それぞれの競馬愛 2021年ブリーダーズカップデー、25年越しの奇跡。 2021年11月8日 立冬を迎えた日曜日の朝は、まだ日の出前の薄闇に包まれていた。 窓を開け、闇の中の東の空を見上げた。あの闇の向こう、はるか数千キロの彼方で、「その時」を待つ彼らを想った。ぼんやりとした思考のままに、グリーンチャンネルに合わせる。やわらかな11月の陽光に照らされた、デルマー競馬場が映し出された。 北米最大の競馬の祭典、ブリ... 大嵜 直人
それぞれの競馬愛 穏やかな名牝ラインクラフトへ -夭逝した彼女と、対照的な2頭のライバルたち 2021年9月20日 「さくら舞い散る中に忘れた記憶と、君の声がもどってくる」思い起こせばケツメイシのさくらという歌が流行ったとき、君は現役時代の最盛期を迎えようとしていたね。桜の舞台の残り300mで、君のギアがトップに入った。スケートリンクを滑るように抜け出した君の原動力は、天与のスピードだ。勝負が決まるゴール前でも、馬体からにじみ出るオ... へんてこでそーな
それぞれの競馬愛 京成杯AHでマイルの世界レコードを叩き出した快速馬、レオアクティブ。その故郷を訪れて感じた競走馬の愛し方。 2021年9月10日 「あの子が賞金を持って帰ってきてくれたらね、小さなゲストハウスでも作ってこいつのファンの方とコーヒーでも飲みながらゆっくりお話ししたいな……って」 おじいさんはそう言葉にすると、温かく優しい笑顔を見せた。“あの子”とは当時はまだ競走馬としてのデビューを迎える前だった2歳の牝馬、そして“こいつ”とはその牝馬の半兄で201... ひでまさねちか
それぞれの競馬愛 トウショウオリオンへ - 虹の橋の向こうへの手紙 2021年8月21日 可愛い目をした馬だった。くりくりの真ん丸な目をした大きな馬体で、私と目が合うとズンズン歩いて迫ってくる。「はい、下がろうね~」と、後ろに下げられても、またズンズン。「下がるよ~」と、もう一度。真ん丸の琥珀色したオリオンの瞳。オリオンは私を見つめたまま、三度目のズンズンをした。 夏の名残りの9月上旬。私がオリオンとNPO... オラシオン
それぞれの競馬愛 賢き名馬 金沢の名馬ハヤテサカエオーのヒミツ(?) 2021年6月13日 先日、引っ越しの為に家の整理をしていたら一枚の紙切れを見つけた。 出走馬が確定した段階の競馬新聞のゲラと言った所か。そこに並ぶ懐かしい騎手や調教師の名前、アラブ系と言う言葉。これらを手掛かりに調べるとこれは1999年6月28日に行われたアラブ系A級ルビー特別の出走馬だとわかった。 今から22年前の、重賞でもないレースの... 『遊駿+』編集部
それぞれの競馬愛 エリモエクセルがくれたサラリーマン人生~1998年オークス〜 2021年5月23日 ──就職なんかしたくないなぁ。1998年の春、大学生だった私は就職活動の真っ只中だった。1990年初頭にバブルは崩壊し、山一証券が破綻したのが前年の1997年。世にいう「就職氷河期」だった。この年のオークスは、桜花賞の上位3頭、ファレノプシス、ロンドンブリッジ、エアデジャヴーをはじめ、阪神3歳牝馬S勝ちのアインブライド... 林田麟(りんだりん)
それぞれの競馬愛 兵庫から全国へ〜挑戦を続けた、二人のトレーナー〜 2021年5月4日 「ロードバクシン小牧太! 一気に先頭に立った! ロ〜〜〜ドバクシン、ゴールイン! ロードバクシンです。(中略)あっぱれ兵庫の馬!!!」──2001年兵庫チャンピオンシップ 吉田勝彦アナウンサー実況より サクラバクシンオーの産駒で後に兵庫三冠馬(園田ダービー、兵庫CS、菊水賞)となったロードバクシンが兵庫CSを制してから... mouse.
それぞれの競馬愛 メジロマックイーンと新冠のじいさん 2021年5月2日 ──昔の競馬は良かった。誰が言うもんかと思っていた言葉を、結局自分も使うようになった。これが歳を重ねるということなのだろうか。私が競馬に出会ったのは1995年。メジロマックイーンは2年前に引退していた。今どきの競馬ファンはどうかわからないが、競馬にハマると過去の名馬に思いを馳せる時期が来る。今のようにインターネットで何... 林田麟(りんだりん)
それぞれの競馬愛 己の運命に打ち勝った名脇役、ウインバリアシオンに喝采を。 2021年4月29日 間違いなく、彼はその場に帰ってきた。 2013年の有馬記念。クラシック三冠馬であり、凱旋門賞でも二度の2着を経験した稀代の名馬オルフェーヴルの引退レースとして今も語り継がれる一戦で、その8馬身後ろの2着に入ったのがウインバリアシオンだった。影を踏むことすらできない、ぐうの音も出ない完敗。それでも彼にとっては大きな価値が... ハシスポ
それぞれの競馬愛 似てる"誰か"を愛せるから。シルバーステートとサングレーザー。 2021年4月22日 同じ父、勝負服、鞍上。そして同じ毛色、同じくらいの体重。ここまで一致すると、よほどの有識者でない限りゼッケンを見るまでその馬の名前を特定することは困難なのではないだろうか。サングレーザーが紺のゼッケンをまとい、福永騎手を乗せているのを見たとき──私は、志半ばでターフを去った"あの馬"を思い出させた。 ディープインパクト... フロリダ