1997年2月1日、京都競馬場。 曇天の寒空だった。その日のメインレース、すばるステークスのファンファーレが高らかに鳴り響く。 このレースを最後に引退する、中央競馬では速いスタートで誰にもハナを譲ったことがない、快速韋駄天で鳴らしたスリーコースもゲートインした。 発走態勢が整った、その直後だった。どうやらゲート内で激し...
「名馬」を語るの記事一覧
ある馬を好きになってずっと追い掛けるということは、競馬が好きな人の多くが一度はやったことがある行為ではないだろうか? そして、特定の馬を好きになるキッカケは、人それぞれだろう。 例えば、馬券で高額な払戻金を手にすることが出来たから。例えば、パドックで自分のことをじっと見つめていたから。例えば、名前がカッコ良いと思ったか...
緑・白襷・袖赤一本輪。 多くのオールドファンは、この勝負服を目にすると、ちょっとだけ背筋が伸びる思いを抱く。 登録者はシンボリ牧場。 野平祐二騎手とともに日本馬としてはじめて凱旋門賞に出走したスピードシンボリ、その野平調教師が手がけた気高き皇帝シンボリルドルフは岡部幸雄騎手を背に、日本競馬史上はじめて無敗でクラシック三...
「好きなおかずは、最初に食べる?それとも、残しておいて最後に食べる?」 私に競馬を教えてくれた母親方の伯父さんと、競馬場のレストランでお昼ごはんを食べながらこんな質問をされた。 「楽しみは後に取っておきたいから、最後に食べるかな」「じゃあ、追い込み馬が好きでしょ?」「どうして?」「追い込み馬がやって来るのを待つのと、好...
たった1頭との出会いで人は変わる。 1頭の名馬との出会いが、私を競馬に夢中にさせた。 2018年に引退したとあるサラブレッドの存在が、私を競馬にのめり込むきっかけをくれたのだ。 1、出会い 友人に勧められ、始めた『競馬』。 しばらくの間、私にとって競馬はいわゆる"ギャンブル"の1つでしかなく、自分の趣味とはいえるもので...
「エスポくん」 佐藤哲三騎手(当時)が勝利騎手インタビューでエスポワールシチーをあだ名で表現したことから、この名前は競馬ファンの間に広まった。幾多の名馬のなかでも愛称が『クンづけ』だった馬はあまり記憶にない。 ステキシンスケクン、ヨシカワクン、最近ではハヤブサナンデクン、船橋のグランプリクンなど馬名にクンがつく、いわゆ...
偉大でもあり、なおかつ残忍でもある織田信長を父に持ってしまった織田信雄の話相手はロウソクしかなく、父を超えるために思いついた方法は2つ。 ──1つは父に認めさせること、そしてもう1つは父を殺すこと── 小説『狂気の父を敬え』のような例は極端としても、世の男性にしてみれば、身近な存在である父親を超えてみたいという思いを持...
「大外から何か1頭突っ込んでくる!」 数々の名実況を生み出してきた、杉本清アナウンサーが叫ぶ。 「トップガンきた!トップガンきた!トップガンきた!」 観衆が沸いた。叫び声や声援が膨れ上がる。 大外から、栗毛の馬体が猛然と追い込んできた。 「さあ差し切るか、やっぱり三強の争いか!?」 実況の名手の声すらもはっきり聞こえな...
2018年12月28日。 例年以上の厳しい寒さを迎える中、私は中山競馬場にいた。その目的は競馬ファンなら言わずと知れたものだ。 2017年から2歳G1となった、ホープフルステークスである。 この時、単勝オッズで1.8倍という断トツ人気に推されたサートゥルナーリアが、4枠5番にゲートインを迎えようとしていた。 父は201...
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語り継がれし「名馬」たち
レース回顧
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