小雨が落ち、薄暗い11月のターフを緊張させている。落ち着き払った漆黒の馬体は、何者も寄せつけず、一人旅を展開していた。私は苦い顔をしながら、職場である介護施設のテレビからその様子を見つめる。 2016年、ジャパンカップ。 鞍上は、レースを完全に支配していた。 「武豊?」 競馬とは無縁であるマダムたちも、続々とテレビの前...
コラム・エッセイ
コラム・エッセイの記事一覧
「一番好きな競走馬は?」と問われると、私はとても答えに迷う。私の人生を彩ってくれた競走馬は、一頭だけではない。大切な存在である競走馬たちに順番をつけることに、なんとなく違和感を覚えてしまう。けれど、もし「一番感謝をしている競走馬は?」と問われたら、私は迷わず彼の名を口にする。 シュヴァルグラン。彼は偉大なる名馬にして、...
「名は体を表す」という格言があるが、アーモンドアイはまさにその言葉を地で行くような馬だったと思う。 そもそもアーモンドアイという馬名の意味は目の形のこと。アーモンドのように切れ長でシャープな目頭・目尻の瞳を指し、いわゆる美人に多い瞳の形とされている。要するにアーモンドアイはその名が付けられるくらいに幼いころから美人な馬...
岩手県の中心地、盛岡。 競馬ファンにとっては、盛岡競馬場がある場所として有名なスポットであるが、それだけではなく「チャグチャグ馬コ」という、馬に色とりどりの鈴や衣装を身に着け街中を行進する伝統行事も執り行われている、いわば「馬どころ」でもある。 そんな盛岡市から車を20分から30分走らせ、隣の滝沢市に向かうと、ひとつの...
馬名にセッカチセージやエエカゲンニセイジなど”セイジ”の冠号を持つ松田整二オーナー。札幌市で眼科医をされていましたが、現在は引退しセカンドライフを送られています。今回は、馬産地・北海道ならではのオーナーライフと、愛馬を家族のように大切する精神の源を語って頂きました。 G1出走を叶えた、初めての愛馬。セッカチセージとの出...
「大団円」という言葉がある。演劇や小説について使用される言葉で、それらがめでたく収まる場面について指すものだ。だが、この言葉は、本の枠を飛び越えて芸能人やスポーツ選手、競走馬の引退の際に使われることもしばしばある。競走馬の引退に絞れば、アーモンドアイやキタサンブラックなどがその例に当てはまるのだろうか。 今回は、長年に...
2005年のマイルチャンピオンシップは、2003年・2004年と当時2連覇中であったデュランダルが3連覇達成するかどうかに注目が集まっていました。オッズもその注目が反映される形で、単勝オッズ1.5倍。断然の1番人気となっていました。 2004年マイルチャンピオンシップ優勝時のデュランダル 今回は、王者・デュランダルを中...
大谷選手の活躍で、現在は二刀流という言葉がスポーツの世界でも使われるようになりましたが、今から二十年前に競馬の世界で二刀流という言葉がぴったりと当てはまる馬がいました。 その馬の名は、アグネスデジタル。 『ウマ娘』でもキャラクター化しているため、若い世代の方々にも名前を知られている名馬です。 父Crafty Prosp...
「鍛え、育て、そして先導する! 敬愛する母の如く」 女帝──この2文字がトレセン学園で一番似合うウマ娘、エアグルーヴ。彼女はある理想を追い求めて、日々副会長としての職務と、トレーニングに励んでいます。 母は数々の偉業を成し遂げたウマ娘で、後進をも育成し、理想を示してくれた存在。その薫陶を受け、自分も母のような存在になり...
2003年のエリザベス女王杯は、「この年の牝馬三冠馬スティルインラブが四冠目を獲るか?」「それとも桜花賞3着オークス7着秋華賞2着と牝馬三冠レースに敗れ続けたアドマイヤグルーヴの雪辱なるか?」という点に注目が集まっていました。オッズもその注目が反映される形で、この2頭が1番人気2番人気を分け合うことに。 さらに他にも、...
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語り継がれし「名馬」たち
レース回顧
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[重賞回顧]復活と希望の勝利!北村友一騎手とクロワデュノールがホープフルSを制覇~2024年・ホープフルS~
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[重賞回顧]いざ、新時代へ! 復活を遂げたレガレイラが偉業を達成~2024年・有馬記念~
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[重賞回顧]ニュースター誕生! 見惚れるほどの圧勝劇~2024年・朝日杯フューチュリティステークス~
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[重賞回顧]世界を完封! 主役はやはり日本総大将~2024年・ジャパンカップ~
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[重賞回顧]最速の母”ラッシュ”から魂の”ラッシュ”へ、鞍上が繋ぐ悲願成就!~2024年・マイルCS~
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[重賞回顧]”バド”の雪辱を、”スタニング”が晴らす見事な勝利~2024年・エリザベス女王杯~
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[重賞回顧]夕暮れに映えた白き古豪、ハヤヤッコ~2024年・アルゼンチン共和国杯~