「これはすごいな……」私はそう呟きながら広い放牧地の片隅にカメラを向け、小さな笑みを浮かべた。レンズを向けられた栗毛のサラブレッドは、アグネスデジタル。 私が小さな笑みを浮かべたのは、彼によく似た馬を知っていたからだ。私がお世話になっている乗馬クラブに、アグネスデジタル産駒が2頭在籍していたことがあった。2頭は母父まで...
コラム・エッセイ
コラム・エッセイの記事一覧
逃げるか。控えるか。そもそもゲートを出られるか。 なるべく心に波風立てることなく、上機嫌で走ってほしい。仮にゲートを出られずとも、どうか鼻歌でも歌いながら、最後の力を存分に貯めておいてほしい。そんな人間たちのささやかなお願いを容赦なく薙ぎ倒し、勢いそのままに突き抜ける竜巻のようなレースをするのがキセキだった。 2020...
あの可愛かったモシモシ君が、3冠馬になって、種牡馬入りする日が来るとは思いも寄りませんでした。当歳時にノースヒルズ清畠で初めてコントレイルを見たときのエピソードは、あちこちのメディアで書いていますので割愛しますが、実はこのときの写真がかなりレアみたいですね。テレビ番組のコントレイル特集では使わせてくださいと依頼がありま...
「今日のこのレースを現地で観た、ということはこの先、きっと自慢できるよ」 競馬を始めたばかりの細君に、東京競馬場でそう告げたのは、2019年11月16日のことだった。 メインレースの東京スポーツ杯2歳ステークスをコントレイルが勝利し、レースが確定した直後のことだった。この2か月前の新馬戦でデビュー勝ちして、1戦1勝で臨...
ダートグレードの最高峰の一つ、JBCクラシック。毎年この舞台には中央や地方の重賞ウイナー、幾重にも勝ち星を重ねてきた猛者など抜群の実績を重ねてきた者が名を連ねる。そんなJBCクラシックだが今年、金沢で行われた当レースに出走した12頭の中に1頭、変わった戦績の馬がいた。その馬はマイネルパイオニア。この時点の戦績は中央地方...
「野球は筋書きの無いドラマ」という言葉は、使い古されている表現かもしれない。しかしこれは、野球だけに当てはまる言葉ではないだろう。私が愛して止まない競馬の世界でも、目にすることがある。その出来事を安易に『奇跡』『ミラクル』なんて言葉で片付けてしまうのは、何だかちょっと口惜しい気もする。 予想もしない出来事が目の前で起こ...
競馬ファンの中では、しばしばちょっとした〝論争〟のようになるネタがある。代表的なひとつに〝ダービー派〟vs〝有馬記念派〟が挙げられる。〝論争〟というと難しく考えがちだが、要はどちらのレースを好むのか、いや愛するか、といったような話だ。 自分がどちら派であるか、という話はさておくとして、ダービーが「一生に一度の大舞台での...
「今年の3歳馬は強い」 こういった声は数年置きによく耳にするセリフだ。特に近年は降級制度が廃止されたことで、勢いのある3歳馬が昇級初戦から好走をすることが多い。世代間のレベルをいかに早く見極めるかを楽しみにしているファンもいることだろう。 2005年の秋競馬は、ディープインパクトが注目を集めていた。日本競馬史上2頭目と...
明治30年の創業以来、たくさんの方に着物のある人生を提供してきた老舗の呉服屋「いわきや」から、新たな競馬グッズ『名馬全史京友禅』が発売。その発起人でもある専務取締役・我妻専務取締役は大のオジュウチョウサン好きとしても知られている。今回はそんな我妻さんと、オジュウチョウサンの主戦騎手・石神騎手の対談をお届けする。 「こん...
私は人混みが苦手だ。 四半世紀前、進学のため東京に出てきた私は、何も知らずに大学から「電車で20分」の街にアパートを借りた。 1限目の授業に出席するために電車に乗ると、私が幼少期を過ごした田舎町の総人口を凌駕する乗客を一編成にのみ込んだその電車は、大学の最寄り駅に着くのにその倍近くの時間を要した。東京の通勤ラッシュの過...
アーカイブ
カテゴリー
語り継がれし「名馬」たち
レース回顧
-
[重賞回顧]復活と希望の勝利!北村友一騎手とクロワデュノールがホープフルSを制覇~2024年・ホープフルS~
-
[重賞回顧]いざ、新時代へ! 復活を遂げたレガレイラが偉業を達成~2024年・有馬記念~
-
[重賞回顧]ニュースター誕生! 見惚れるほどの圧勝劇~2024年・朝日杯フューチュリティステークス~
-
[重賞回顧]世界を完封! 主役はやはり日本総大将~2024年・ジャパンカップ~
-
[重賞回顧]最速の母”ラッシュ”から魂の”ラッシュ”へ、鞍上が繋ぐ悲願成就!~2024年・マイルCS~
-
[重賞回顧]”バド”の雪辱を、”スタニング”が晴らす見事な勝利~2024年・エリザベス女王杯~
-
[重賞回顧]夕暮れに映えた白き古豪、ハヤヤッコ~2024年・アルゼンチン共和国杯~