「名勝負」を語る 時に運命は、コイントスのように - 2011年オークス・エリンコート 2023年5月21日 「そんなに悩むのなら、コインでも投げて決めるたら、いいんじゃないか」気怠そうに言う目の前の先輩に、私は苛立ちを覚えた。「大事なことを、コイントスみたいにいい加減なことで決められるわけないです」私は、少し憤慨して答えた。テーブルに置かれた二つのコーヒーからは、ゆらゆらと湯気が立ち上っていた。ことあるごとに、私の相談に乗っ... 大嵜 直人
「名勝負」を語る 決して「番狂わせ」ではない。ウオッカを吹き飛ばした“アジアの風”エイジアンウインズが見せた、2008年ヴィクトリアマイルの大激走。 2023年5月14日 レースで度々目にする「番狂わせ」 「番狂わせ」は、スポーツの世界で度々起こるドラマだ。 広辞苑で「番狂わせ」を引くと、「①予想外の出来事で順番の狂うこと。 ②勝負事で予想外の結果が出ること」と記されている。 「番狂わせ」の言葉は、江戸時代から存在する言葉で、相撲の番付の下位力士が、上位力士に勝利することを指して「番狂わ... 夏目 伊知郎
「名勝負」を語る ダンス兄妹と府中の直線 - 2006年第1回ヴィクトリアマイル・ダンスインザムード 2023年5月14日 ダンスインザムードが出てきたとき、私は彼女に兄ダンスインザダークの面影を重ねていた。性別も毛色も違う2頭。しかし、まとった雰囲気がすごく似ていると感じていた。 2頭の母はダンシングキイ。ダンスインザダークの前にはエアダブリンとダンスパートナーも出している名牝だ。兄や姉はいずれも後方から強烈な末脚を繰り出すイメージがある... 林田麟(りんだりん)
「名勝負」を語る [かしわ記念]オルフェーヴル産駒ショウナンナデシコの才能開花。32年ぶり、牝馬のかしわ記念制覇の瞬間を振り返る。 2023年5月4日 近年は「牝馬の時代」と盛んにいわれ、牝馬が牡馬を負かすことは珍しいことではなくなった。だが、ダートでは少々事情が異なり、まだまだ牡馬優勢と言わざる得ない。牡馬混合のGI/JpnIで牝馬が勝利したのは僅か。今回は砂で大輪を咲かせたショウナンナデシコをご紹介したいと思う。 根をはり開花の時を待つ 2019年9月にデビューを... 中川兼人
「名勝負」を語る 則天去私。 - 1997年天皇賞(春)・マヤノトップガン 2023年4月29日 幕末に生を受け、激動の明治から大正初期を生きた、夏目金之助。日本近代文学を代表する文豪として、現代に読み継がれる不朽の名作の数々を発表し続けた。 筆名を号して、夏目漱石。 慢性的な神経衰弱、あるいは胃潰瘍など数々の疾患に悩まされ続けながらも、尽きることのない自らのエゴイズム、ひいては愛を真摯に追究し続けた。禅の世界にも... 大嵜 直人
「名勝負」を語る スズカマンボの特性を見抜き、コース形態と馬場状態を読む。「アンカツマジック」が光った、2005年の天皇賞(春)。 2023年4月28日 日々の生活の中には「季節の移ろい」というものがあり、毎日少しずつ変化して行く「時間」を、私たちは楽しんでいる。年間を52週に区切り、週ごとの歳時記、社会行事、パーソナル行事などを組み込んで1年間を過ごすのが「生活サイクル」だろう。 競馬の世界でも、春夏秋冬1年間の流れが完成している。東西の金杯で1年の幕を開け、季節... 夏目 伊知郎
「名勝負」を語る [天皇賞・春]真夜中の戦士たち、覇王に挑む。 2023年4月28日 世紀2000年。20世紀最後の1年の幕開けを私はコンビニで迎えた。当時、学生だった私は時給割り増しの甘言にのり、12月31日の夜勤シフトに入っていた。私が勤めたコンビニは周囲の競合店が少なく、大晦日も雑誌コーナーに立ち読み客がびっしりだった。あの頃、コンビニの雑誌コーナーには大量の雑誌が積まれており、少年誌の発売日とも... 勝木 淳
「名勝負」を語る [東京スプリント]リュウノユキナ - キッカケはとあるベテラン騎手との出会い。デビュー36戦目でようやく噛み締めた重賞の味。 2023年4月19日 デビュー2戦目で重賞を勝利する馬もいれば、20戦、30戦とキャリアを積み、やっとの思いでタイトルを掴む馬もいる。今回ご紹介するリュウノユキナは、キャリア36戦目にしてようやくタイトルを手にした遅咲きの代表格。彼を言葉で表すなら「雪に耐えて梅花麗し」。デビュー当時から見ていた筆者としては、苦労の末にタイトルを掴んだ姿に感... 中川兼人
「名勝負」を語る 1995年世代の二冠馬セイウンスカイ。改めて振り返る皐月賞、残り600m12.6の意味。 2023年4月16日 競馬ファンにはそれぞれ記憶に残るクラシック、世代がある。それは得てして、競馬をはじめたばかりの頃の世代であることが多い。最近、競馬をはじめたばかりの方にとっては2020年コントレイル、デアリングタクトという2頭の三冠馬が無敗で駆け抜けたシーズンだろうか。リアルタイムで自身が体験したクラシック世代の記憶は競馬を続ける限り... 勝木 淳
「名勝負」を語る 振り返れば…ではなく、その瞬間、信じて託す。グランアレグリアと私の桜花賞。 2023年4月9日 グランアレグリアが名馬の一頭であることに、異論の余地はないだろう。ただ、私にとって彼女は、単なる名馬ではなく特別な1頭である。その理由は、2019年の桜花賞まで遡る。 今になって振り返れば、桜花賞の勝利は必然も必然かもしれない。ただ、この"振り返れば"というやつは曲者だ。後からなら「当然勝つよね」と言えてしまうからだ。... 緑川あさね