「野球は筋書きの無いドラマ」という言葉は、使い古されている表現かもしれない。しかしこれは、野球だけに当てはまる言葉ではないだろう。私が愛して止まない競馬の世界でも、目にすることがある。その出来事を安易に『奇跡』『ミラクル』なんて言葉で片付けてしまうのは、何だかちょっと口惜しい気もする。 予想もしない出来事が目の前で起こ...
「名勝負」を語る
「名勝負」を語るの記事一覧
私は人混みが苦手だ。 四半世紀前、進学のため東京に出てきた私は、何も知らずに大学から「電車で20分」の街にアパートを借りた。 1限目の授業に出席するために電車に乗ると、私が幼少期を過ごした田舎町の総人口を凌駕する乗客を一編成にのみ込んだその電車は、大学の最寄り駅に着くのにその倍近くの時間を要した。東京の通勤ラッシュの過...
オルフェーヴルの走りを想うとき、吉川英治の描く「宮本武蔵」が想起される。 ふと。おのれッと思う。満身の毛穴が、心をよそに、敵へ対して、針のようにそそけ立って歇(や)まない。筋、肉、爪、髪の毛——およそ生命に附随しているものは、睫毛(まつげ)ひとすじまでが、みな挙(あ)げて、敵へ対し、敵へかかろうとし、そして自己の声明を...
有馬記念は人生の道しるべだ。 その年最後の祭典・有馬記念がやってくると、私は自然とこの一年に思いを馳せる。だから、有馬記念を振り返ると、その年が自分にとってどんな年だったのか、そんな自分史も同時に甦る。 どこでどんな心境でその有馬記念を観戦したのか……。必ずしも明るい気分だけではない。大きな挫折を味わった年の有馬記念は...
2013年の2歳女王決定戦、阪神ジュヴェナイルフィリーズは重賞勝ち馬5頭が揃う史上空前のハイレベルなものとなった。 レースの中心は、3頭。……いや、レース前は2頭だったかもしれない。 一等星の血を引く母と英雄の仔にして、その閃光のごとき末脚で新潟の直線を独り占めにしたハープスター。その果敢なる先行力で小倉を席巻し、京都...
年の終わりを感じさせる冬。 我々競馬民にとっては有馬記念が見えてくると年の終わりを感じ始め、東京大賞典が始まる頃にはいよいよ差し迫った年の瀬を迎えた気持ちになりつつ、その年のラストは東京2歳優駿牝馬で迎える……という人も多いのではないだろうか。 そんな12月、中央競馬の開幕G1はチャンピオンズCというダート王座決定戦で...
大学時代の私は、日本史の勉強をしながら乗馬クラブでアルバイトをして、週末には競馬場への遠征を重ねるという日々を送っていた。授業がない日は基本的に乗馬クラブか競馬場にいるという馬漬けの毎日を過ごしていたから、大学の“華”のひとつであるサークル活動には積極的に参加していなかったのである。ただし、サークルに所属していなかった...
小雨が落ち、薄暗い11月のターフを緊張させている。落ち着き払った漆黒の馬体は、何者も寄せつけず、一人旅を展開していた。私は苦い顔をしながら、職場である介護施設のテレビからその様子を見つめる。 2016年、ジャパンカップ。 鞍上は、レースを完全に支配していた。 「武豊?」 競馬とは無縁であるマダムたちも、続々とテレビの前...
「大団円」という言葉がある。演劇や小説について使用される言葉で、それらがめでたく収まる場面について指すものだ。だが、この言葉は、本の枠を飛び越えて芸能人やスポーツ選手、競走馬の引退の際に使われることもしばしばある。競走馬の引退に絞れば、アーモンドアイやキタサンブラックなどがその例に当てはまるのだろうか。 今回は、長年に...
派手な追い込みには、華がある。「大外一気」この言葉を聞いて、皆さんはどんな馬、どんなレースを思い浮かべるだろうか。 ディープインパクトの若駒S、キズナの日本ダービー、ヒシアマゾンのクリスタルC、ハープスターの新潟2歳S……。そうした芝の名レースを思い浮かべる方も多いだろう。ただ、とてつもない追い込みはダートであることが...
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語り継がれし「名馬」たち
レース回顧
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