「名馬」を語る 二階級制覇の名馬、モーリス〜グラスワンダー、スクリーンヒーローから受け継ぐ、その血の運命〜 2025年12月13日 1.「クレオパトラの鼻」 「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、世界の歴史も変わっていたであろう」とは、哲学者ブレーズ・パスカルの言。歴史の転換は些細な事象によって起こるものだ、という警句だが、小説家の芥川龍之介はこの説に対して次のような反論を行っている。 クレオパトラの鼻が曲っていたとすれば、世界の歴史はその為に... 縁記台
「名馬」を語る 日本代表「富士山」、三度目の正直。海外挑戦の嚆矢、フジヤマケンザンの香港国際カップ優勝を振り返る 2025年12月12日 ■『2025年・香港国際競走』目前。熱戦への期待に、胸が膨らむ。 毎年12月に施行される香港国際競走は、日本の競馬ファンにとって最も馴染み深い海外競走のひとつと言っていいだろう。 今年の日本からの遠征メンバーも、非常に充実している。 ドバイターフで香港の名馬ロマンチックウォリアーを破ったソウルラッシュを始め、大阪杯二連... 稲庭うどん
コラム・エッセイ 2分20秒3の衝撃 - カランダガンが刻んだ未来への一撃 2025年12月5日 茜色に染まる東京競馬場。府中では見慣れぬ、けれど海の向こうで何度も見てきた、深い緑と燃えるような赤の勝負服が躍動する。 世界が憧れる大舞台を幾度も制してきた、アガ・カーン殿下のあの勝負服が、いま日本の直線を駆け抜けている。 ──カランダガン。 その名が日本を駆けていることに、胸が熱くなる。カルティエ賞年度代表馬に選ばれ... norauma
「名馬」を語る 小倉の空の下 - アサクサゲンキの長い旅路の終わりに寄せて 2025年12月3日 スタンドの呼吸が、ハッと詰まる。無事に飛越を終えると、溜めていた息がふうとほどけていく。 障害競走を前にするとき、スタンドにはいつもよりも少しだけ、「祈り」の成分が多く満ちるように思う。ただ走るだけでも大変なのに、幾つものハードルを飛び越えなければならない。平地以上に危険を伴うその舞台に身を投じる馬たちへ──ファンはど... norauma
「名馬」を語る 大魔神の愛が生み出した偉大な馬。シュヴァルグランが勝利した2017年のジャパンカップを振り返る 2025年11月30日 ■馬主という大きな存在 競馬を予想する際に、馬主を予想の根拠とする手法はあまり聞いたことがない。筆者も馬柱で馬主の名前には目を通すが、それを予想にまで絡めるかというと、そうでもない。しかし、馬主といえば競馬において非常に重要な存在である。 馬主は競走馬のオーナーであり、馬の購入、育成、調教師や厩舎への預託、レースの出走... ムラマシ
「名馬」を語る タップ・ダンス・ダンス。最高の鞍上を迎えて道を切り拓いた名馬、タップダンスシチー 2025年11月29日 ■パドックで「タップダンス」を踊るサラブレッド 音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることがわかるかい? 踊るんだ。踊り続けるんだ。なぜ踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなことを考えだしたら足が停まる。一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう... 高橋薫
「名勝負」を語る 輝きの証明。三冠馬コントレイルが見せた奇跡のような走り - 2021年・ジャパンカップ 2025年11月29日 飛行機雲がひとすじ、空に伸びていく。眩い夕陽が、影を長く引き伸ばす。秋も深まった府中の直線は、どこか哀愁と別れを予感させる。 2021年、ジャパンカップ。正直なところ、この日を迎えるにあたり、私はほんの少し、コントレイルの強さを疑っていた。 三冠馬は、特別な存在であってほしい。圧倒的な強さ。王者の風格。そんな姿を私は求... norauma
「名馬」を語る 黄金旅程の最後の焔 - マイネルヴァッサー 2025年11月29日 いつからだろう。 出馬表に彼の名を見る度に、胸の奥がかすかにざわめくようになったのは。 それはレース前の昂りでも、高まる緊張でもない。もっと静かで、もっと深い郷愁にも似た感情――「ひとつの血が、まだここに生きている」という実感だった。 ひんやりとした風が頬を撫でる晩秋のパドック、小柄な一頭の競走馬が淡々と歩いている。年... norauma
「名勝負」を語る 「負けるという選択肢のない」ラストラン! イクイノックスの2023年ジャパンカップを振り返る 2025年11月27日 イクイノックスのラストランとなった第43回ジャパンカップ。圧倒的な強さでライバルたちを退け、歴史に刻まれる完勝劇を演じた。 2023年11月26日。府中競馬場の年間最終レースとなる12レース。芝2400mに集ったのは、リバティアイランド、ドウデュース、タイトルホルダー、スターズオンアース…名だたるGⅠ馬たちである。しか... 夏目 伊知郎
「名勝負」を語る 生涯連対率100%のダイワスカーレットが魅せたベストレース/2007年エリザベス女王杯 2025年11月15日 ■生涯連対率100%の「重み」 競馬という舞台に置いて、生涯連対率100%、つまり3着以下が無いという完璧な蹄跡は、勝利の記録以上に「重み」を持つ。昭和の高度成長期真っ只中の時期に登場したシンザンは、19戦19連対という生涯成績で五冠馬となり、競馬史にその名を残している。そして、シンザン引退から41年後、生涯連対率10... 夏目 伊知郎