「名勝負」を語る ウオッカに勝つ。追撃のスーパーホーネット - 2008年・毎日王冠 2023年10月7日 毎日王冠というレースは、府中の杜に秋を運んでくる。 新緑の府中が放つエネルギーは瑞々しく、府中駅から大國魂神社を通り、競馬場へ向かう道は、世界は前方にしか存在しないと錯覚させる。しかし、同じ緑のいちょう並木であっても、秋は違う。ひと夏を越えた緑は心なしか沈み、次の黄色へ移ろうかと悩みはじめているようだ。色づく道は、世界... 勝木 淳
「名馬」を語る 復活ではなく進化 - 2017年東京盃覇者、キタサンミカヅキ 2023年10月4日 東京盃は1967年にスタートした伝統の短距離重賞。創設された当時の日本競馬はまだまだ長距離志向が強く、地方競馬では全国初の短距離重賞だったともいわれる。60年近くが経った現在ではJpnIIに格付け、“Road to JBC”にも指定されており、JBCスプリントを見据えた各馬が覇を競うレースとなっている。 長い歴史のある... 中川兼人
「名馬」を語る 日本で一番速い君へ。光すらも置き去りにしたカルストンライトオ 2023年10月2日 サラブレッドは、生き物の極致の如きスピードで私たちの目の前を駆け抜ける。 愛らしい瞳を持ち、時に無防備な、時に哲学的とも思える振る舞いを見せる彼ら彼女らが、命を燃やし、闘志をむき出しにしてスピードを競う姿は、私の心を捉えて離さない。 レースを俯瞰するだけならテレビ画面が一番わかりやすい。それでも私が競馬場に足を運ぶのは... norauma
「名勝負」を語る 「ヤマト」と「照男」の大金星!/2000年スプリンターズステークス 2023年10月1日 『照男』とは 関東の現役ジョッキーの中で、「江田照男」は特別な存在である。 1990年秋、雨中の天皇賞(秋)でメジロマックイーンの降着で繰り上がり優勝したプレクラスニー。鞍上は当時19歳だった江田照男騎手、彼の存在をしっかり記憶に留めたのはこの時だった。 武豊とメジロマックイーンの独壇場となった天皇賞。その遥か後方の2... 夏目 伊知郎
それぞれの競馬愛 "拝啓、オルフェーヴルさま" - 競馬ライター・勝木淳からの手紙 2023年9月24日 拝啓、オルフェーヴルさま 先日、あなたがかつてのパートナー池添謙一騎手と再会する動画を目にしました。現役時代、17回も背中に乗せた池添騎手に前蹴りに行こうとしていましたね。今年で15歳だというのに、いたずらっ気の強いやんちゃなところはまだまだ収まっていませんか? いくつになっても自分らしくあり続けるあなたが少し羨ましく... 勝木 淳
「名馬」を語る グランシルク~中山マイルの神話~ 2023年9月10日 ひざに置いた フォトグラフあなたの街は出会いの喜びと 涙をくれた──VOICE「24時間の神話」より引用 ちょうど30年前。列島の端北海道のさらに端で、多感で内気な青春を過ごしていたティーンエイジャーの私の一風変わった琴線に触れた曲の1つが、北海道出身のデュオ「VOICE」が歌い上げる「24時間の神話」だった。 歌詞に... 枝林 応一
「名馬」を語る 泥中を駆けた少女。ステイゴールドの血を感じさせたレッドリヴェール 2023年9月10日 小柄でパワー型で粘り強いといえば、ステイゴールド産駒の特徴の一つであろうか。三冠馬のオルフェーヴルや破天荒で予測不能なゆえにファンが多かったゴールドシップ、障害の絶対王者と称されるオジュウチョウサンなど、個性的で強い産駒たちも父同様に愛されている。今回はそんなステイゴールド産駒の一頭・レッドリヴェールについて語ろうと思... シラユキ
「名馬」を語る "シュウジ"と"修司" - 幸運の誘惑 2023年9月9日 1.寺山修司との出逢い 「言葉の錬金術師」と評された文筆家・寺山修司のことを、私が競馬評論家として認識したのはいつだっただろうか。はっきりとは覚えていないのだが、そのきっかけとなった言葉は覚えている。 レースはただ、馬の群走にすぎないがその勝敗を決めるナンバーは、思想に匹敵する──寺山修司『ポケットに名言を』(角川書店... 縁記台
「名馬」を語る 海を渡ったソニンクの血。ディアドラの紫苑ステークス 2023年9月8日 21世紀の在来牝系 2023年は競馬法制定から100年目にあたる。日本の洋式競馬のはじまりはもっと早く、江戸時代末期、薩摩藩士がイギリス人を殺傷した生麦事件の賠償の一環として、幕府は横浜の根岸にある高台に西洋式競馬場を建設した。これがのちの横浜競馬場だ。日本初の洋式競馬主催団体は大隈重信らが発起人となった日本レース倶楽... 勝木 淳
「名勝負」を語る 復活を果たした王者スーニ。悔し涙から1年後、2011年のサマーチャンピオン 2023年8月31日 2021年からは晩夏に行われるようになった佐賀の名物重賞・サマーチャンピオン。文字通り「夏の王者」を決める戦いであり、暑さを忘れるような熱戦が毎年繰り広げられる。本稿で取り上げるのは2011年の当レースで復活の勝利を挙げたスーニ。現在も佐賀のレコード一覧に燦然と名が輝いている。 4歳時までの同馬を表す言葉は「天才」だろ... 中川兼人