あれは、少し早めの昼メシを済ませて、府中のメモリアルスタンドから出た後だっただろうか。 降り出した雨は、まるで怒りをぶつけるような土砂降りに変わった。分厚い雲に覆われた暗い空は、風薫る5月のそれとは到底思えなかった。視界が悪くなるほどの豪雨により、地面を叩く音が響いていた。 私は、その土砂降りの雨をどこか他人事のように...
「名馬」を語るの記事一覧
卒業アルバムの 最初の春のページ無邪気に笑う私がいる…──Dreams Come True 「笑顔の行方」より 競馬のレースが行われる「距離区分」を表す言葉として、「SMILE」というものがある。これは世界統一の競走馬の強さを表す指標(レーティング)を獲得したレースの距離を表したものである。 Sは「Sprint(スプリ...
「やっぱり強いグラスワンダー!これが新しい栗毛の怪物!」。1997年暮れの中山競馬場で開催された朝日杯3歳ステークスのゴール直後、私の耳に飛び込んできたこのフレーズは、四半世紀たった今なお、私の心に深く刻み込まれている。 これが新しい栗毛の怪物 グラスワンダーは1995年2月15日生まれ、栗毛のアメリカ産馬である。新馬...
直線の入り口で、まだ先頭までは10馬身以上あっただろうか。それでも、鞍上はその「差」さえも楽しんでいるように映った。そして、満を持してゴーサインが出された瞬間、府中のターフに一陣の風が吹き抜けた──。 2010年のNHKマイルCを制したダノンシャンティ。 最後方からの大外一気を決めた豪快な末脚と、当時の日本レコードであ...
1990年代後半は、日本育成馬が世界を相手に通用し始めてきた時代であった。 1998年8月9日、シーキングザパールがフランスのモーリス・ド・ゲスト(G1)を優勝したのを皮切りに、翌週の8月16日にはタイキシャトルが同じくフランスのジャック・ル・マロワ(G1)を勝利。さらには翌1999年10月にはアグネスワールドがこれま...
GⅡ京都新聞杯。ダービー出走へ向けた賞金加算の最後のチャンスとして、東上を狙う3歳馬がしのぎを削るレースである。 2021年現在は5月に施行されているが、1999年以前は10月に施行されていた。9月のGⅡセントライト記念とGⅡ神戸新聞杯に続く、3番目の菊花賞トライアルとしての位置づけとなっていた。 秋に施行されていたそ...
2002年、夏。北海道の牧場で、ある大物馬主と開業前の調教師が出会った。そしてその場で「開業してから俺が面倒を見てやる」と調教師と口約束を交わしたというその馬主は、約束通り自分の多くの馬達を師へ預託した。 ──そんな話から6年後の2008年、5月の京都競馬場。 その馬主、近藤利一氏が所有するアドマイヤジュピタが天皇賞春...
2021年の年明け、フィエールマンの引退と種牡馬入りが発表された。 勝利したGⅠは、菊花賞と2度の天皇賞春。3レースとも3000m以上のレースだった。 3000m以上のレースは、年に数回しか施行されていない。そのため“スペシャリスト”が出やすく、天皇賞春を二度勝った馬は、天皇賞秋に比べて多い。──とはいえ、それらの馬達...
2000年11月。京都のターフで、1頭の牝馬がデビュー戦を迎えた。名前はビリーヴ。後のGⅠウイナーである。 新馬戦は1200mの短距離戦。サンデーサイレンスの仔だからもう少し長い距離を走らせたかったのかもしれないが、気性が荒いこともあって、この距離を選んだのであろう。単勝1.5倍の圧倒的人気に支持されたなか、期待に応え...
2011年4月24日、日曜日。晴れ渡る東京競馬場で、1頭の栗毛馬による"伝説"が、始まった。2着に3馬身をつけてGⅠ皐月賞の栄冠を父ステイゴールドにもたらしたオルフェーヴル。 この勝利は、種牡馬ステイゴールドにとって初めての「土日連続重賞制覇」でもあったのだ。 ──そう、この前日、同じ府中の芝2000mで、同じステイゴ...
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語り継がれし「名馬」たち
レース回顧
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