「名勝負」を語る [フェブラリーS]Pride of Iwate〜『水沢の』メイセイオペラが『日本の』メイセイオペラになった日〜 2022年2月18日 1999年1月31日。私は朝から東京競馬場を目指していた。その日のメインレース、フェブラリーステークスを観戦するためだったが、妙な違和感が拭えなかった。なぜなら、暦はまだ1月だというのに、メインは2月を冠するレース名だったからだ。「名は体を表していない。4月3週に開催される牡馬三冠レースの最初も『卯月賞』にするべきだな... 並木 ポラオ
「名勝負」を語る [東京新聞杯]夢を繋いだかのように感じられた逸材。府中で末脚が光った一戦を振り返る。 - 2007年・スズカフェニックス 2022年2月3日 1998年11月1日、音速の逃亡者は府中の大欅の向こうで、まだ行ってはいけないもう一つのゴールを駆け抜けてしまった。栗毛の美しい馬だった。どんな馬が出てきても、そのスピードに追い付ける者など存在しないかのような強烈な走りだった。 多くの人が悲しみに暮れ、彼の残した伝説と、もし無事であったらの「たられば」談義を語るように... 小早川 涼風
「名勝負」を語る [シルクロードS]スプリント路線の勢力図を一瞬で塗り替えた、一輪の花 - 1996年・フラワーパーク 2022年1月24日 古馬混合の短距離路線が本格的に整備されたのは、1984年のグレード制導入以降。それまでハンデ戦として行なわれていた安田記念がGIに格付けされ、マイルチャンピオンシップが新たに創設された。一方、さらに距離の短いスプリント路線が整備されるには、元号が平成に変わるのを待たなければならなかった。 それまでGⅡだったスプリンター... 齋藤 翔人
「名勝負」を語る [アメリカJCC]世界的良血馬が、血を遺す未来と引き換えに手にしたもの - 2003年・マグナーテン 2022年1月17日 アメリカジョッキークラブカップは、3月の中山記念、日経賞と共に、関東で行われる伝統の古馬中・長距離重賞の一つ。ここから、GⅠの大阪杯や天皇賞春、もしくは、香港のクイーンエリザベス2世カップへと繋がる、重要なステップレースとなっている。 過去の勝ち馬からも、メジロブライト、マツリダゴッホ、トーセンジョーダン、ルーラーシッ... 齋藤 翔人
「名勝負」を語る [日経新春杯]"4歳三強"それぞれの意地とプライドが激突した名勝負を振り返る。 - 2011年・ルーラーシップ 2022年1月14日 年間の最初に行なわれるGⅡが日経新春杯。1ヶ月後に行なわれる京都記念とともに、春の中・長距離路線に向かう古馬たちにとっては、重要なステップレースとなっている。 ただ、別定戦の京都記念とは異なり、ハンデ戦の日経新春杯は例年、これから大舞台を目指す前走条件戦に出走していた馬の活躍が目立つ。世代別に見ると4歳馬が強く、過去1... 齋藤 翔人
「名勝負」を語る [有馬記念]いくつもの「夢」が叶った日 - 1993年有馬記念・トウカイテイオー 2021年12月26日 「野球は筋書きの無いドラマ」という言葉は、使い古されている表現かもしれない。しかしこれは、野球だけに当てはまる言葉ではないだろう。私が愛して止まない競馬の世界でも、目にすることがある。その出来事を安易に『奇跡』『ミラクル』なんて言葉で片付けてしまうのは、何だかちょっと口惜しい気もする。 予想もしない出来事が目の前で起こ... 並木 ポラオ
「名勝負」を語る [有馬記念]中山の野に陽炎を断つ覇王、テイエムオペラオー - 2000年有馬記念 2021年12月22日 私は人混みが苦手だ。 四半世紀前、進学のため東京に出てきた私は、何も知らずに大学から「電車で20分」の街にアパートを借りた。 1限目の授業に出席するために電車に乗ると、私が幼少期を過ごした田舎町の総人口を凌駕する乗客を一編成にのみ込んだその電車は、大学の最寄り駅に着くのにその倍近くの時間を要した。東京の通勤ラッシュの過... 枝林 応一
「名勝負」を語る [有馬記念]その走り、かくも偉大なり。 - 2013年有馬記念・オルフェーヴル 2021年12月21日 オルフェーヴルの走りを想うとき、吉川英治の描く「宮本武蔵」が想起される。 ふと。おのれッと思う。満身の毛穴が、心をよそに、敵へ対して、針のようにそそけ立って歇(や)まない。筋、肉、爪、髪の毛——およそ生命に附随しているものは、睫毛(まつげ)ひとすじまでが、みな挙(あ)げて、敵へ対し、敵へかかろうとし、そして自己の声明を... 大嵜 直人
「名勝負」を語る [有馬記念]人生の道しるべ、有馬記念。ディープインパクトが負けた日、そして、飛び立った日──。 2021年12月20日 有馬記念は人生の道しるべだ。 その年最後の祭典・有馬記念がやってくると、私は自然とこの一年に思いを馳せる。だから、有馬記念を振り返ると、その年が自分にとってどんな年だったのか、そんな自分史も同時に甦る。 どこでどんな心境でその有馬記念を観戦したのか……。必ずしも明るい気分だけではない。大きな挫折を味わった年の有馬記念は... 勝木 淳
「名勝負」を語る 2013年阪神JF・レッドリヴェール - 大激戦で掴み取った勲章 2021年12月10日 2013年の2歳女王決定戦、阪神ジュヴェナイルフィリーズは重賞勝ち馬5頭が揃う史上空前のハイレベルなものとなった。 レースの中心は、3頭。……いや、レース前は2頭だったかもしれない。 一等星の血を引く母と英雄の仔にして、その閃光のごとき末脚で新潟の直線を独り占めにしたハープスター。その果敢なる先行力で小倉を席巻し、京都... 枝林 応一