は各スタリオンの混雑状況や人気種牡馬の動向ですが、今回はそんな人気種牡馬の一頭であるホッコータルマエをピックアップしてお話ししたいと思います。

手が掛からない種牡馬ホッコータルマエ

ホッコータルマエの種付け頭数は昨年イーストスタッドで最多となる159頭でしたが、今年も昨年並みのペースで種付けが進められています。今シーズンの交配申し込みは、昨年末に早々とBookfull(満口)になったことからも彼の人気がうかがえます。

毎年150頭以上の交配実績があるホッコータルマエは性欲も精力も旺盛で、シーズンを通してどんな牝馬に対してもスムーズな種付けをこなしてくれる優秀な種牡馬です。性欲が旺盛な馬でも、種付けが続いてくると疲れが出たり性欲が減衰したりするもので、そんな種牡馬の性欲を呼び起こし種付けに向かわせることも我々スタリオンスタッフの仕事です。ホッコータルマエのようにいつも種付けに前向きで手際良く牝馬に乗駕する種牡馬は、手が掛からず歓迎される存在です。

「手が掛からない」という表現は、日頃の管理と種付け時では捉え方が異なります。日頃の彼は誰に対しても友好的で、とても扱いやすく手が掛からない馬です。一方で種付けの時は、興奮で指示を振り払って突進するような我の強さがあり、誰でも簡単に扱えるとは言えません。ただし、ハンドリングさえ上手に出来ればあっという間に種付けを終えるところが、手が掛からない馬ということになります。

このように種付けで見せる我の強さはホッコータルマエの性格の特徴で、顕著に表れるのが種牡馬展示会での姿です。彼の展示は毎回落ち着きを欠いたものになりがちですが、今年も突進と旋回を繰り返す反省の多い展示となってしまいました。

彼も個別のお客様に展示する普段の馬見せでは、同じ展示場で滑らかに歩く周回ができますし、凛とした立ち姿を披露して「いい馬だねぇ」と評価を頂くほど魅力的な展示ができるのですが、大勢の観衆が集まる展示会では喧騒や前回お話ししたスピーカーからの音声が彼に興奮のスイッチを入れるようです。これに関しては改善の余地がありますから、手を掛けて慣れてもらうように促していこうと思います。

現在イーストスタッドで過ごすホッコータルマエは、定期的に繋用地が変わる国内シャトル種牡馬であり、優駿スタリオンステーションとイーストスタッドを2年おきに移動しています。今年の秋には再び優駿スタリオンステーションに移動して新冠町での生活が始まりますが、移動で興奮するようなこともなく、いつも慣れた様子で新生活を始めています。環境の変化に強いのは、現役時代に中央・地方問わず、GⅠ級競走10勝を挙げ、3年連続でドバイにも遠征した経験が生きているのかもしれません。環境が変わってもマイペースで過ごせる彼は、間違いなく手の掛からない馬ということになります。

今もなおファンから愛される名馬

ホッコータルマエは、ダート馬らしい頑丈そうな骨格に全身豊富な筋肉を備えていて、一年中黒光りする毛艶も見るものを惹きつけます。他の種牡馬と同じように、放牧管理だけでこの馬体が維持されているのですから、彼の資質としか言いようがありません。

そんな惚れ惚れするホッコータルマエの馬体ですが、種付けシーズン中には一段と筋肉量が増し輝きを放っています。これは毎日牝馬に乗賀する運動を繰り返して背中や尻の筋肉がより発達していくからです。また、種付けにより男性ホルモンの分泌が増して、筋肉増強や毛艶の良化がより一層進むことになります。彼のような人気種牡馬が輝いて見えるのは、実際にこういった馬体の変化が見られるからだと思います。

ホッコータルマエの種牡馬としての人気は種付け頭数が示す通りですが、一般見学期間に来られる見学者の方々にとっても1番人気の種牡馬になります。

イーストスタッドでは、広大なエリアに広がる放牧地を歩いて巡る見学となるので、1時間では見学時間が足りないと言われています。そのため、特定の放牧地でのんびりと過ごせる時間は少ないのですが、ホッコータルマエの放牧地の前にはいつも人集りができていて、彼の人気の高さを伺い知ることができます。

昨年はホッコータルマエがウマ娘に実装されて初めての見学期間でしたから、その影響で来場者が大幅に増加したものと思われます。明らかにウマ娘がきっかけと思われる若い方々や海外からの見学者も複数人来場されたことも驚きでした。ホッコータルマエという名が、競馬ファンの枠を超えて広がっていることはとてもうれしいことです。

これからも多くの人に愛される種牡馬であって欲しいと思います。

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