![[連載・片目のサラブレッド福ちゃんのPERFECT DAYS]牝馬が多く生まれるから名牝系になる(シーズン2-29)](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/08/70D20928-58FB-445F-B60E-FEBA331FC751-scaled.jpg)
東京に戻ってから3日後、ダートムーアが無事に出産したという報を受けました。予定調和というか、1泊2日という中途半端な気持ちで牧場に行って、奇跡の瞬間に立ち会えるなんて、そんなに甘くないのです。短くとも1週間ぐらいは寝泊まりをして、立ち会うまでは帰らない、という強い意志がなければダメみたいですね。そうなると、今の生活ではなかなか難しいので、最近はあきらめかけていて、出産してからすぐ行けば良いと考えています。いつの日か、福ちゃんが母になって出産するときこそは、1週間でも1か月でも付き添いたいと思います。福ちゃんには、放っておいてと鬱陶しがられるかもしれませんが。
電話の最後に「オスかメスかは聞きますか?」と毎年恒例の慈さんの意地悪が出ましたので(笑)、「楽しみは取っておいてください」と例年どおり僕は断りました。もしかすると、次に碧雲牧場に行けるのは1か月後になってしまうかもしれませんが、それまでの間、牡馬と牝馬のパターンの両方で想像を楽しめます。パールシークレットは筋肉量が豊富で馬体の幅が出るタイプの種牡馬だと考えているため、福ちゃんのときと同じで、たとえ牝馬に出ても問題ないでしょう。それでも牡馬に出た方がよりパワーアップするのは間違いなく、そろそろ牡馬を期待したいところではあります。
一般的に、サラブレッドの世界は、牝馬が生まれる方が血は残っていく可能性は高くなります。牡馬で血を残せるのは僅かだからです。だからこそ、逆説的ではありますが、名牝系と言われる馬たちは牝馬を多く生むことで自らの系統を築き上げてきたのではないでしょうか。そうした意味において、名牝系出身のダートムーアが牝馬を良く生むのは理にかなっています。
実際に、僕の元にもルリモハリモとドコフクカゼという2頭の牝馬が残りました。ルリモハリモとドコフクカゼがある程度走って繁殖牝馬になれば、さらに牝馬を多く生んで枝葉が広がっていきます。その中でも種牡馬になるような牡馬が1頭でも出たら、さらにその血は爆発的に広がるのです。
ただ生産者としては、牝馬は牡馬に比べて高く売れないので困るところもあります。牝系の広がりや爆発は遠い未来の話であり、目先の利益を追いかけなければならない生産者は、牝馬ばかり産む繁殖牝馬を嫌うのは当然です。牡馬と牝馬が4:6ぐらいならまだしも、3:7になると厳しいですし、2:8ですと商売上がったり。長い目で見た牝系の繁栄と短期的な生産者の利益は、相反するものなのです。
翌日、YouTubeチャンネルでライブ配信をすることにしました。真夜中の出産で大変な中、慈さんやミヅキさんが撮影して送ってくれた動画をつなぎ合わせ、出産シーン&出産後の様子を15分ぐらいの尺で見てもらうことに。緊急で配信したにもかかわらず、ライブ開始と同時に100名を超える人が観てくれて、最終的には200名を超える盛り上がりの中、たくさんの方々から祝福のメッセージをもらいました。
昨年のミー子のこともあり、皆さんも喜んでくれて、嬉しい出産ライブ配信になりました。最後に、「男の子か女の子かまだ知らされていません。ハートマークの流星があるので、女の子っぽい気がします。お楽しみに」と締めくくりました。皆さんも性別は気になるようですが、僕自身も本当に知らないのですから、お伝えしようがありません。

ダートムーアが女の子ばかり産むのは、牝系の繁栄以外に、実はもうひとつ理由があります。最近、気づいたのですが、僕の中に娘がほしかったという潜在願望があるのです。僕には息子がひとりいて、もうすでに大学生になり、ひとり暮らしを始めました。子どもの頃は可愛らしかったのですが、年ごろになって自分に似てくる息子を可愛がることはなくなりました。幸せになってもらいたい、頑張れという想いはもちろんありますが、溺愛することはなくなったのです。父と息子とはそんなものなのでしょう。僕の父が僕に対してそっけなかったのも、今なら気持ちが分かります。
そんな僕でも、娘がいたら、いつまでも可愛くて仕方なかったはずです。知り合いの娘さんとたまに遊ぶのですが、生まれたときから知っていることも手伝って、目に入れても痛くないという表現が分かるほど、可愛くて仕方ありません。血がつながっていない娘さんでもそうなのですから、自分の娘であればなおさらでしょう。結婚式で泣いてしまうお父さんの気持ちが分かります。
僕は娘が欲しかったのです。ないものねだりなのは分かっていますし、今となっては叶わぬ夢ですが、それを察して、ダートムーアは毎年のように牝馬を産み続けるのではないでしょうか。そして、その娘さんたちは嫁ぐことなく、ずっと僕の元にいてくれます。さすがに女の子はもう十分だよなんて、申し訳なくてダートムーアさんには言えません。
(次回へ続く→)
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